糖尿病の運動療法の効果を上げるコツと禁忌事項とは!?

2017/7/25 記事改定日: 2018/8/30
記事改定回数:2回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

食事療法や薬物療法と並んで、糖尿病治療には運動療法が欠かせません。
この記事では、糖尿病治療における運動療法の効果やおすすめの運動法、注意点などについてまとめているので、治療の参考にしてみてください(※ただし運動療法を行う場合には事前に医師に確認するようにしてください)。

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糖尿病の運動療法におすすめの運動とは?

ここでは、糖尿病治療のための運動療法におすすめの運動を紹介します。
医師と相談の上、以下のような運動を取り入れてみてください。

有酸素運動

有酸素運動は脂肪を燃焼させてインスリンの働きをサポートする効果が高いです。
ウォーキング、水泳、フィットネスバイクなど、毎日30分程度の運動を継続的に行うようにしましょう。一度にまとめて運動できない場合は分けて行ってもかまいません。

筋力トレーニング

筋力トレーニングには軽度・または中程度の運動で筋肉をつけることに加え、骨を強化して骨折しづらくする効果があります。また、筋肉がつくほど身体の基礎代謝があがってより多くのカロリーを消費できるようになるため、肥満の解消・防止への効果が期待されています。
ダンベル、ゴムバンド、ウェイトマシーンなどを使って、無理の無い範囲で徐々に負荷を強くしながら週に3回程度のトレーニングを続けるのがおすすめです。

ストレッチ運動

ストレッチによって筋肉の柔軟性を保つことができます。
また、深い呼吸でストレッチを行うことでストレスが和らぐ効果があると期待されています。

日々の生活にプラスαの運動を

忙しくて運動する時間が無い!という場合には日常生活で少し工夫をすることで運動量を増やす方法がおすすめです。
たとえばエレベータを使わないで階段で上り下りする、店の入り口から遠いところに車を停めたりして歩く習慣を増やす、仕事の休み時間に散歩をする、家の中での移動はつま先歩きにするなど・・・運動量を増やすように行動することで運動効果が得られるようになります。

糖尿病治療における運動療法の目的

まず、運動は血糖値を低下させると同時に肥満を解消する目的があります。また、糖尿病の患者がかかりやすい血管合併症などの予防や進行を抑える目的、さらには体を動かすのが楽になり、日常生活を快適に送れるようになるというメリットがあります。

運動には、以下のような効果があるので、その効果による健康維持も目的のひとつです。

  • 心臓や肺の働きを強化する効果
  • 血圧を下げる効果
  • 足腰など下肢の筋力を強くして、老化を予防する効果
  • 血液の循環をよくする効果
  • ストレス解消など気分転換の効果

運動をしないほうがよい場合もあるって本当?

上の項目で説明したように、運動は糖尿病の治療効果を高めることができる一方で、病状によっては逆に高血糖や低血糖を引き起こす原因になったり、病状を悪化させてしまう場合もあります。

一般的に2型糖尿病で合併症がなく血糖コントロールが安定している人や、合併症があっても程度が軽いという人は、運動療法が適しているといわれています。しかし、糖尿病のさまざまな合併症(特に糖尿病性網膜症、腎症、自律神経障害など)がある場合には、運動が症状を悪化させてしまう可能性があるので、病状が安定するまで運動は控えた方がよいです。

また、何らかの原因で血糖が高くなって尿ケトン体が出現した場合や血中ケトン体の上昇が認められた場合、感染症で高熱が出るなど急性の変化があった場合にも、病状が落ちつくまでは運動は控えてください。
運動を行えるとしても運動内容に注意や制限が必要なので、どのような運動をどの程度行えば良いのかを医師に指示してもらいましょう。

運動療法に取り組むにあたっての注意・禁忌事項

ここでは運動療法に取り組む際の注意事項と禁忌事項を紹介します。運動をするときには以下の点に気をつけるようにしましょう。

足にあった運動靴を用意する

糖尿病治療の一環で運動をするときは特に、自分の足にあった運動靴を選ぶことがとても大切です。
血糖コントロールが悪いと足の感覚が鈍くなってケガをしても痛みを感じにくく、細菌感染を起こしやすくなる傾向があるため、合わない靴によって起こした靴擦れが重症化してしまうこともあるからです。

運動の前後に足の状態を確認する

伸びた足指の爪による傷、ウオノメやタコも、運動したときにそこに負荷がかかります。運動する前後には靴ずれや小さな傷、ウオノメやタコなどができていないかなどをきちんと確認しましょう。
また、運動後に汗をかいたら足指やその間をよく洗って乾燥させ、清潔に保つことも大切です。

運動中の低血糖対策や水分補給を忘れずに!

インスリン療法や経口血糖降下薬による薬物療法を受けている人は、運動中に低血糖になる危険性があります。角砂糖、ブドウ糖やショ糖を多く含むジュース、アメなどを常に携帯して、低血糖状態になってもすぐに対処できるようにしておきましょう。

また、運動すると汗をかいて体内の水分が失われます。そうすると脱水状態になって、血液の粘度が増しやすくなります。特に糖尿病の人はそうでない人に比べてもともとの血液の粘度が高いので、運動して汗をかいたらカロリーのない水やお茶などでこまめに水分補給をしてください。

運動は食後に

低血糖や高血糖を防ぐために、糖尿病の人は食後1時間程度の運動が望ましいとされています。
特に低血糖を起こす可能性が高い食事前(空腹時)の運動は避けてください。
(※運動に適したタイミングには個人差があるので、自分が運動するのに適した時間帯を医師に確認してください)

運動療法と食事療法を組みあわせて行うときのコツは?

適切な血糖コントロールを行うには、運動療法と食事療法を合わせて行うことが大切です。薬物療法を行っている人でも、食事療法や運動療法を行うことで、糖尿病の更なる悪化を防ぐことができます。

食事療法は基本的には、自身の身体活動に合わせた適正カロリーを守り、総カロリーの50~60%を炭水化物から摂取し、標準体重1kgあたり1.0~1.2gのタンパク質、残りを脂質で摂取するように推奨されています。また、高脂肪・高糖分の食事を避け、野菜が多い和食中心の食生活を心がけることも大切です。

食事療法は、腎症などの合併症がある場合には更に厳密な管理が必要となります。始める場合には、自己判断で行わず医師や栄養士の指導を受けながら行うことをおすすめします。

おわりに:運動療法は注意事項を守って無理の無い範囲で取り組むことが大切

糖尿病治療において欠かせない運動療法ですが、糖尿病の種類や状態によってはかえって危険を招く場合もあります。運動をする前には、医師に運動をしても良いかどうか、どんな運動をどの程度するのが良いのかを必ず確認しましょう。
また、低血糖対策や足の状態の確認など、運動前後に必要なケアをきちんと行うようにしてください。

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