記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/7 記事改定日: 2020/7/8
記事改定回数:4回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
血糖値が正常にも関わらず、尿の中に糖が検出される「腎性糖尿」という疾患があります。今回はこの腎性糖尿の発症の原因や遺伝との関係、糖尿病との違い、腎性糖尿が出ると治療が必要なのか解説していきます。血糖値に注意したい妊娠中の場合も併せて紹介します。
正常な血糖値であるにも関わらず、尿糖(尿の中の糖分・ブドウ糖)が出ている状態を腎性糖尿といい、若い年代に比較的多くみられます。腎性糖尿では、特に体調が悪くなったり、障害が出たりといった症状はありません。
腎性糖尿で出る尿糖は、糖尿病とは異なる尿糖となり、糖尿病とは区別されています。また、腎性糖尿になったからといって糖尿病になりやすいということでもありません。糖尿病になる確率は腎性糖尿でない人と同じです。
尿糖検査をし、尿に糖が出ているかを調べますが、これだけでは糖尿病と腎性糖尿との区別がはっきりと出ないため、血糖値の測定が必要です。食後2時間での血糖値が140mg/dL未満でHbA1cが正常値であれば腎性糖尿と判断することができます。
通常、糖尿病でなければ尿糖は出ません。健康な腎臓の場合、通常は血液からブドウ糖をろ過し、すべてのブドウ糖を再吸収します。しかし、腎性糖尿はブドウ糖を再吸収する力が弱いため、ブドウ糖が血液中に吸収されずに尿に排泄されてしまいます。そのため、血糖値は正常でも尿糖が検出されてしまうのです。
ブドウ糖の再吸収力が弱い場合、生まれつき腎性糖尿になりやすい体質や遺伝が関係しているとも考えられています。また、その他の原因としては、尿細管を障害する腎臓病が原因になっていることがまれにありますので、病院できちんと検査をしてもらいましょう。
腎性糖尿は糖尿病ではなく、また、体に何らかの症状や障害が出ることもありません。腎性糖尿によって健康を損なうこともないと考えられていますし、腎性糖尿だからといって糖尿病になる確率が高くなるわけでもありません。
このように、体への影響があまりないため、特に治療の必要性はありません。ただ、尿中に糖(尿糖)が検出される病気には、糖尿病や腎臓病などほかの病気があるので、一度は自己判断をせずに病院で相談、検査を受けましょう。
また、尿糖は食事や嗜好品、お菓子など糖分を非常に多く摂取した後に検査すると陽性になることがあります。検査の前日には、過度な糖分の摂取を控えておきましょう。
子供も学校で検尿をすることがありますが、上で述べたような原因によって尿糖が陽性になることもあります。
よく見られる原因は耐糖能に異常がないものの尿に糖分は排出される「腎性糖尿」です。しかし、腎性糖尿は健康に影響を及ぼすような病気ではないため治療の必要はなく、基本的には経過観察が行われます。
一方で、近年は子供の2型糖尿病も増えており、尿糖が陽性になることで発見されることもあり、遺伝的な腎臓の病気や腎炎などによって腎臓の機能が低下することで尿糖が陽性になることもあります。
尿糖が出たからといって過度の心配は必要ないでしょうが、再検査等は速やかに行いましょう。
妊娠中、最も注意しなくてはならない糖尿病は「妊娠糖尿病」です。妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見された糖尿病のことで、妊娠以前から糖尿病を発症していたケースとは別の疾患として考えられています。
妊娠糖尿病になると、下記のような状態を招く可能性があります。
妊婦側は妊娠高血圧症候群の発症リスクが上昇することで、早期胎盤剥離などの重篤なトラブルを引き起こしやすくなります。このため、妊娠糖尿病の場合には厳密な血糖管理が必要となり、食事療法やインスリン注射が行われます。
一方、腎性糖尿は尿糖が検出されるものの、血糖値の異常はみられない病気です。血糖値に異常がないため、妊娠中でも特に治療の必要はなく、もちろん胎児にも影響はありません。
腎性糖尿は体に障害を及ぼすなどの症状がないため、基本的に治療は不要です。ただし、腎性糖尿だと思っていても糖尿病、またその他の腎臓病の可能性も考えられるため、検査は大事ということを理解しておきましょう。
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