記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/15 記事改定日: 2020/5/18
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
内視鏡やバリウム検査で「萎縮性胃炎」や「慢性胃炎」を指摘される人は多くいます。萎縮性胃炎とは、慢性胃炎が長引いて発症する病気です。胃の病気は珍しくはありませんが、放置するとほかの病気を引き起こすリスクが上昇します。この記事では萎縮性胃炎の原因や注意点、萎縮性胃炎と診断されたら知っておきたい治療法や胃がんなどの病気との関係性をまとめました。
「慢性胃炎」とは、ピロリ菌感染などが原因で胃の粘膜に慢性の炎症を起こした状態の病気です。慢性胃炎では、胃液や胃酸を分泌する胃腺が収縮し、胃の粘膜に影響を与えます。
この慢性胃炎が長く続き、胃の粘膜がうすくやせてしまう「萎縮」が進行した状態を「萎縮性胃炎」と呼びます。
内視鏡で胃の検査をすると、正常な胃と炎症を起こしている胃では、粘膜の色や表面に違いがみられます。
萎縮性胃炎の原因には、食生活や喫煙の関連もありますが、ピロリ菌の感染が一番多いといわれています。ピロリ菌は、正式名称を「ヘリコバクター・ピロリ」といい、胃の粘膜に付着するらせん状の細菌です。
萎縮性胃炎、胃潰瘍など胃の病気は、ピロリ菌による胃粘膜の損傷が主な原因と考えられています。ピロリ菌が発見に伴い、胃潰瘍や萎縮性胃炎の原因や治療法、胃がん発症のリスクなども明らかになりました。
ピロリ菌の感染経路は、はっきりとは解明されていません。しかし主な感染経路は、汚染した水や食糧からの感染と考えられています。衛生設備が整っていない時代や環境で育った世代での感染者が多く見られます。しかし、衛生設備が整っている近年の日本では生水を飲むことで感染することはなく、感染率も低下しています。
ほとんどの人が幼少期にピロリ菌に感染するといわれています。保護者などの「大人」が子供に食べ物を与える時には注意が必要です。
両親や祖父母など周囲の大人がピロリ菌に感染していると、乳幼児に感染させてしまうことがあります。
これは、ピロリ菌に感染した人の唾液に含まれるピロリ菌が、スプーンやコップなどを共有したり、口移しで食べさせたり、キスするなどの濃厚接触で感染することがあるためです。
また、熱いものを冷ますさために息を吹きかける行為もピロリ菌の感染の原因になりますので注意が必要です。
萎縮性胃炎を治療せず放置すると、次のような病気を引き起こすリスクがあります。
胃潰瘍とは、胃の中に分泌される胃酸が胃壁を傷つけ、痛みや出血を起こす病気です。原因には以下があります。
萎縮性胃炎の胃は、胃粘膜のバランスが崩れた状態のため、胃酸から胃壁を守ることができず、胃潰瘍を起こします。
ストレスを原因として胃潰瘍を発症する場合があります。ただし、ピロリ菌が存在している胃と存在していない胃とを比較すると、ピロリ菌が存在している胃の方が潰瘍をつくりやすいと考えられています。
タバコのニコチンは胃粘膜の血流を妨げて症状を悪化させる原因になるため、喫煙者はさらに注意が必要です。
長期間にわたって萎縮性胃炎を発症している状態が続くと、胃がん発症のリスクが高くなるといわれています。ピロリ菌に感染している人は、非感染者よりも胃がんの発症リスクが高くなることが分かっています。
ピロリ菌は胃粘膜にダメージを与える物質を多く産生するため胃がんの発症リスクになることが証明されています。近年ではピロリ菌感染の有無で胃がん発症リスクを判定する胃がん検診が行われることもあります。
萎縮性胃炎の人は、ピロリ菌の検査を行い、陽性の場合はピロリ菌除菌治療を行うのがおすすめです。ピロリ菌の除菌治療については、次の章で紹介します。
萎縮性胃炎は、軽い胃もたれ程度の症状か、ほとんど症状がでないこともあるため、自分で発症に気がつきにくい病気です。
一般的には定期的な検診を受けて発症の有無を確認することをすすめられています。萎縮性胃炎と診断されると、次のような治療を開始することになります。
治療では、数種類の内服薬が処方されます。
萎縮性胃炎の治療では、原因となっているピロリ菌を除去することが根本的な治療法とされています。3種類の抗生物質を一週間内服し、ピロリ菌を除去します。
除菌治療をしてから4週間以上経った後に、ピロリ菌の有無を再度確認します。除菌がされていない場合は二次除菌を行なうのが一般的な除菌方法です。
除菌成功後も定期的に検査を受け、胃の粘膜が正常に戻るまではフォローする必要があります。
内服治療やピロリ菌除菌だけでなく、胃にやさしい食事をとることが大切です。食物繊維が多い食材やかたい食べ物は、消化しにくいため胃に負担をかけてしまいます。
胃粘膜に悪影響を与える喫煙や飲酒も避けるようにしましょう。
ピロリ菌検査の結果で陰性が出たとしても、検査時にピロリ菌が弱まっていただけで実際には感染していることがあります。
また、ピロリ菌は萎縮性胃炎が悪化すると生育環境が悪くなって死滅することがあります。このときの胃粘膜の状態は極めて悪く、胃潰瘍や胃がんの発症リスクが非常に高いと考えられています。
ピロリ菌が陰性と判定された場合でも、定期的な内視鏡検査を受けて胃の不調を見逃さないようにしましょう。
萎縮性胃炎は、主にピロリ菌感染を原因とする胃の病気です。慢性的な炎症が続き、胃粘膜に萎縮が起こっています。放置すると胃潰瘍や胃がんなど深刻な病気を引き起こしますので、医師の指導のもの適切な治療を行い、定期検査で異変を見逃さないようにしてください。
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