肝膿瘍の原因と治療法とは?予防するにはどうすればいいの?

2017/12/1 記事改定日: 2018/9/21
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

肝臓に膿瘍ができてしまう、「肝膿瘍」という病気をご存知でしょうか。海外旅行中の飲食が原因で、引き起こされることもある病気です。以降で詳しい症状や原因、治療法をご紹介していきます。

肝膿瘍とは!?

肝膿瘍とは、細菌や成虫等が肝臓の内部に入り込み、増殖する事で膿がたまった袋である膿瘍(のうよう)を作り出してしまう病気の総称です。膿のたまり具合が大きければ大きいほど、菌へ感染する可能性が高くなります。

肝膿瘍は大きく分けて細菌が原因で起こる化膿性とアメーバ性の2つに分ける事が出来、それぞれ発症理由が違うというのが特徴です。現在日本国内では肝膿瘍になる人の約90%以上が化膿性で、アメーバ性に比べて非常に高い割合になっています。そして化膿性の場合、肝臓内に膿瘍が複数出来てしまう割合が高いので注意が必要です。

肝膿瘍は何が原因で発症するの?

肝膿瘍の発症原因ですが、まず化膿性の場合は、胆管結石や悪性腫瘍などによって胆管が詰まってしまい、その結果腸管内に胆汁が留まり、細菌に感染し腸管炎を発症させ、その細菌が逆流して肝臓内にまで炎症が広がったことで発症することが多いです。また血液中に入り込んだ細菌が、肝臓へと流れ込んで繁殖する場合や、怪我による肝臓の損傷部位から感染して発症したり、中には肝臓がんやすい臓がんの治療による感染で発症する場合もあります。

一方アメーバ性の場合は、口の中から入った赤痢アメーバが腸管内に感染し、これが肝臓内にまで広がったことで発症します。赤痢アメーバは、主に海外旅行等で生水を飲んだことで感染する場合が多いです。

肝膿瘍になると、どんな症状が現れる?

肝膿瘍になると、まず化膿性の場合は食欲がなくなったり、全身に倦怠感が出たり、寒気や震えを感じたり、38~40度の高熱が出たりします。さらに腹痛や吐き気をもよおし嘔吐したり、体重が減ったり、黄疸の症状が出る場合もあります。こうした症状が約2週間から1ヶ月程度続きます。

一方、アメーバ性の場合はこれらの症状に加えて血性の下痢症状が出ます。アメーバ性の症状は特に下痢がひどく、その他の症状は化膿性に比べるとやや軽めなのが特徴です。

なお、肝膿瘍は症状が悪化すると、化膿性の場合は肝臓以外の臓器にも炎症を引き起こし、アメーバ性の場合は敗血症を引き起こしたりする恐れがあるので、早めの治療が必要です。

肝膿瘍の治療法は種類別で違うの?

肝膿瘍の治療では、基本的に投薬治療を行います。化膿性の場合は抗生物質、アメーバ性に対しては抗原虫薬を投与します。投薬期間は約1ヵ月から1ヶ月半です。なお、こうした薬を投与し続けてもいまいち病状が改善しない場合や膿瘍が沢山ある場合は、抗生物質の動脈注射を行う事もあります。

ドレナージ

それでも改善しない場合や膿瘍が大きい場合は、CTや超音波画像で膿瘍の位置を確認しながら、腹部に局所麻酔をし、カテーテルを注入してドレナージという体内にたまった余計な水分や血液を体外に排出する措置を行って膿を取り出していきます。ドレナージによる治療期間は2~3週間ほどです。ただし、基本的に治療は膿瘍がなくなるまで続けられるので、膿瘍がなくならない場合はさらに治療期間がのびる事もあります。

肝膿瘍の治療中の食事の注意点

肝膿瘍の治療中には、なるべく肝臓に負担をかけない食事を心がけることが必要です。
肝機能が低下すると、ブドウ糖をグリコーゲンに変換して蓄える能力も低下するため、エネルギー不足になることがあります。このため、筋肉中のタンパク質などがエネルギーとして変換されて筋肉の衰えにつながることもあります。
治療中はなるべく高たんぱく高エネルギーの食事を心がけるようにしましょう。
また、肝膿瘍は炎症であるため、免疫力を高めるようなバランスがよく規則正しい食生活を心がけることも大切です。
さらに、飲酒は肝臓に過剰な負担をかけることになるので、治療中は控えた方無難でしょう。

肝膿瘍は、どうやって予防すればいい?

肝膿瘍は化膿性のものとアメーバ性のものがあります。

化膿性のものは、胆道感染症や膵がんなどの肝臓に近い臓器の細菌感染や、大腸がんや虫垂炎などによる腹膜炎によって肝臓内に炎症が波及することによって引き起こされます。予防するには、持病に対する適切な治療を継続することと、体調の異変を感じたときは無理せず病院を受診して検査・治療を受けることです。

一方、アメーバ性は「赤痢アメーバ」に感染することによって肝膿瘍を発症するものです。赤痢アメーバは、主に汚染された飲食物によって感染します。検査の行き届いていない井戸水や有機野菜などが原因になることが多く、海外渡航時に生水を飲んで感染することも珍しくありません。

また、感染者の便中にも含まれるため、性行為で感染することもあります。予防するためには、安全性の分からない野菜や水は摂ることを控えたり、しっかり加熱する、性行為時前には入浴するなどの対策が必要となります。

おわりに:化膿性かアメーバ性かによって、症状・原因・治療法は異なる

肝膿瘍には化膿性のものとアメーバ性のものがあり、それぞれで発症原因や症状、治療法は異なります。肝膿瘍と診断された場合は、どちらのタイプか把握した上で、適切な治療を続けていくことが大切です。

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