寒い冬に気になる体の冷え、どう予防する?

2020/1/19

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

冷え性で指先や足先が冷たくなりやすい、という人は、寒い冬には身体が冷えてしまってつらいものです。ときには眠れなくなるほど身体に悪影響をもたらしてしまうこの冷えですが、起こりやすい人と起こりにくい人がいます。

体が冷えてしまう原因とは?冷えやすい人はいる?どう予防・対策したらいい?など、つらい体の冷えについて、詳しく解説します。

冬に体の冷えを招いてしまう原因は?

身体が冷える理由は、大きく分けると「体内で熱が作れない場合」「作られた熱が、全身に届かない場合」「体内の熱が逃げやすい場合」の3つあります。

体内で熱が作れない

これは基礎代謝が少ないということです。身体が熱を保つためには、エネルギーを消費する必要がありますが、1日のエネルギー消費の約60~70%は基礎代謝が占めているとされています。さらに、この基礎代謝を身体の部位ごとに分けると、筋肉が約38%、肝臓が約12%、胃腸・腎臓がそれぞれ約8%、脾臓が約6%、心臓が約4%、その他の部位が約24%となっています。

このうち、人によって大きな差が生まれる部位は筋肉だけです。つまり、身体が冷える人は、筋肉が少ないために消費エネルギー量も少なく、生み出せる熱も少ないので、冷えやすいと考えられます。男性より女性に冷えやすい人が多いのも、これが原因と考えられます。体重に対する筋肉量は一般的に男性が約40%なのに対し、女性は約36%と少ないのです。

これに加え、間違ったダイエットでさらに筋肉量を落としてしまうと、慢性的な冷えに結びついてしまう可能性もあります。しかも、女性は男性よりも皮下脂肪が多い傾向にあり、脂肪は筋肉と違って、エネルギーを貯蓄しますが消費はしません。脂肪には断熱効果があるものの、血管はほとんどないため、外部から加わった熱を全身に伝えることもないのです。

作られた熱が全身に届かない

作られた熱が全身に届かない原因として、自律神経のバランスの乱れが挙げられます。自律神経が乱れると、血流が滞ってしまい、全身に熱が伝わらなくなります。これは、エアコンの効いた室内と暑い屋外を出入りしたり、不安・ストレスなどを感じたりして、血管が収縮したり拡張したりすることによっても起こります。

血流の悪化から来る冷えの原因として、食べすぎも挙げられます。食べすぎると消化のため、血流が胃腸に集まってしまい、熱を生み出しやすい筋肉や他の器官に血液が十分に行き渡らなくなってしまうのです。高脂肪食や塩分の多い食べ物、スイーツなど甘いものはついつい食べすぎてしまいやすいものですが、これらは健康のためにも、冷え対策のためにも控えめにしておきましょう。

体内の熱が逃げやすい

体内の熱が逃げやすいのも、やはり血流が悪いことに由来しますが、血流が悪くて身体が冷えてしまうと汗をかきにくくなり、水分が十分に排出されず、身体に不要な水分が溜まり、冷えやすくなってしまうのです。冷えやすくなるとさらに汗をかきにくくなる、という悪循環にもなってしまいますので、適度な運動などで時々は汗をかくようにしましょう。

冷えを放置するのはよくないって本当?

冷えは万病のもと、と古くからも言われているように、身体が冷えると血流が悪くなり、酸素や栄養分が身体の隅々の臓器や細胞にまで行き渡らなくなります。すると、老廃物も排出されにくくなり、体内に蓄積されてしまいます。さらに、体温が1度下がると免疫力が30%以上低下するとも言われるように、冷えは免疫力も下げてしまうのです。

このように、冷えはさまざまな臓器の機能低下や免疫力の低下を招き、そこから体調を悪化させます。これが「万病の元」というわけですから、冷えは我慢したり放置したりせず、ちゃんと向き合って対処しましょう。症状がひどい場合には婦人科や内科を受診し、生活指導などの対処法を聞いて、冷えから体調が悪化する前に防ぐことが大切です。

また、冷えだけでなく他の症状も同時に現れた場合には、何らかの疾患を発症している可能性もありますので注意が必要です。具体的には、以下のような症状には注意しましょう。

冷えと足の痛みが同時に現れた場合
  • 閉塞性動脈硬化症などの可能性がある
  • 四肢(とくに下肢)の動脈硬化で問題になりやすい症状で、足に酸素や栄養が行き渡らず、血流が途絶えた部分から先が壊死してしまうため、最悪の場合は切断しなくてはならないことも
  • 足に動脈硬化がある場合、心臓や脳の血管にも動脈硬化が進行している可能性もあり、注意が必要
足先が極端に冷えきってしまう場合
  • 大動脈弁狭窄症の可能性がある
  • 全身に血液を送り出すポンプの役割がある左心室と大動脈の間にある「大動脈弁」が硬くなり、血液の通れる隙間が狭くなってしまう
  • 進行すると、心不全を起こして突然死にもつながることがある
冷えとめまいや息切れが同時に現れる場合
  • 心臓系の疾患を疑う必要がある

上記のような症状に心当たりがある場合は、「冷えは毎年のこと」などと油断せず、症状が重くならないうちに専門医を受診して検査や治療を行いましょう。

食事で冬の冷えを防ぐには?

