くも膜下出血の手術ってどんなふうに行うの?手術したらもう大丈夫?

2019/1/6

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

くも膜下出血を発症すると、突然バットでなぐられたような激しい痛みに襲われる、といわれています。このような症状に見舞われたらすぐに病院で適切な治療を受けることが欠かせませんが、具体的にどんな治療を受けるのでしょうか。

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くも膜下出血ってどんな病気?

くも膜下出血は脳卒中の1つで、主に脳動脈瘤の破裂によって脳のまわりの空間であるくも膜下腔に出血が起こった状態のことをいいます。

くも膜下腔は脳を保護するために脳脊髄液に満たされ、脳に栄養を送る血管が走っています。くも膜下出血が起こると、血液がくも膜下腔に流入し、髄膜が刺激されたり、頭蓋内圧が急上昇します。これにより、「バッドで殴られたような」といわれる激しい頭痛が突然起こります。頭痛とともに、吐き気や嘔吐を感じたり、意識障害に陥ったりします。このほか、首のあたりの筋肉が硬くなる症状(項部硬直)も起こります。

くも膜下出血を発症すると死に至る可能性が非常に高く、出血の程度にもよりますが、発症した人の約30%が死に至るともいわれています。

くも膜下出血が起こる原因は外傷性と非外傷性(突発性)に分類されます。外傷性の場合は外傷による脳挫傷が原因で、非外傷性の場合は、そのそのほとんどが脳動脈瘤の破裂です。

くも膜下出血を発症したら、どんな手術をする?

くも膜下出血を発症した場合、治療として手術を行うことがほとんどです。手術には外科的治療として開頭クリッピング術、血管内治療としてコイル塞栓術があります。

開頭クリッピング術とは、頭皮を切開して頭蓋骨の一部を取り外し、くも膜下腔を経由して脳動脈瘤に到達したら動脈瘤にクリップをかけて出血を止めます。動脈瘤の位置からクリップを掛けることが難しい場合は、脳動脈瘤の壁を補強する方法(ラッピング術)を行います。

コイル塞栓術は、太ももの付け根から動脈にマイクロカテーテルを入れ、血管の中から動脈瘤に到達させ、動脈瘤にプラチナ製コイルを充填させるものです。

手術できない場合もあるって本当?

破裂してしまった動脈瘤は、放置すると再破裂を起こす危険性があります。再出血を起こした場合、死亡率は約50%となるため、再破裂を防ぐためには手術が欠かせません。しかし、昏睡状態だったり、極めて全身状態が悪い場合は手術できないこともあります。

手術をしたらもう大丈夫なの?

くも膜下出血の場合、手術したら完治、というわけではなく、再破裂を予防できたという状態にとどまります。また、手術後にほかの病気を発症する可能性もあります。手術後に特に注意したい病気が脳血管攣縮と正常圧水頭症です。

脳血管攣縮とは、くも膜下出血から3日後より起こるリスクが出てきて、出血から4~14日後頃にピークを迎える病気です。脳の血管が糸のように細くなってしまう病気です。脳の血管が細くなってしまうと血流不足に陥り、脳梗塞を発症する恐れが出てきます。また、脳血管攣縮を起こすと治療後の症状回復がそれほど期待できなくなります。

正常圧水頭症とは、くも膜下腔の血腫が約1~2カ月ぐらいかけて周囲の組織と癒着した結果、くも膜下腔を流れる脳脊髄液が循環障害を起こして脳の中に溜まってきてしまう状態です。脳血管攣縮のように生命を脅かしたり、回復が思わしくなくなるというわけではないものの、発症すると認知症や歩行障害、尿失禁を起こすなど、日常生活へ支障をきたすことがあります。くも膜下出血を発症した人の約10~20%に、出血から約4~6週間後ぐらいにあらわれるといわれています。

おわりに:経験したことのない激しい頭痛が起こったらすぐに医療機関へ

くも膜下出血を発症すると、今までに経験したことのないような激しい頭痛に見舞われ、吐き気や嘔吐、意識障害を引き起こします。命の危険となる可能性は非常に高く、また意識障害が重くなると手術を行うことも難しくなります。そのため、今まで経験したことのないような激しい頭痛に襲われたら、すぐに身近な人に頼んで救急車を呼んでもらいましょう。

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くも膜下出血(35) 開頭クリッピング術(2) バットで殴られたような頭痛(1) コイル塞栓術(3) くも膜下出血の再発(2)