心臓弁膜症の手術で使われる人工弁の特徴とは?費用はどれくらいなの?

2018/2/7 記事改定日: 2018/11/20
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

心臓弁膜症を発症したとき、手術をして悪くなった弁を取り替えることが必要になります。この記事では、治療で使われる人工弁について、メリット・デメリット、費用についてを解説します。

心臓弁膜症の手術の目的

心臓弁膜症の症状はゆっくりと進行することが多いので、患者さん自身は悪化している自覚がないことがよくあります。そのため、なぜ手術が必要なのかと疑問に思うことがあるかもしれません。しかし、現時点では心臓弁膜症で悪くなった弁を薬で元通りにするのは不可能ですし、手術を受けた方が心機能の回復が良く、生活の質も向上します。

心臓弁膜症の手術には、弁の悪い部分を修復する弁形成術と、弁そのものを人工の弁に取り換える弁置換術があります。どちらの手術になるかは、どの弁に不具合が起きているかや、心臓弁膜症の病状によって異なります。

ただ、最近は僧房弁閉鎖不全症の場合だと弁形成術が可能かどうかを検討することが増えています。また、三尖弁や肺動脈弁の場合は、大半が弁形成術を行っています。
一方、大動脈弁の場合は弁形成術が難しくなるため、弁置換術を選択することが多いです。

しかし、実際に手術をして弁の状態を確認しないと判断が難しい場合もあります。

弁置換術で使われる人工弁にはどんな種類がある?

弁置換術は、悪くなった心臓の弁を取り除き、人工の弁に取り替える手術です。人工弁には、生体弁と機械弁があります。

生体弁はウシの心臓で作られたものや、ブタの心臓弁を人の心臓に合うように加工したものです。また、特殊な生体弁として、ホモグラフト(亡くなられた方の心臓弁を凍結処理したもの)を使うこともあります。

機械弁はパイロライトカーボンと呼ばれる炭素繊維でできたものや、チタンでできた金属製のものがあります。血液をスムーズに送り出したり、弁に血液がこびりつかないための工夫されています。近年では、弁葉が2枚になった傾斜型二葉弁というタイプが多く使われています。

機械弁と生体弁のメリットとデメリット

生体弁と人工弁には、それぞれ一長一短があります。
生体弁のメリットは、血栓の心配がほとんどないことです。そして、手術後の抗血栓療法も2カ月~3カ月ほどで済みます。しかし、10年ほどしか持たないというデメリットがあります。使い続けるうちに劣化や石灰化が進むため、再手術をして取り換える必要があるのです。

機械弁のメリットは50年ほどと、人工弁に比べて長持ちする点です。このため、場合によっては、一度の手術で済むこともあります。
しかし、機械弁には血栓ができやすいというデメリットがあります。そのため、生涯にわたって抗凝固薬を服用し続けなければなりません。また、弁の開閉時に音がするので、それが気になるという人もいます。

まずは、それぞれのメリットとデメリットについて主治医からしっかり話を聞き、相談してどちらの弁にするかを決めましょう。なお、妊娠を希望している方や仕事やスポーツで抗凝固剤の服用が難しい方、消化性潰瘍や肝機能障害、腎不全のある方、出血しやすい方や、高齢者の場合は、基本的に生体弁を選択します。

弁置換手術の費用って、だいたいどれくらいかかるの?

心臓の手術は多くの人手や人工心肺など特殊で高価な機器を使用するものが多いため、一般的に高額であることが多いです。
特に、弁置換術は手術からその後、十分に回復するまでの入院費を含めると、3割負担の人で自己負担額100~150万円が相場です。

非常に高額な医療費となりますので、事前に「限度額適用認定書」の発行を受けるようにしましょう。自身が加入する健康保険団体に申請することが発行してもらうことができます。
これは、医療費が高額になった場合には、ある一定限度額以上の医療費がかからず、助成されるという制度です。限度額は年齢や世帯所得によって異なりますが、最も多い自己負担額は70歳未満で3割負担の健康保険に加入しており、世帯年収が1160万円以上の人で一月当たり252600円+(総額医療費-842000円)×1%で計算できます。

事前に認定書を発行しておくと、退院時の窓口負担を限度額までに減らせますので、手術を受ける予定の人はぜひ活用して、医療費の負担を減らしましょう。

おわりに:術式については医師とよく相談し、限度額適用認定証などで費用の負担の軽減も検討しよう

心臓弁膜症の場合、手術で悪くなった弁を取り替えることが必要になります。人工弁には、ウシやブタの心臓を使った生体弁と、チタンや炭素繊維でできた機械弁があります。どちらの弁にも一長一短ありますので、医師の説明をよく聞いて選びましょう。

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