記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2022/2/24
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
タンパク質と言えば、プロテインなどの名前で「筋肉を作る栄養素」としてのイメージが強いです。しかし、タンパク質は筋肉以外にも体のさまざまな部分を作るほか、体内の調整などにも役立っています。この記事では、タンパク質の種類や摂取上の注意点を紹介します。
タンパク質は炭水化物、脂質とともに「三大栄養素」と呼ばれている栄養です。人間にとって大切な筋肉や臓器の細胞を作るもとになるほか、体内環境の調整をしているホルモンの材料になったり、エネルギー源になったりします。タンパク質は、おもに「アミノ酸」によって構成されているため、アミノ酸やアミノ酸がいくつかつながった「ペプチド」に分解されてから体内に取り込まれます。
体内に取り込まれたアミノ酸は、いくつか組み合わさって再び必要なタンパク質が作られます。自然界にあるたくさんのアミノ酸のうち、体を作るアミノ酸は20種類あり、目的に合わせて数十個〜数百個が結合して約10万種類の異なる性質・働きを持つタンパク質を作っています。筋肉・肌・髪はすべてタンパク質からできていますが、性質が全く異なるのは、アミノ酸の組み合わせによってその性質が変わるためです。
また、20種類のアミノ酸のうち、9種類は体内で合成できないため、食事から摂取しなくてはなりません。この9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸(=摂取が必須)」、その他の11種類のアミノ酸を「非必須アミノ酸」と言います。つまり、私たちの体を構成するアミノ酸のうち、約半分の種類は自分の体内で合成できず、食べものなどから摂取する必要があるということです。
タンパク質は、人間も含めて生物すべての体を作る基本的な物質です。食事からタンパク質を得る場合は、肉や魚、卵などの「動物性食品」から摂取する方法と、穀物や豆類などの「植物性食品」から摂取する方法があります。このように分類されるのは、それぞれの食材によって含まれる必須アミノ酸の種類や、タンパク質の吸収率が違うためです。
動物性タンパク質の多くは、必須アミノ酸9種類をすべて含んでいます。一方、一部の植物性タンパク質の中には、必須アミノ酸のうち一部が不足しているものもあります。体内でのアミノ酸の働きは、不足している必須アミノ酸の量に合わせられてしまうため、他のアミノ酸をどれだけ多く摂取していても、ひとつでも足りないものがあれば摂取不足となってしまいます。
また、体内の吸収率も、動物性タンパク質は97%と含まれるタンパク質のほとんどが体内に吸収されるのに対し、植物性タンパク質は84%と、約16%が吸収されずに排出されてしまいます。植物性のタンパク質を摂取する場合、単純に含まれるタンパク質の量だけでなく、排出される分も考慮に入れる必要があります。
さらに、動物性タンパク質と植物性タンパク質では、同じアミノ酸であってもペプチドの配列が違い、その違いが体内で別の効果を生んでいることもあります。たとえば、国立長寿医療研究センターの研究(NILS-LSA)によると、動物性由来のプロリンを摂取した人の方が、植物性プロリンを摂取した人よりも「知識力」の得点が上がりやすかったことがわかっています。
このように、同じタンパク質でも、動物性由来と植物性由来では性質が異なります。そのため、動物性のみや植物性のみに偏らず、さまざまな食品を摂取することが大切です。
厚生労働省の「食事摂取基準」によると、日本人が1日に摂取するタンパク質の必要量、推奨量は以下になります(かっこ内は推奨量)。
育ち盛りと呼ばれる15~17歳(高校生ぐらいの年齢)では、男性65g、女性55gが推奨量とされています。しかし、この推奨量はあくまでも健康な状態の人を想定して算出された数値です。たとえば腎疾患を抱えているなど、タンパク質を制限する必要がある方は、医師の食事指導に従い、不安な場合は一度相談してみましょう。
代表的な食品100gあたりのタンパク質量は、以下のようになっています。
これらはあくまでもタンパク質の数値だけを算出していますので、この数値を参考に、高タンパク・低カロリーの食生活を意識しましょう。揚げ物やソース、マヨネーズなどの調味料を摂取しすぎると、脂質の摂りすぎになってしまいます。食事を摂るときはタンパク質だけでなく、脂質やビタミン、ミネラルなど、他の栄養素とのバランスも考えましょう。
タンパク質は人体に必要であり推奨摂取量も多い栄養素ですが、過剰に摂取しすぎると体に悪影響を及ぼす可能性があります。考えられる悪影響として、以下のようなものがあります。
これらの健康リスクは、まだタンパク質をどの程度過剰に摂取したら起こりうるか、というデータや報告にまで至ってはいません。しかし、どんな物質でも過剰に摂取しすぎれば毒になるように、タンパク質も過剰に摂取し続けることが体によいとは限りません。思い当たることがある場合は、タンパク質の摂取量を見直してみましょう。
余ったタンパク質は窒素となり、肝臓と腎臓を通って排出されます。タンパク質は、窒素→アンモニア→尿素と変換しないと排出できません。タンパク質を摂取しすぎると、この分解でかかる負担が多くなり、内蔵疲労を引き起こします。
肉や卵など、動物性タンパク質の多い食品は脂質が多い場合もあり、摂取量によってはカロリーオーバーになりやすいです。また、揚げ物など油をたくさん使う料理も多いです。脂質を考慮に入れたり、調理法に気をつけたりしながら摂取しましょう。余ったタンパク質がカロリーとなる点でも、過剰摂取に注意が必要です。
動物性タンパク質は、体内のシュウ酸や尿酸などを増やす原因になります。シュウ酸はカルシウムと結びつきやすく、腸で便にならなかったものは尿として排出されます。尿中でカルシウムと結びつくと、尿管が詰まったり背中や腹部などに激しい痛みが出たりする「結石」の原因になります。
動物性タンパク質は、腸内の「悪玉菌」のエサとなります。悪玉菌が増えると腸の活動が弱まり、病原菌などに感染しやすくなったり、発がん性を持つ腐敗産物が多くなったりします。また、腸内に腐敗産物が増えると、口臭や体臭の原因にもなることもあります。
タンパク質には、動物性と植物性の2種類があります。同じアミノ酸が組み合わされた同じ種類のアミノ酸でも、動物性と植物性で体内の働きが変わることもありますので、動物性だけ、植物性だけに偏らないバランスのよい食事が大切です。また、データとしては出ていませんが、タンパク質も過剰摂取しすぎると体に悪影響を及ぼす可能性があります。1日の推奨摂取量を参考に、過剰摂取しすぎないよう気をつけましょう。