漢方医学の考え方に「身体を温める食材」「身体を冷やす食材」というものがあります。栄養バランスのとれた食事をとるのは基本ですが、冷えが気になるときには身体を温める食材を積極的に取り入れ、身体がほてっているときには身体を冷やす食材を摂取する、といったように使い分けると良いでしょう。

また、身体を冷やす食材に熱を加えると、身体を温める食材に変化するという性質もありますので、上手に利用するのがおすすめです。具体的には、以下のような食材があります。

身体を温める食材
  • 玉ねぎ、にんにく、しょうが、小松菜、人参、ごぼう、チーズ
  • 卵、肉、赤身の魚、味噌、さくらんぼ、桃、紅茶、根菜類、発酵食品
  • その他、寒冷な季節や地方でとれるものなど
身体を冷やす食材
  • きゅうり、なす、ゴーヤ、バナナ、オレンジ、トマト、わかめ、昆布
  • 白砂糖、牛乳、バター、豆腐、コーヒー、緑茶、白米
  • その他、夏が旬のものや熱帯でとれるもの、精製された食品、加工食品など
身体を冷やしも温めもしない、中庸の食材
  • 玄米、とうもろこし、そば、あわ、ひえ、もちなど

こうした考え方の他にも、肉類などに多く含まれるタンパク質は熱を多く生み出す基礎代謝のもととなる筋肉を作り、ししゃも・たらこ・アボカド・アーモンドなどに多く含まれるビタミンEは、末梢血管を広げて血液循環を良くする働きがありますので、これらの食材も上手に食事に取り入れていくと良いでしょう。

職場や自宅で心がけたい冷え対策は?

食事以外にも、職場や自宅でできる冷え対策があります。職場と自宅に分けて、具体的に見ていきましょう。

職場でできる冷え対策は?

デスクワークでも立ち仕事でも、仕事中は長時間同じ姿勢でいなくてはならないことは多いものです。しかし、ずっと同じ姿勢のままでは血行が悪くなり、冷えを招いてしまうのはよく知られているとおりです。そこで、仕事中は以下のような対処を行ってみましょう。

  • 数時間に1度、階段を上り下りする
  • 空いた時間があれば、少しでも身体を動かし、固まった筋肉をほぐす
  • どうしても動けない状態であれば、こまめに脚やふくらはぎをマッサージする

階段の上り下りも、マッサージも、筋肉を意識的に動かし、血流を押し流す作用を高めるのがポイントです。固まった筋肉をほぐすためには、軽いストレッチをするのもおすすめです。また、暖房器具を使う場合はパネルヒーターやデスクヒーターなどを活用し、下半身を重点的に温めましょう

自宅でできる冷え対策は?

自宅でも、基本的には「血行を良くすること」「下半身を温めること」の2つが冷え対策の大きなポイントです。まず、暖房器具は床暖房やこたつなど、下から温めるタイプのものが良いでしょう。エアコンでは暖かい空気が上に溜まってしまいますので、なかなか足元が暖まりにくいのが難点です。

次に、エネルギーを消費して熱を生み出すため、筋肉を動かしましょう。固まった筋肉をほぐして血流を良くするだけでなく、筋肉を使えばそのぶんエネルギーが消費され、熱を生み出すことができます。とくに、下半身を動かすストレッチ・屈伸・スクワットなどが効果的です。外に出るのが辛くなければ、ウォーキングも良い運動です。

基礎代謝を上げてエネルギーの消費量=熱の発生量を上げるためにも、筋肉量を増やすことを意識して、下半身に少し負荷がかかるような運動を行うと、長期的な冷え対策になるだけでなく、お尻や太ももの引き締め効果も期待できます。

最後に、お風呂の入り方もぜひ見直してみましょう。お風呂は温度を上げてサッと入ってサッと出るよりも、ぬるめのお湯にじっくりとつかる方が、身体の内側まで十分に温まり、冷えにくくなります。ですから、理想の入り方としては、38~40度程度のお湯に15〜20分間しっかりつかるのがおすすめです。

お風呂に入る時間がないという人でも、週に1〜2回程度お湯につかると冷え対策になります。風呂にお湯をためるのが大変、という場合は、バケツや洗面器など両足が入る容器に40度ほどのお湯を用意し、くるぶしから指3本程度上まで15~20分くらいつかる「足湯」でも効果が期待できますので、ぜひ試してみてください。

おわりに:体の冷えは万病の元!体調が悪化する前にしっかり対策しよう

冷えは万病の元、という言葉は立派に根拠があり、冷えによって血流が悪化すると、各種臓器に酸素や栄養分が行き渡らなくなって機能の低下を招き、免疫力の低下にもつながります。これらの要因によって体調が悪化しやすくなるのです。

そこで、冷えを放置せずしっかり対処しましょう。筋肉を動かすストレッチやスクワット、下半身を温める暖房器具、ぬるめのお風呂にじっくりつかる、身体を温める食材を食べることなどが有効です。

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