記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/11 記事改定日: 2018/11/13
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心臓は他の臓器に比べ悪性腫瘍ができにくいといわれています。しかし良性腫瘍は治癒率は高いですが、悪性腫瘍は進行が速く予後も不良なため注意が必要です。この記事では、心臓の腫瘍について詳しく解説しています。
ごく稀なことですが、心臓にも腫瘍ができます。心臓にできる腫瘍は良性が70%、悪性が30%とされ、良性の中で半数を占めるといわれるのが粘液腫です。粘液が基質となったものであり、女性の方が男性の2〜3倍罹患しやすいといわれます。
悪性腫瘍には心臓から発生した原発性のものと他の部位から転移したものがあります。原発性のものには、悪性中皮腫、肉腫、悪性リンパ腫があります。いずれも予後不良で、放射線や放射線など化学療法が効きにくいことが特徴です。
転移性の心臓腫瘍とは、他の部位にできたがんが転移したもので、原発巣には肺がん、乳がん、悪性リンパ腫が多くみられます。しかし心臓への転移はそう頻度が高いものではなく、すべてのがんのうち10〜20%とされています。
心臓はそもそもがんができにくい臓器です。心臓は横紋筋という筋肉で成り立っていますが、この筋肉は細胞分裂をほとんどしません。したがって細胞が異常増殖するがんは発生しにくいのです。
また心臓の温度は常に40度くらいの高温です。がん細胞は42度で死滅するといわれるように熱に弱く、そのこともまた腫瘍ができにくい原因と考えられています。
心臓にがんができる主な原因は、他の部位にできたがん細胞が血流に乗って移ってきて増殖することです。良性腫瘍ができる原因には諸説あり、まだ明確な原因がありません。
血液検査、心臓超音波、CT、MRI、新血管造影検査などで心臓の状態を検査し診断が行われます。診断を確定するために心膜や細胞などの生検が行われることもあります。
脂肪腫などの良性腫瘍ができると、発熱や関節痛、体重減少や呼吸困難が起こり、眠気がとれない、寒気がする、胸が痛いなどといった症状が現れることもあります。
悪性腫瘍ができると、それに加えて心タンポナーデや心膜炎、不整脈を発症します。心タンポナーデとは心臓とその外膜の間に血液などの液体が溜まり、すき間が乖離したり心臓が充分に拡張できなくなる状態です。さらに心不全を起こすこともあります。
また悪性の症状は良性に較べてより急速に現れ進行する特徴があり、特に転移性の場合は、突然心拡大や心タンポナーデを起こすケースがみられます。非常に危険な状態ですので症状が悪化した場合は、より早急に対処することが必要とされます。
心臓腫瘍は非常に珍しい病気ですが、子供と大人では腫瘍の種類や経過、予後などの特徴が異なります。それぞれの特徴は以下の通りです。
小児の心臓腫瘍で最も多いのは横紋筋腫であり、約半数を占めています。胎児や新生児の頃に発症することもあり、生後腫瘍が縮小することもありますが、中には腫瘍が大きく生まれてすぐに重篤な心不全を引き起こすことがあります。
新生児は心機能も未熟なため、腫瘍による心臓内の血流障害などが原因で40%は生後半年以内に死亡するとされています。他にも、子供に多く見られる心臓腫瘍には、線維腫や粘液腫がありますが、横紋筋肉腫に比べて予後は良く、手術で摘出することで完治を目指すこともできます。
しかし、子供は心臓自体が小さいため、腫瘍が大きくなると心機能に異常を来たやすいです。
大人の心臓腫瘍で最も多いのは粘液腫です。
粘液腫は柔らかく、良性の腫瘍であるため急激に大きくなることはありません。手術によって取り除くこともできます。しかし、腫瘍がある程度大きくなるまでは自覚症状が現れないことが多いです。
粘液腫は、心拍動の刺激で腫瘍の一部がはがれ、それが原因で脳梗塞や肺梗塞、腎梗塞などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。
まれに心臓に悪性リンパ腫や他臓器のがんが転移することもありますが、心臓にできた悪性腫瘍は切除が難しく、抗がん剤や放射線治療を行っても予後が悪いことがほとんどです。
良性腫瘍の治療は手術で切除することが第一の選択となります。認知症など手術の禁忌となる疾患がない限り手術が適用されます。手術では、人工心肺という機械で一時的に血流を止め、腫瘍の切除が行われます。手術後の治癒率は高く、3年後の生存率は95%に上りるとされ、退院後は普通に社会生活を送ることができます。しかし粘液腫の場合は10%の確率で再発することも多く、症状がない場合は手術をせず経過観察を行う場合もあります。
悪性の場合は予後不良であるため、通常は緩和療法が選択されます。放射線、抗がん剤などの化学療法、合併症の管理が行われます。
しかし悪性では、化学療法の効果はあまり見られず、予後を改善させる治療法もまだ報告はありません。
心臓にはがんができにくいため、腫瘍ができた場合でも良性の場合が多いです。しかし、悪性腫瘍は良性腫瘍に比べて進行が速く予後も不良です。体重減少や呼吸しにくい、眠気がとれないなど疑わしい症状が現れたときはなるべく早めに病院を受診し、早期に対処できるようにしましょう。
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