メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)

2017/3/27

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

概要

MRSAは黄色ブドウ球菌(staphylococcus)の感染症で、MRSAは「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 」の略称です。 この感染症は、抗生物質メチシリンに加え、他の一般的な抗生物質(オキサシリン、ペニシリン、アモキシシリンなど)にも耐性があり、治療を困難にします。
2つの主要なタイプ:コミュニティ関連MRSA(CA-MRSA)および医療関連MRSA(HA-MRSA)があります。 CA-MRSAは、かつてはまれでしたが、いまでは一般的で、HA-MRSAは、ブドウ球菌感染の半分以上を占めています。

症状

MRSA皮膚感染は、吹き出物のように見える隆起が現れます。身体の切り傷や擦り傷、毛のある部分に、隆起が現れ、隆起は赤み、腫れ、痛み、膿を伴う可能性があります。 MRSA感染による腫れは、急速に、膿で満たされた膿瘍になります。

原因

病院や医療施設にいる免疫システムが弱い人は、HA-MRSAに罹患すると重大な合併症の危険に晒されます。 臓器移植後に服用する化学療法薬や医薬品など、多くのことが人の免疫系を弱めます。 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)も同様です。HA-MRSAを罹患する危険因子として、外科手術、カテーテルのような医療器具の埋め込み、最近の抗生物質治療などがあります。
医療従事者は、患者と接触後に十分に手を洗わないと、HA-MRSAが広がります。すべての細菌を殺すには、石鹸と水、または消毒剤を使用して手を完全に洗うことが必要です。完全に消毒しないと、患者と健康な人との間に細菌が広がる可能性が生じます。
HA-MRSAの拡散を減らすため、一部の医療施設では、患者が到着した時点でMRSAの検査を始めており、 集中治療室(ICU)のような高いリスクがある場所のモニターも行っています。

診断

MRSAの罹患検査があり、傷や鼻の中をチェックしたり、尿や血液のサンプルを採取し、培養試験します。結果は、約24〜48時間後に出ます。また、「迅速な血液検査」と呼ばれる新しい検査があり、約2時間で結果が得られます。 新しい検査法ですが、どんどん普及しています。

治療

軽度のMRSAでは、皮膚の腫物や膿瘍を除去し、傷口をきれいな包帯で覆います。 包帯は定期的に交換する必要があります。 また、ムピロシンを含有する軟膏を処方することがあり、これが感染を治療するために必要なすべてになります。後日、患部の治癒状況を確認し、数日後に改善が見られない場合は、医師に相談してください。
症状がより深刻な場合、MRSAに対して有効に働く抗生物質を処方することがあり、以下のものがあります。
・クリンダマイシン
・ドキシサイクリン
・リネゾリド
・ミノサイクリン
・テトラサイクリン
・トリメトプリム – スルファメトキサゾール
・バンコマイシン
現在、バンコマイシン耐性のある(VRSAと呼ばれる)staph株(ブドウ球菌株)が出現しています。
医師が指示しない限り、必ず、抗生物質のすべての用量を服用してください。数日後、改善しない場合、または感染が悪化した場合、医師に相談してください。
重度のMRSA、ほかに健康上の問題がある場合、また、感染が生命を脅かすか、四肢の喪失を引き起こす可能性がある場合、入院の必要があります。綿密にモニタリングされ、幅広い感染症に対抗できる「広域スペクトル」抗生物質と呼ばれる強力な抗生物質が投与されます。

合併症

MRSA皮膚感染を発症しても、健康な人は深刻な事態に陥ることは滅多にありません。 しかし、免疫系が弱く、HA-MRSAに感染した人は、生命にかかわる重大な感染症を発症する危険性があり、血液、骨、心臓弁、肺の感染症、および手術部位で感染症が起こる可能性があります。

予防

治療は医師の指示に従ってください。
・感染部位が癒されるまで皮膚を覆い、慎重に包帯を変えましょう。
・感染の拡大を防ぐため、使い捨て手袋を着用してください。
・包帯とテープは、通常のゴミ箱に捨てましょう。 ※汚れがひどい場合は、まず別の袋の中に入れます。
・石鹸と水、またはアルコール系の消毒剤を使用して、頻繁に手を洗いましょう。
・ベッドリネン、バスリネン、衣類、かみそり、化粧品、スポーツやオフィス用品などのアイテムは他人と共有しないようにしましょう。

関連知識

CA-MRSAのリスクにさらされているのはどんな人?

健康であっても、CA-MRSAに罹患する可能性はあります。 感染者と直接、皮膚接触をすることで広がります。 また、MRSAで汚染された物に触れることによっても罹患します。
アメリカの疾病管理予防センター(CDC)は、「5Cs」と呼ばれる感染リスクを高める要因を特定しています。
学校、寮、軍の兵舎、刑務所、託児所は、5Cの共通の場所です。 皮膚と皮膚との接触、軽度の切れ傷および擦り傷が頻繁に発生するスポーツチームのメンバーの間でもMRSAは発生しています。
・Crowding(混雑)
・Contact(接触) 皮膚と皮膚のコンタクト
・Compromised(傷ついた) 切り傷や擦り傷で傷ついた皮膚
・Contaminated(汚染された) 汚染されたアイテムやその表面
・Cleanliness(清潔さ) 清潔な衛生状態

自分の所持品がMRSAに曝露していると思った場合

自分の衣類、シート、またはタオルがMRSA細菌で汚染されている場合、熱湯と洗濯洗剤で洗ってください。 風で乾かすのではなく乾燥機を使用してください。また、掃除機で表面をきれいにしてください。

医師に相談するための質問

・MRSAに罹患するリスクがありますか?
・私は病院で働いています。 MRSA予防のために何ができますか?
・私の夫はMRSAを持っています。 家族を守るために自分は何ができますか?
・自分にとって最高の治療法は何ですか?
・MRSAに感染した傷があります。手足を失うことになりますか?
・膿が出てきた傷は、どうしたらいいですか?
・ベッドリネンは取り除くべきですか?
・包帯や創傷包帯の特別な取り除き方はありますか?
・自分はHIVがあります。 MRSAに感染した場合、どうすればよいですか?
・子供の保育施設でMRSAと診断された人がいます。 子供に検査を受けさせるべきですか?

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