記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2022/1/13
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
冷えで指先や足先が冷たくなると、体だけでなく心もつらくなりますよね。ひどいときには日常生活にも支障がでることもあります。冬になると必ず冷えで悩まされる人でも、冷えの原因を考慮した対策をとれば冷えを解消できる場合があります。
今回は、冷えの原因と対策について解説します。食事でできる対処法と、職場と自宅でできる対処法を紹介していくので、うまく取り入れてください。
体が冷えの原因は、大きく分けると「体内で作り出す熱の量が少ない」「作られた熱が全身に伝わりにくい」「体内の熱が逃げやすい」の3つあります。
体内で熱が作れない原因は、基礎代謝が少ないことがおもな原因です。体内で熱を保つには、エネルギーを消費しながら熱を作り出す必要があり、1日のエネルギー消費の約60~70%は基礎代謝が占めていると考えられています。基礎代謝を身体の部位ごとに分けると、筋肉が約38%、肝臓が約12%、胃腸・腎臓がそれぞれ約8%、脾臓が約6%、心臓が約4%、その他の部位が約24%です。
このなかで大きな個人差が生じる部位は筋肉だけです。つまり、冬に体が冷える人は、筋肉が少ないため消費エネルギー量も少なく、生み出せる熱も少なくなるため冷えやすいことが原因と考えられます。ちなみに、体重に対する筋肉量は一般的に男性が約40%なのに対し、女性は約36%と女性のほうが少ないです。一般的に、男性より女性に冷えやすい人が多いことも、基礎代謝が原因といわれています。
基礎代謝の違いは筋肉量に影響するため、生まれつきの体質や運動習慣の違いがおもな原因になりますが、極端な食事制限や過度の運動など、間違ったダイエットなどで急激に筋肉量を落としてしまうことも、基礎代謝の低下を引き起こし、慢性的な冷えの原因になることがあります。
作られた熱が全身に届かない原因として、自律神経のバランスの乱れが挙げられます。これは、自律神経が乱れると血流が悪化し、血液を介して全身に熱を伝えられなくなるからです。自律神経のバランスの乱れは、生活習慣、生活環境、ケガ、過労などによる身体的ストレスや、不安、悩み、人間関係などの精神的ストレスなどが引き起こすこともあります。
また、脂肪には血管がほとんどありません。脂肪量が多すぎる人は、全身に熱が伝わりにくく冷えやすいです。女性は男性よりも皮下脂肪が多いことも女性が冷えやすい原因になります。
血流の悪化による冷えは、食べすぎが原因になる場合もあります。これは、食べすぎると消化のために血流が胃腸に集まってしまい、熱を生み出す筋肉などに血液が十分に行き渡らなくなってしまうからです。食欲をそそる高脂肪食、日本人が好む塩分の多い食べもの、スイーツや甘味などは、食べすぎが原因の冷えを引き起こしやすいです。生活習慣病の原因にもなりますので、食べすぎには十分に注意し、控えめにすることを心がけてください。
ただし、栄養バランスの整った食事を規則正しく食べないと、熱を作り出すことができなくなりますし、血流も悪化しやすくなります。糖質や炭水化物、脂肪を完全に断つことはおすすめできません。糖質、炭水化物、タンパク質は、偏りすぎないように気をつけ、ビタミン類やミネラル類もきちんと摂るようにしましょう。
※病気などで食事制限が必要な場合は、医師の指示に従ってください。
自律神経のバランスの乱れは、体内の熱が逃げやすくなる体質を作り出す原因になり得ます。これは、自律神経のバランスが乱れることで、血管の収縮や拡張や発汗がうまく行われなくなり、放熱や蓄熱のバランスが乱れることが関係していると考えられています。
