記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
一般的に冬になると、風邪やインフルエンザなど感染症にかかりやすくなりますよね。これは、冬の寒さや年末年始の疲れなどで体が弱るとともに、暖房による乾燥が影響しているためと考えられています。今回は風邪の一因である暖房による乾燥について、適切な湿度とあわせて解説します。
風邪の原因となるウイルスや細菌は、一定の水分を含んで空気中を浮遊しています。乾燥した冬の空気のなかでは、これらの細菌やウイルスに含まれる水分が蒸発するため比重が軽くなり、細菌・ウイルスは活発に浮遊しやすくなります。
すると比較的湿度が多い春~秋ごろに比べて、細菌やウイルスの動ける範囲が広がるため、感染して風邪を発症する機会が多くなってしまうのです。
なお、空気中に含まれる水分量の割合である湿度は、空気の温度が高くなればなるほど、反比例して低くなるという特性を持っています。このため、ただでさえ乾燥している冬の空気をエアコンなどの暖房器具で温めると、さらに空気中の水分量が減少して乾燥し、細菌やウイルスに感染しやすい環境になるのです。
特にエアコンの暖房による空気の乾燥と、これによる風邪発症のリスクを下げるには、細菌やウイルスが浮遊しにくく、人体が快適と感じる温度・湿度を保つ必要があります。
冬場に細菌やウイルスの浮遊・生存確率を下げ、のどや鼻の粘膜の免疫機能が適切に働く温度・湿度の目安は「室内の気温が20℃、湿度が40~60%」だと考えられています。
エアコンなどの暖房器具で部屋を暖めるときは、設定温度を20℃にするとともに、加湿器を一緒に動かして室内の保湿も同時に行いましょう。冬の室内は、乾燥と風邪を防ぐのに適した「気温20℃、湿度40~60%」を目安に、管理するようにしてくださいね。
風邪と空気の乾燥予防のために加湿をしすぎると、外気によって気温が低くなっている窓際や壁に結露が起き、カビ発生の原因となることがあります。
加湿器による結露やカビは、特に湿度設定を60%以上にしている場合や、壁際や部屋の隅に加湿器を設置している場合に発生しやすいので、加湿器の置き場所にも注意が必要です。加湿器は40~60%の湿度設定で、できれば以下の条件を満たす場所に設置してください。
なお、必ずしも加湿器を使わなくても、洗濯物や濡らしたタオルを室内にかけて干しておくだけでも、ある程度の加湿効果が期待できます。
スペースやお金の問題から加湿器の購入・設置が難しい場合は、洗濯物や濡れた布類を寝室や居間に干せば加湿できます。
冬の空気を温めて室内に送り込むエアコンの暖房は、ただでさえ乾燥している空気から水分を奪い、部屋を高温低湿の環境にします。
このような環境は空気中に浮遊する細菌やウイルスを軽くして活動範囲を広げ、私たちが風邪にかかるリスクを増大させてしまうのです。暖房による室内の乾燥や風邪の感染を予防するには、室内を気温20℃・湿度40~60%に保つのが効果的です。暖房と一緒に加湿器や洗濯物などを使って室内を保湿しましょう。