記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
なぜ、薬物に手を染めた人はやめられなくなるのでしょう? それは、これらに含まれる物質によって気持ち良くなるからです。 中毒性のあるすべての薬物は、脳の快楽回路を活性化し、影響を与える可能性があります。 今回は薬物が脳に与える影響を解説します。
薬物が脳に与える影響に関する研究の結果について以下にまとめました。
アシッド(LSD)とマジックマッシュルームは、幻覚を起こさせ、身の回りの世界を現実とは違う奇妙なものに変えます。使用すると、周囲の色が濃くなり、音が歪んで聞こえることがあります。その後パニック状態になり、偏執病になるケースも少なくありません。LSDの効果は12時間以上続き、おそろしい幻覚におびえることもあります。
フラッシュバックを経験する薬物使用者もいます。時には、実際には存在しないものを信じたり見たりする精神病や偏執病になることもあります。
大麻を吸引するとリラックスして気分が高揚しますが、起こったばかりのことでさえ記憶するのが難しくなる可能性があります。パニックや偏執病を引き起こす可能性もあります。 大量の大麻を定期的に使用すると、混乱や妄想などの一時的な問題が発生する危険があります。
大麻は、精神病、統合失調症、うつ病など、長期の精神的な問題を引き起こす可能性があります。精神病の家族歴がある大麻使用者は、特にこれらの症状の影響を受けやすい可能性があるという証拠があります。
コカインは、気分を高揚させ、自信や活力に満ちているように感じさせる覚醒剤です。しかし、これは不安感、パニック、偏執病に変わる可能性があります。コカインの使用者は、最終的には疲れて憂鬱になります。
コカインとクラック・コカインをやめることは、精神的な苦痛を伴うことがあり、依存症の使用者にとってやめることは困難です。長期間の使用は、既存の精神的な問題を悪化させ、うつ病、不安、偏執病につながります。
エクスタシーは幻覚作用と覚醒作用を伴う薬物で、リラックスした気分にさせ、あらゆる人に対して愛情を感じるようになり、一晩中踊ることができる効果があります。しかし、すでに不安を感じている人や高用量を摂取している人は、ひどい偏執病になったり、ボーっとしたりすることがありますす。
定期的に使用すると、睡眠障害、エネルギー不足、劇的な体重減少、うつ病や不安につながることがあります。エクスタシーが与えてくれる幸福感と心の落ち着きに精神的に依存するようになります。研究によると、エクスタシーを摂取することで使用者のセロトニンレベルが低下し、脳の特定の領域に影響を与える可能性があるということがわかっています。
ヘロインや他のアヘン剤は身体の機能を低下させ、身体的および精神的な痛みを抑えます。 使用者は、ヘロインの摂取量をどんどん増やしていかないと同じ効果を得られないと感じるようになります。過剰に摂取すると、昏睡状態や死に至ることがあります。
ヘロインは精神的にも肉体的にも非常に中毒性があります。ヘロインの禁断症状は非常に苦しいものであり、ヘロインをやめることは非常に難しいとされています。
ケタミンは、リラックスさせ、気分を高揚させる麻酔薬ですが、その効果は予測できません。自分がやっていることをコントロールできなくなります。ケタミンを摂取した後に、ぼんやりと歩き回って事故に遭ったり、一晩中外にいて低体温を起こすというトラブルも多く報告されています。ケタミンは、自分自身や他人から切り離されたような気分にさせ、既存の精神的な問題を悪化させる可能性があります。
耐性ができるのが非常に早く、気分を高揚させるためにより多くのケタミンが必要だと思うようになります。長期的な影響は正確に特定できませんが、フラッシュバックや記憶力と集中力の低下が起こることが多いようです。ケタミンの長期使用が膀胱に深刻な損傷を与える可能性があるという報告が増えている一方で、精神病の症状が現れるという症例も見られます。
シンナーは酔っ払った感じになり、幻覚を引き起こすことがあります。
シンナーを多量に使用すると、脳に害を与える可能性があります。感情をコントロールしたり、客観的に考えたり、物事を覚えたりするのが難しくなります。
アンフェタミンとメタンフェタミンも、日本ではどちらも覚せい剤として厳しく取り締まられています。メタンフェタミンはスピードやクリスタル・メスとも呼ばれ、摂取するとすぐに元気になり、自信を感じるようになりますが、パニック障害、怒りっぽくなる、みんなに見られているという妄想を引き起こす可能性もあります。また、極端な長期にわたる高揚感を与えますが、激しく失望もさせ、絶望と悲しみを感じさせます。
アンフェタミンよりも、メタンフェタミンの方が薬理作用が強い覚醒作用を持つとされ、日本においては、メタンフェタミンの方が多く出回っているといわれています。
スピードの長期的な大量使用に関する研究はありません。ナット教授は、特に定期的にスピードを注射し、永続的に落ち込んでいるように見える使用者を調べたところ、客観的に考えることや物事を記憶すること、問題解決、感情をコントロールすることが困難なることがわかりました。
ステロイドは筋肉量を増やしますが、「ステロイドによる攻撃性」が引き起こされます。暴力を振るったり、性的虐待を引きおこす可能性があります。また、ステロイドは睡眠を困難にし、混乱、憂鬱、偏執病を引き起こす可能性があります。
心理的依存につながることがあり、薬物なしではうまくやっていけないと思うようになります。
バリウムなどの精神安定剤は鎮静作用のある薬物です。不安を和らげ、睡眠補助薬として使われます。コカインやスピードなどの薬物による失望感を解決するために精神安定剤を使う薬物使用者もいます。
身体はすぐにベンゾジアゼピンに慣れ、同じ効果を得るために、すぐにより多くの量を必要とするようになります。わずか数週間で中毒になる可能性があり、中毒になるとやめることは難しいといわれています。離脱症状や副作用として、気分が悪くなったり、眠れず、非常に不安になることがあります。突然高用量の摂取をやめるのは非常に危険で、深刻な痙攣を引き起こす可能性があります。
薬物を断ち切る最初のステップは、あなた自身が自分の行動を支配できると理解することです。 あなたは、自分の人生で起こることや他の人々についてコントロールすることはできませんが、自分自身がどう対処するかはコントロールできます。薬物中毒を解消するためのステップは以下のとおりです。
いったん辞めることに決めたら、確実に実現する計画を立てる。
医師はあなたをサポートし、ニーズに合った治療法を見つけてくれるだけでなく、中毒から回復する際の禁断症状やその他の問題を治療することもできます。
家族や友人にサポートを依頼すること。 また、第三機関に連絡することも良いでしょう。これらのグループは、中毒を解消し、あなたの人生を変えるために必要なツールとサポートを提供できます。
薬物は1度使用してしまうと中毒になり、短期的、長期的に脳やからだに悪影響を及ぼし、あなたの人生を台無しにします。薬物が脳に与える影響を知り、薬物に手を出さないようにしましょう。