また、脂肪自体が熱を作ることはありませんが、脂肪は熱を作り出すエネルギーを貯蓄し、体の熱が体外へ逃げることを防ぐ役割があります。脂肪量が少なすぎると体内の熱が逃げやすくなってしまいます。体脂肪値やコレステロール値が低すぎることは、病気を引き起こす原因になることもあります。冷え予防や健康対策のためには、痩せすぎもよくありません。
冷えは血流を悪化させることで、全身の臓器や組織の酸素不足や栄養不足を引き起こし、さまざまな体調不良の原因になる場合があります。血流悪化は老廃物を排出する機能にも影響するため老廃物が体内に溜まりやすくなり、免疫力の低下にも影響する場合があります。
「冷えは万病の元」ということもあります。冷えの悩みは周囲から理解されにくく、軽く考えられやすいですが、放置することで慢性的な心身の不調を引き起こすこともあります。また、以下で紹介するような「深刻な病気」が冷えを引き起こしている場合もあります。症状がひどい場合には婦人科や内科を受診し、専門的な治療や生活指導などをしてもらいましょう。
漢方医学に、「体を温める食材」「体を冷やす食材」という考え方があります。栄養バランスの整った食事をとるのは基本ですが、冷えが気になるときには体を温める食材を積極的に取り入れ、ほてりが気になるときには体を冷やす食材を摂取するというように、うまく使い分けることが冷えやほてりの解消に役立つ場合があります。体を冷やす食材に熱を加えると体を温める食材に変化するといわれることもありますで、調理方法をうまく工夫しましょう。
また、筋肉の材料になるタンパク質(肉類、魚類、大豆製品などに多い)、末梢血管を広げて血液循環を良くするビタミンE(ししゃも、たらこ、アボカド、アーモンドなどに多い)も上手に食事に取り入れることもおすすめです。
食事以外にも、職場や自宅でできる冷え対策があります。職場と自宅に分けて、具体的に見ていきましょう。
デスクワークでも立ち仕事でも、仕事中は長時間同じ姿勢でいること多いです。長時間同じ姿勢のままでいることは血行が悪くなる原因であり、冷えを引き起こす原因にもなります。
仕事中は、休憩中や隙間時間を利用して、階段の昇り降り、ストレッチや体操、マッサージを行いましょう。暖房器具を使う場合は、パネルヒーターやデスクヒーターなどで「下半身を重点的に温める」ことがおすすめです。
自宅の冷え対策でも、「血行を良くすること」「下半身を温めること」がポイントになります。暖房器具は、床暖房やこたつなど、下から温めるタイプがおすすめです。エアコンは暖かい空気が上にたまりやすく、足元が暖まりにくいので、サーキュレーターなどを利用して空気の流れを作りましょう。
職場での対策と同様、熱を生み出すために運動で筋肉を動かすことが冷え対策のポイントになります。外に出られるようなら、ウォーキングやジョギングなどにも取り組んでください。筋肉量を増やすことを意識して、下半身に少し負荷がかかるスクワットなどのトレーニングを行うと、長期的な冷え対策につながりやすく、シェイプアップも期待できます。
自宅の冷え対策では、入浴方法も見直してください。冷え対策を目的にする場合は、ぬるめのお湯にじっくりとつかると、体の内側まで温まるので冷えにくくなります。38℃~40℃程度のお湯に15分〜20分間しっかりつかるのがおすすめです。毎日湯船につかれない場合は、週に1〜2回程度でもかまいません。
湯船につかる時間がないという人は、15~20分くらいの「足湯」だけでも効果が期待できます。足が入るバケツや洗面器などを用意し、40度ほどのお湯をくるぶしまでつかるくらい入れ、足湯を楽しみましょう。
冷えで血流が悪化すると、全身の臓器に酸素や栄養分が行き渡らなくなり、免疫力の低下にもつながります。これらは慢性的な心身の不調を引き起こすこともあります。冷え対策には、ストレッチやスクワット、下半身を温める暖房器具、入浴、身体を温める食材を食べることなどがおすすめです。職場や自宅でできることもありますので、冷えは放置せず、早めに対処しましょう。