記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
甲状腺炎とは、甲状腺の炎症を引き起こす疾患です。甲状腺は首の前部にある腺で、代謝を制御するホルモンを作り、体調管理のベースを担います。
甲状腺炎にはいくつかの種類があります。
<橋本甲状腺炎(橋本病)>
甲状腺を攻撃する抗体によって引き起こされ、慢性甲状腺機能低下症(慢性甲状腺炎による甲状腺機能低下)を発症します。治療可能な症状です。
<亜急性甲状腺炎(ド・ケルバン甲状腺炎)>
ウィルスの感染が原因で発症します。甲状腺が痛み、甲状腺機能亢進症の症状が出ます。甲状腺機能低下症の原因ともなりますが、症状は数カ月で改善します。 慢性甲状腺機能低下症になる可能性もあるものの、こちらも治療可能な病気です。
<無痛性甲状腺炎>
甲状腺機能亢進症や低下症の症状が続きますが、12~18ヶ月で改善します。慢性甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があります。
<出産後甲状腺炎>
出産後、甲状腺を攻撃する抗体によって引き起こされます。出産から4~6カ月後に甲状腺機能亢進症の症状が現れ、続いて甲状腺機能低下症が起きますが、症状は12~18カ月で改善します。 恒常性甲状腺機能低下症を引き起こす可能性もあります。
<薬物誘発性甲状腺炎>
アミオダロン、リチウム、インターフェロン、サイトカインなどの処方薬によって引き起こされます。甲状腺機能亢進症か低下症の症状が現れ、薬の服用中は症状が続きます。
<放射線誘発性甲状腺炎>
放射性ヨウ素や、特定の癌の放射線療法によって発症します。多くの場合、甲状腺機能低下症の症状が現れます。恒常性甲状腺機能低下症の症状が出ることもあるものの、治療可能な病気です。
<急性甲状腺炎(化膿性甲状腺炎)>
細菌やその他の感染微生物によって引き起こされます。甲状腺が痛くなったり、全身に病気が出たりし、軽度の甲状腺機能低下症の症状が含まれることがあります。感染症の治療後に症状が改善します。
甲状腺炎の症状はさまざまです。
長期の甲状腺細胞の損傷と破壊により、血液中の甲状腺ホルモン濃度が低下あるいは上昇する可能性があります。次のような、甲状腺機能低下症や亢進症の症状が出ます。
・疲労
・予想外の体重増加
・便秘
・乾燥肌
・うつ病
・筋肉痛
・体重減少
・神経質、不安、過敏症
・寝つきの悪さ
・速い心拍数
・疲労
・筋肉の衰弱
・手や指の震え
そのほかの症状として、甲状腺に痛みを感じることがあります。
甲状腺炎は甲状腺の攻撃によって引き起こされ、炎症になり、甲状腺細胞を損傷します。
基本的な原因は、自己免疫疾患です。 通常、免疫系によって産生される抗体は、ウイルス、細菌などから身体を保護しますが、自己免疫疾患では免疫系が身体の組織や器官を攻撃する抗体を産生します。
また、感染や特定の薬によっても引き起こされる可能性があります。
検査室にて甲状腺炎のタイプを調べます。
血液検査では血液中の甲状腺ホルモンの量を測定し、甲状腺のホルモンの量や、体内にどのような抗体が存在しているか確認します。
甲状腺ホルモンの産生に必要なヨードを取り込む能力を測定するため、放射性ヨウ素取り込み検査を行うこともあります。 場合によっては、原因特定のために生検が必要になることがあります。
甲状腺炎のタイプと症状によって異なります。
甲状腺機能亢進症の症状がある場合は、心拍数を下げ、震えを軽減するために、ベータブロッカーという薬を処方することがあります。症状は一時的なものかもしれないので、改善するにつれて投与量を減らすことがあります。
甲状腺機能低下症の症状がある場合は、合成甲状腺ホルモンを処方して体内のホルモン濃度を回復させ、代謝を正常にします。 合成甲状腺ホルモンの適切な投与量を知るには、複数回の検査が必要です。 症状は時間の経過とともに改善され、徐々に甲状腺ホルモンの用量を減らすケースもあります。
甲状腺に痛みがある場合は、アスピリンやイブプロフェンのような軽度の抗炎症薬を推奨することもあります。重度の甲状腺の痛みはステロイド療法で治療する必要があります。
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