心肺停止の人を助けるための時間はどのくらいある?

2019/2/11

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ご自身は健康でも、自宅で家族が突然倒れたり、外出先で見ず知らずの人が目の前で倒れる状況に遭遇する可能性はあります。もしも倒れた人が心肺停止に陥っているとしたら、一分一秒が命に関わります。そんなとき一般の人でもできる救命措置「胸骨圧迫」と「AED」について理解しておくと、適切な対応をとることができます。

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心肺停止の人の命を救うまでの時間は、思った以上に短い

医療技術は日々発展していますが、突然死によって命を落とす人は現代日本でも多くいらっしゃいます。突然死の原因として最も多いのが「心室細動」という重篤な不整脈です。本来、心臓は酸素と栄養を含む血液を全身に送り出すポンプの役割をしています。心室細動を起こした心臓では震えが発生し、ポンプ機能が止まり「心肺停止」に陥ります。

心肺停止後数秒で意識を失い、数分後には脳を含む全身の細胞が機能停止してしまいます。心肺停止は命の危険が非常に高い状態です。仕事中や外出時など、病院にいない状況で心肺停止した場合、心肺停止から1分経つごとに救命率が7~10%低下すると考えられています。そのため、胸骨圧迫(心臓マッサージ)とAED(心臓への電気ショック)など救命措置を速やかに行うことが求められるのです。

救急車が着く前に心肺蘇生を!

心肺停止の救命措置では3つのポイントを覚えておきましょう。

  • 119番通報
  • 胸骨圧迫
  • AED

一刻も早く医療機関の処置を受けるためにも、119番通報で救急隊を呼びましょう。

さて、救急隊の到着を待つ間に、一般の人でもできる措置として胸骨圧迫とAEDがあります。

胸骨圧迫
手による圧迫で、止まった心臓の代わりに全身へ血液を送り出す。
AED
電気ショックで心臓の痙攣を止める。

胸骨圧迫を行わない場合の救命率は10%以下になってしまいますが、行った場合は2倍ほど上昇します。もし心肺蘇生法の理解が一般の人たちにもっと広まれば、より多くの命を助けることができます。ぜひ、下記にご紹介する心肺蘇生法の手順を身につけて、疑問や不安を解消していきましょう。

心肺蘇生の方法は?

以下に、心肺蘇生の流れをご紹介します。

心肺蘇生の流れ

  1. 倒れている人に呼びかけ、反応や呼吸の有無を確認する
  2. 119番通報をし、AEDを持ってきてもらうよう依頼する
  3. 呼吸がない、あるいは呼吸をはっきりと確認できない場合、胸骨圧迫を行う
  4. AEDが到着したら電気ショックを行う

胸骨圧迫の手順

  1. 自分の両手の付け根あたりを、倒れている人の胸骨の下半分に当てる
  2. 胸骨の下半分が、約5cm沈むくらい真上から圧迫する
  3. 1分間に100~120回のペースで圧迫を繰り返す
  4. 周囲に人がいたら協力を頼むとスムーズ

AED操作方法

  1. 電源を入れて、AEDの音声をよく聞き、指示に従う
  2. 倒れた人の上半身の服を脱がし、胸の素肌にパッドを貼る(貼る位置はパッドに記載あり)
  3. AEDが電気ショックが必要かどうか判断し、指示を出す
  4. 必要であれば、周囲の安全確認後に電気ショックボタンを押す
  5. AEDの指示がない場合、電気ショックは行わない

注意点

倒れている人を発見した際、車道など危険な場所で倒れたときや、吐しゃ物誤飲の可能性がある場合は、注意深く移動したり周囲の人との連携が必要となることがあります。

万一に備えて、心肺蘇生講習会を受けよう

心肺蘇生は医療従事者でなくとも、防災訓練や運転免許証取得講習の一環として救命講習を受けている人もいるかもしれません。そのほか、各自治体の消防署や日本赤十字社、NPOやボランティア団体などが心肺蘇生講習会を開いていることがあります。最寄りの消防署や日本赤十字社各支部、お住まいの自治体の市民活動センターなど開催団体に問い合わせすると講習情報を得られます。

暮らしのなかのAED

AEDは駅などの交通機関や商業施設、公共施設に設置されていることが多いです。ご自身の生活圏内にAEDが設置されているかを確認し、いざというとき迅速な処置ができるように準備しておくと安心です。

おわりに:心肺停止は一刻を争う!正しい知識で迅速な心肺蘇生を

心肺停止後に経過する時間は、たとえわずかに思えても命の危険や治療後の回復に大きな影響を与えます。救命措置である胸骨圧迫とAEDを正しく理解し、緊急事態でも適切に対応できる人が増えれば、救える命も多くなります。全国各地で開催される講習に参加するなど、できることから始めてみませんか。

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