中耳炎で切開した鼓膜はどれくらいで再生する?治療の目的は?

2017/9/12 記事改定日: 2019/1/22
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

中耳炎は、中耳における感染や炎症のことで、治療法はさまざまなものがあります。今回は、中耳炎を治療する際に鼓膜を切開する場合について解説します。

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中耳炎で鼓膜を切開するのはどんなとき?

中耳炎の治療は、急性か慢性か、原因となるものは何かによって方法が変わってきます。細菌の感染が原因になる場合は、抗生物質の服用や点耳などが行われ、ウイルスによるものであれば、抗生物質は使わず、対症療法として鎮痛剤を服用し3日程度経過を見ます。

これらの方法で改善されない場合は、抗生物質の変更や鼓膜の切開、手術など、他の治療が必要になる場合があります。

鼓膜切開の目的

中耳炎で鼓膜を切開する目的は主に2つあり、1つは鼓膜の内側の中耳に貯まっている貯留液(膿)の排出、もう1つが排出後の中耳腔内の換気です。

痛みが強かったり発熱がある急性中耳炎の場合、膿の排出のために鼓膜切開を行い抗生物質を服用します。切開した穴は通常自然に塞がるので心配ありません。

滲出性中耳炎では、鼓膜の切開の後に鼓膜チューブで滲出液の排出が行われますが、急性中耳炎でも何度も繰り返すような反復性中耳炎の場合でも、同様に鼓膜チューブが使われることもあります。

慢性中耳炎は、鼓膜に穴が開いている状態のため、鼓膜切開は行われません。抗生物質の使用とともに、鼓膜形成術や鼓室形成術、乳突洞削開術などの手術が検討されます。

中耳炎の鼓膜切開の流れ

鼓膜切開は、通常イオントフォレーゼと呼ばれる局所麻酔を使って行います。ただし、急性中耳炎で鼓膜がひどく炎症している場合は知覚神経が麻痺していて痛みを感じにくくなっていることも多いため、麻酔なしで切開することもあります。

また、滲出性中耳炎の場合も鼓膜の麻酔自体はイオントフォレーゼが使われます。ただし、鼓膜切開の後に鼓膜チューブを入れる必要があるため、局所麻酔でチューブが挿入できないような赤ちゃんなどの場合には、全身麻酔が必要です。

切開した鼓膜はどれくらいで治るの?

鼓膜を切開すると音の聞こえが悪くなるのではないか、と心配する人も多いですが、治療によって切開した鼓膜は自然にふさがりますので安心して下さい。

鼓膜切開の穴は非常に小さく、ヒトの体では、傷を修復しようとする力が働きます。切開した鼓膜は一週間程度でふさがるのが一般的です。
ただし、重度な中耳炎など鼓膜の炎症が強い場合には、治りが遅くなることもあります。治療後も耳鼻科に通院して慎重に経過を見ていくようにしましょう。

切開した後、聞こえにくくなる可能性は?

中耳炎になると、鼓膜の内側に膿などがたまっているため、耳が聞こえにくい状態になっています。そのため、中耳炎になっている人の鼓膜を切開すると、膿が排出されるため聞こえ方が改善することがほとんどです。また、数回程度切開をしたとしても後遺症が残ることもないとされています。

ただし、あまりに多く切開を繰り返した場合は、非常にまれにではありますが瘢痕化する可能性があることが報告されています。中耳炎を繰り返さないように、日ごろから注意することが重要です。

おわりに:重症化すると鼓膜を切開する可能性がある

中耳炎が重症化した場合、鼓膜を切開する可能性がありますが、鼓膜を切開しても耳が聞えにくくなることはありません。また、鼓膜もすぐに塞がりますので、医師から切開をすすめられても、心配する必要はないでしょう。

ただし、繰り返す中耳炎は鼓膜の切開では治らない場合もあります。何度も中耳炎になってしまうという人は、必ず医師にその旨を伝えるようにして、適切な治療を行ってもらいましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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