記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/31 記事改定日: 2018/12/18
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
日本人の死因の多くを占める「脳出血(脳内出血)」。
一度は聞いたことのある病名かとは思いますが、ただ、具体的にどんな症状が現れるのかまでご存知の方は案外少ないのではないでしょうか。
症状や原因、治療法など、全般的なことをわかりやすく解説していきます。
脳出血(脳内出血)は、脳の周囲に張り巡らされている毛細血管が何らかの原因で破裂し、出血することで脳障害を引き起こす病気です。
意識障害や運動麻痺の他、感覚障害など様々な症状が現れます。出血した部分には血腫ができるのですが、これが大きくなると 脳浮腫といって頭蓋内圧が高まり、最悪の場合は死に至ってしまいます。
近年では医療の発達や健康志向の高まりによって脳出血による死亡者数は減少していますが、運動障害や認知機能の低下などの後遺症によって長く苦しむ患者さんが多くなっており、早急な対策が求められています。
脳出血を防ぐには血圧のコントロールも重要なポイントなので、生活習慣の改善など患者さん本人の努力によって予防できる部分も大きいです。
症状はさまざまですが、基本的には頭痛や嘔吐、意識障害に麻痺などが見られます。
ただ、出血した部位や血腫の大きさなどによっても症状の種類や重さが異なり、回復しても後遺症が残るケースも多いです。
例えば被殻出血では麻痺や感覚障害、視野の狭窄が主な症状で、悪化すれば意識障害が現れます。視床出血では麻痺に感覚障害、身体の半分に強い痛みを感じることもあります。
皮質下出血は脳の中でも頭頂葉や側頭葉、前頭葉などでよく見られ、軽度から中等度に及ぶ麻痺や視野の狭窄、失語といった症状が現れます。橋出血(きょうしゅっけつ)は急に意識を失ったり、高熱や瞳孔の縮小、呼吸困難や全身の麻痺など予後が深刻になることが多いです。
小脳出血だと突然の眩暈や歩行障害、頭痛に吐き気などが見られます。
脳出血の主な原因は、高血圧によって血管が耐え切れず破れてしまうことです。これが全患者の7割を占めており、いかに多い原因かが分かります。
血圧が高くなってしまうのは、生活習慣の乱れや加齢によって血管が硬くなる動脈硬化が大きく影響しています。コレステロールが蓄積して動脈硬化が進行すると血管内の空間が狭くなり、そこを大量の血液が通るため必然的に圧力が高まります。また動脈硬化は同時に血管そのものも脆くしてしまうため、健康な人と比べると血管が破れやすくなっています。
また、先天的に脳血管に障害を抱えている場合も、血管への負担が大きく、損傷して出血してしまう可能性があります。原因が先天的にしろ動脈硬化にしろ、適切な治療を行って血圧をコントロールすることが欠かせません。
脳出血を起こした場合、脳のダメージを軽くして再出血を防ぐことが治療の主な目的となります。具体的には、脳出血によって生じた症状を改善するために、頭蓋内圧亢進を軽くする抗浮腫薬や血圧を下げる降圧剤などを服用することになります。
こうした直接的な治療の他、合併症を予防するために外科的な治療の必要性も検討されます。重い脳出血の場合は発症から3日目が浮腫が強くなり、2週間程度は浮腫が続くので油断せずグリセオール®やマンニットール®などの抗浮腫薬を使用します。
あまりに出血が多く危険な場合は外科的な手術も行われますが、脳という繊細な場所だけに危険性も大きいため、昏睡状態など余程重篤な場合や再発が予想される場合以外は、基本的に薬物治療がメインとなります。
脳出血は病変部位の脳の細胞に大きなダメージを与えます。一度ダメージを受けた脳の細胞は完全に元に戻ることは難しく、様々な後遺症を遺すことがあります。
後遺症の症状や程度は、脳出血によってダメージを受けた脳の部位や重症度によって異なりますが、運動・感覚麻痺や言語障害、嚥下障害、顔面神経麻痺などが挙げられます。
リハビリで後遺症を克服しながら社会復帰する人もいますが、寝たきりや介護が必要になる人も少なくありません。また、これらの神経障害がない場合でも感情を司る前頭葉にダメージを受けた場合には、怒りっぽくなる・注意力が低下してミスが増えるなど人格が変わったようになる高次脳機能障害を発症する可能性もあります。
さらに、脳出血は再発しやすい病気でもあります。脳出血の原因は生活習慣病による動脈硬化や高血圧などですが、これらの原因が改善しない限り、再発するリスクは非常に高いと考えてよいでしょう。
治療後に、脳出血の再発を予防するためにも、食生活や運動習慣などの生活習慣を見直し、原因となる病気がある場合には適切な治療を続けるようにしましょう。
出血した部位によって現れる症状はさまざまですが、麻痺や意識障害、運動障害などが現れた場合は、脳出血を起こしている可能性があります。
死に至るリスクが高く予後もあまり良くない病気なので、特に高血圧の持病のある方は、ご紹介したような症状がみられたらすぐに病院で検査を受けましょう。
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