記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/31 記事改定日: 2018/11/28
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
マイコプラズマ肺炎は風邪と症状が似ていているため、症状や問診だけで診断はできません。また、X線(レントゲン)検査で他の肺炎との鑑別ができないため、診断のためには特別な検査が必要になります。
この記事では、マイコプラズマ肺炎の検査について詳しく説明していきます。
マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae )という病原体が感染することにより発症するマイコプラズマ肺炎。肺炎球菌やインフルエンザ菌によって起こる肺炎とは少し症状などが異なるため、非定型肺炎、異型肺炎とも呼ばれます。
症状としては、頭痛や全身の倦怠感、発熱が起こり、そしてこれは特徴でもありますが、痰の伴わない乾いた咳が出ます。
咳は少し遅れて始まることもありますが、いずれにしても3~4週間という、長期にわたって続きます。最初は風邪かなと思っても、咳が長く続く場合は、マイコプラズマ肺炎を疑ったほうがいいかもしれません。
他には、のどの痛みや鼻水、鼻づまり、呼吸困難、喘鳴、喘息のある場合は喘息の悪化などが現れることがあります。
また、感染後の症状の進行が緩やかなのも特徴で、発熱も高熱にはならないことが多いです。乳幼児ほど症状が軽い傾向にあり、ほとんどは気管支炎程度でゆるやかに治癒していきますが、大人になるにしたがい、肺炎に進行したり重症化する可能性が上がります。
飛沫感染と接触感染によってうつっていくため、予防法としては風邪やインフルエンザに対して行なうのと同じく、手洗いとうがいが重要です。また、人ごみではマスクを着用するようにしましょう。
肺炎かどうかの判定自体は、胸部X線(レントゲン)検査により可能です。しかし従来、それが肺炎マイコプラズマによるものなのかを確実に診断することは、なかなか難しい現実がありました。
近年は、まず「咳と発熱がひどいが、聴診では正常」という状態があるところに、レントゲンと併せて以下のような検査を総合的に判断していきます。
マイコプラズマのDNAを直接検出する方法で、比較的、正確に診断できる検査方法と言われています。
まず、綿棒でのどの奥をこすって採取した咽頭ぬぐい液か、喀痰検体から細菌のDNAを採取します。
この細菌が増殖するのは気管支や肺まで到達してからで、のど付近にはあまり存在していません。そのため、咽頭ぬぐい液を使った検査の有効性はあまり高くないですが、膿性部分のある喀痰を採取できた場合、菌の検出率は高くなります。
痰を採取し、培養する検査もありますが、結果が出るまでに1週間以上かかってしまいます。
より早く結果を知ることができる方法として、DNAの1部分だけを増殖させるPCR法がありますが、実施できる施設に限りがあるため、一般的な検査方法ではありません。
LAMP法と同じように、咽頭ぬぐい液で検査する方法です。この方法のメリットは、結果が判明するまでが10分程度ですむところです。たとえば痰を採取して培養する方法は結果が出るまでに1週間以上かかり、また、LAMP法も2~3日必要です。
結果が判明するまでのスピードで選択するなら、プライムチェックがよいでしょう。ただし、発症初期の判定の精度に関しては、LAMP法に劣ります。
マイコプラズマが感染すると、体は菌を排除するためにマイコプラズマに対する抗体をつくります。この抗体の量を測定することでマイコプラズマの感染を検出することができます。
ただ、採血は症状がある急性期と2週間後の回復期の2度行なう必要があるのが欠点です。早めの治療がよいことを考えれば、回復期にまた採血を行なってマイコプラズマと判明しても遅いこともあり、あまりこの採血方法は採用されていません。
マイコプラズマ肺炎にかかっていても、検査で陰性と判定されることがあります。
一般的な医療機関では、迅速性を重視してプライムチェックを導入していることが多いですが、プライムチェックでは発症初期には感染していたとしても陰性と判定されてしまうケースが少なくありません。
プライムチェックは、血液中の抗体反応によってマイコプラズマ感染の有無を判定する検査ですが、発症初期には十分な抗体反応が生じないため、検査上は陰性と判定されてしまうのです。
プライムチェックで陰性の場合でも、症状や画像検査の結果からマイコプラズマ肺炎が強く疑われる場合には、より精度の高いLAMP法などが行われます。結果が出るまでには2~3日ほどかかりますので、その間はマスクを着用するなど周囲に感染を広げないように注意しましょう。
マイコプラズマに対しては抗生物質の投与を行います。ただし、一般的なペニシリン系やセフェム系といった抗生物質は効果がありません。マクロライド系の抗生物質やテトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗生物質が必要です。
2002年あたりから問題となっているのが、マクロライド系の抗生物質(クラリス、クラリシッド、ジスロマックなど)に対する耐性を持ったマイコプラズマが増えていることです。
そのため、場合によっては、テトラサイクリン系抗生物質やニューキノロン系抗生物質が次の選択肢として処方されることもあります。
4年に1度、周期的に流行していたマイコプラズマ肺炎ですが、最近、そのような周期は関係なくなってきています。コンコンと乾いた咳がずっと続くようであれば、重い肺炎になる前に、医師に診てもらいましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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