脳震盪の症状 ― 病院へ行った方がいいのはどんなとき?

2017/10/31 記事改定日: 2018/12/18
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

脳震盪(のうしんとう)はラグビーなどの接触が多いスポーツに頻発する障害であり、非常に身近なものです。
軽度のものであれば自然回復しますが、まれに後遺症が残る恐れがあります。この記事では脳震盪についてまとめているので、頭を打ったときに適切な対処がとれるように役立ててください。

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脳震盪(のうしんとう)とは

脳震盪とは、頭を強く打ったあとで意識障害があったり、呼びかけに応じないなどの意識消失があったりする状態のことです。頭を打つ前後の記憶がなくなってしまうこともありますが、CTやMRI検査では異常が見られないのが特徴的です。「外傷によって引き起こされた脳の機能障害であり、標準的な画像検査で構造的な障害を認めない」と定義されていますが、明確な判断基準はありません。

転落や転倒によって頭を打ってしまったり、自動車事故などの衝撃を受けたりすることが主な原因です。ラグビーやアメフトが盛んなアメリカでは、年間400万人ほどがスポーツによる脳震盪を起こしているともいわれており、非常に身近な障害といえるでしょう。

脳震盪の症状

脳震盪の状態は、衝撃の直後に出ることもあれば、数時間から数日経過してから発症することもあります。

頭部に外傷を負った直後に意識がない、会話が成り立たない、呼びかけに応じないなどの意識障害が現れたり、頭痛や吐き気、嘔吐、めまいが現れることもあります。症状の重度や期間は外傷の大きさや個人差によって変わります。

脳震盪は一般的に3つのレベルに分けられており、「一過的に意識が混濁するが失神はしておらず、記憶は正常」なのが軽度、「2分以内の失神や記憶障害、手足のしびれが現れる」のが中度、「2分以上の失神に加えて、記憶障害、手足のしびれ、頭痛吐き気」などが続いている場合は高度としています。

中度以上の脳震盪が確認された場合には、脳内に異常をきたしている可能性があります。速やかな処置が必要です。

すぐに病院を受診すべき症状

脳震盪は軽度な場合であれば治療の必要はなく、経過をみてよいことがほとんどです。
一方、以下のような症状がある場合は脳がダメージを受けている可能性がありますので、速やかに病院を受診するようにしましょう。

子供の場合

子供の頭蓋骨は柔らかく、頭に衝撃が加わると脳にダメージを与えやすいのが特徴です。また、自分で症状を訴えることができない場合もあり、受傷後数日経ってから症状が見られる場合もあります。以下のような様子が見られた場合は要注意です。

  • 視線が合わない
  • 話の内容がおかしく、つじつまが合わない
  • ぶつけた部位に大きな瘤ができている
  • 10秒以上の意識消失があった
  • 嘔吐があり、ぐったりしている
  • 顔色が悪い

大人の場合

大人は頭蓋骨が頑丈にできており、通常の転倒や打撲などで脳にダメージが加わることはほとんどありません。しかし、脳の血管の一部が切れ、受傷後数時間後に突然具合が悪くなることもあります。以下のような症状がある場合は注意しましょう。

  • 受傷後30分~数時間の間に嘔吐や強い頭痛、めまいが生じた
  • 受傷後1分以上の意識消失があった
  • 手や足の痺れ、動きにくさがある
  • 言葉が滑らかに出てこない

脳震盪の治療

脳震盪を起こしたという自覚がある場合で、意識障害はないものの頭痛や吐き気、ふらつき、めまいなどの症状が出ているうちは動き回ったりせず、安静にするようにしてください。
座るか、できれば横になり身体を休ませることで、症状がおさまります。症状がおさまれば日常生活を送ることができるでしょう。
ただし、活発な運動は数日間控えるようにしてください。また、念のため病院で検査してもらうことをおすすめします。

一方、中度、高度だと感じられる脳震盪の場合には、すぐに病院を受診し、脳に異常がないか調べ、適切な治療を受ける必要があります。

高度の脳震盪の場合には急性硬膜下血腫の可能性があり、その際は開頭緊急手術が必要になりますが、救命できるのは約半数とされています。

後遺症の心配はあるの?

頭痛や吐き気といった脳震盪の症状は、通常10日以内に消失します。ぼーっとする、集中できないなどの症状も、受傷してから2週間程度で消えることがほとんどです。しかし、「脳震盪後症候群(脳震盪を起こした後にさまざまな不快でつらい症状が現れること)」を起こすと、数ヶ月から1年以上にわたって続くことがあります。
さらに、脳震盪を繰り返すことによって脳にダメージが蓄積してしまう「慢性外傷性脳症」にも注意が必要です。アメフトなど頭をぶつけることが多いスポーツは特に注意が必要であり、繰り返すと永続的な認知機能の低下などの恐れがあります。

一度脳震盪を起こすと6倍発生率が高くなるともいわれており、脳震盪の症状がおさまらないうちに再び脳震盪を起こすと「セカンドインパクト症候群」といって、脳が異常に腫れ、命の危険があるともいわれています。

おわりに:軽度の脳震盪は自然回復するが、障害が起こる可能性もあるので、なるべく病院で検査してもらおう

重度の脳震盪は緊急に治療を受ける必要がありますが、軽度のものであれば安静にすることで回復していきます。しかし、まれに脳震盪後症候群などにつながるケースもあるため、脳震盪を起こしたときは念のため病院で検査してもらい、回復後も経過に注意するようにしましょう。

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頭痛(190) 吐き気(123) 後遺症(30) 脳震盪(5)