心身症で漢方薬を使う目的とは?使うときの注意点はある?

2017/12/25 記事改定日: 2019/1/8
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

心身症の治療では、抗不安薬や抗うつ薬などの西洋医学の薬が使用されますが、まれに副作用に苦しんだり望んだ効果が現れないケースもあります。その場合は、病院によって漢方薬が処方される場合があります。
この記事では、漢方薬を使った心身症の治療について解説しています。

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心身症の薬物療法の目的

心身症とは、心が受けたダメージが、身体の不具合や疾病などとして表に出てくる症状をいいます。周囲の生活環境から影響を受けるストレスや緊張などの「社会的因子」と、その人自身がもともと持つ性格や体質といった「心理的因子」とが、お互いに密接に関連することで発症します。

代表的な症状としては、高血圧、不整脈、狭心症などの循環器系疾患、胃炎や嘔吐、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの消化器系疾患、気管支喘息、じんましん、片頭痛、耳鳴り、下痢、生理不順、円形脱毛症などがあります。

そして、心身症の治療は、身体の症状と心の症状の両方の改善を目指して進められます。

身体症状にはその症状にあわせた薬が処方され、心の症状も西洋医学的な薬物療法で大きく改善することもあるので、医師の判断のもと適した薬が処方されます。

心の症状の治療薬として使われるのは、抗不安薬や抗うつ薬、抗精神病薬、気分安定薬、睡眠薬などです。ストレスの原因が取り除かれる見込みがあれば、即効性のある向精神薬が選ばれます。

薬のデメリット

ただし、向精神薬には特有のリスクがあります。たとえば、抗不安薬には眠気が起こりやすい副作用がある他、飲み続けると効きにくくなったり、依存性が生じたりする可能性があります。
抗うつ薬のなかにも、不眠や胃腸障害などの副作用が起こるものがあります。これらの副作用が治療期間中に起こると、患者への負担が大きく、治療の妨げになってしまうおそれがあります。

心身症では、漢方薬はどんな目的で使われる?

上記で説明した薬のデメリットを避けるために、漢方薬が使われることがあります。

漢方薬は向精神薬と違い、「この症状に、これが効く」というピンポイントで狙い撃ちするような処方は行いません。
漢方薬は、身体と心を含む、その人全体の中で崩れてしまったバランスを取り戻し、ゆっくりと体質を整えていくことによって、人間本来が持つ自己回復力を引き出しながら治療していきます。

症状が改善されるまでに数週間から数か月ほどかかりますが、即効性がない代わりに、心身への負担が少ないというメリットがあります。

使われる漢方薬

心身症の治療で使用される漢方薬には以下のようなものがあります。

半夏厚朴湯
消化管症状を改善し、不安感や不眠を改善する効果があります。
柴胡加竜骨牡蛎湯
イライラ感や不安感、抑うつ、不眠などを改善する効果があります。
四逆散
ストレスが溜まることによる緊張感やイライラ感、自律神経失調による手足の冷えなどに効果があります。
加味逍遥散
更年期の女性に多い不安感や不定愁訴に対して効果があります。
抑肝散
感情の高ぶりや消化器症状に対して効果があります。
桃核承気湯
情緒不安定や衝動的行動、便秘に対して効果があり、主に女性に対して使用されます。

漢方薬を使うときの注意点

漢方薬の多くは市販されており、不快な症状が続く場合に気軽に服用することができます。しかし、漢方薬は副作用が少ないと思われがちですが、薬の飲み合わせによっては血圧が上昇したりするなど、望まない心身の変化が生じることがあります。
また、効果には個人差があり、効果が見られないにも関わらず漫然と服用を続けると肝機能障害など重篤な副作用を引き起こすことがあります。

心身症と思われる症状が長く続く場合は、自己判断で漢方薬の服用を続けず、精神科や心療内科を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。

おわりに:西洋医学の薬が効かないときは、漢方薬が役立つ可能性がある

心身症の薬物治療では、服用と作用の因果関係が科学的にハッキリしていて、即効性も期待できる西洋医学の抗不安剤や抗うつ剤などを処方するのが一般的です。しかし、副作用に悩まされて、かえって精神的に落ち込んでしまうこともありえます。

もし西洋医学の薬で効果が出なかった場合は、東洋医学での漢方薬を試してみてもいいでしょう。漢方薬は即効性はないもの、患者さんへの心身への負担が比較的少ないといわれています。
ただし、漢方薬に全く副作用がないわけではありません。服用の際は必ず医師に相談し、許可をもらってから服用するようにしましょう。

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