記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/1 記事改定日: 2019/7/31
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心不全などの重篤な症状を引き起こす恐れのある「心臓弁膜症」。実は、この心臓弁膜症はいくつかの種類に分けられます。今回の記事ではその種類と、種類別の治療法についてご紹介していきます。
心臓には血液の逆流を防ぐために4つの弁が存在します。心臓弁膜症はこの弁が炎症や外傷、一部先天性のものが原因となり血液の流れが妨げられ、心臓の活動に様々な支障をきたす病気です。
心臓弁膜症は、弁が不完全に閉鎖するため逆流を起こす「閉鎖不全症」と、弁が癒合し狭くなり、弁が開く時に血液の流れが妨げられる「狭窄症」の2つに分けられます。そして、どの弁に問題があるかによって「僧帽弁(そうぼうべん)狭窄症」「僧帽弁閉鎖不全症」「大動脈弁狭窄症」「大動脈弁閉鎖不全症」にさらに分けられます。
僧帽弁狭窄症の場合、左心房から左心室への血流が妨げられ、心不全の症状があらわれます。僧帽弁閉鎖不全症の場合、左心室の機能が次第に低下し息切れや呼吸困難が生じます。大動脈弁狭窄症の場合、狭心痛、失神、心不全の症状があらわれます。大動脈弁閉鎖不全症の場合、左心室の機能が低下するにつれ狭心痛や心不全の症状があらわれます。
心臓の4つの弁の中でも、特に重要で全身に影響を及ぼしているのが僧帽弁と大動脈弁です。この2つの弁の手術が、年間の心臓弁膜症治療の大多数を占めています。その中でも、特に発症率が高いのが「僧帽弁閉鎖不全症」と「大動脈弁狭窄症」です。
まず、僧帽弁閉鎖不全症における治療で最もよく行われるのが弁形成術です。僧帽弁閉鎖不全症では、僧帽弁を支えている腱索が切れ、僧帽弁がきっちり閉じなくなり、血液が逆流した状態になっていることがほとんどです。そのため、手術によって閉じなくなった弁を矯正し、正常な接合を回復させます。
他方、大動脈弁狭窄症における治療で最も多く行われているのが弁置換術です。大動脈弁狭窄症では、大動脈弁が動脈硬化によって変化し狭くなっています。これにより大動脈弁が十分に開かないことから全身への血流が低下した状態です。そこで弁置換術では、硬くなっている弁を切除して人工の弁と置き換え、弁の機能を回復させます。
弁形成術は、緩んだ部分を切り取ったり、弁を引っ張る腱索を人工的に作ったりすることによって、弁の形を整え修復して、弁がちゃんと閉じるようにする手術です。弁置換術よりも術後に血栓ができる危険性が低く、回復が早いというメリットがあります。特に、僧帽弁閉鎖不全症の場合、早い時期に弁形成術による手術を行えば、合併症も少なくなるというメリットがあります。
一方、弁置換術は、状態の悪い弁を切除し、人工弁を取りつける手術です。治療のために用いられる人工弁はカーボンでできた機械弁と動物の組織を用いた生体弁があります。
心臓弁膜症の治療においては弁形成術と弁置換術が代表的な治療方法です。ただし、治療の前に留意しておくべきことがあります。
まず、弁形成術は弁置換術とは異なり、自分自身の自己弁を残せる点がメリットです。自己弁を残すため、心臓の機能も比較的保つことができる一方で、その後自己弁が動脈硬化などを起こす可能性がある点に留意する必要があります。極端に血圧が高い場合、極稀に縫った糸が外れたり、切れたりする恐れがあることにも注意が必要です。さらに、弁形成術は治療が可能な弁に限りがあり、重症度によって弁形成そのものができない場合もあります。
一方、弁置換術では弁を人工的に作られた機械弁か動物の組織を用いた生体弁に取り替えます。生体弁は再手術を行う必要がありますが、機械弁の場合その必要はありません。生体弁ではなく機械弁にする場合、血液の凝固を防ぐための血液抗凝固剤を一生服用する必要がある点に留意する必要があります。
心臓弁膜症は、心臓弁の石灰化や変性などによって引き起こされるため、食事や運動習慣の改善だけでは治りません。しかし、不適切な生活習慣を続けることで高血圧や肥満などを引き起こすと心臓への負担が増加して、心臓弁膜症を悪化させる可能性も考えられます。
このため、心臓弁膜症の人は、心臓への負担を少しでも軽減するために適切な生活習慣を維持するように心がける必要があります。特に食生活の改善は非常に重要であり、適正カロリーを厳守し、和食や野菜中心で食物繊維やビタミン、ミネラル、良質なたんぱく質を多く摂り、過度な脂質や糖分の摂りすぎには注意が必要です。また、塩分は一日7g程度に抑え、アルコールも適量に抑えましょう。
心臓弁膜症はその種類ごとで適した治療法が異なります。一般的には弁形成術か弁置換術が実施されるケースが多いですが、それぞれメリット・デメリットがあります。弁膜症のタイプと体の状態に合わせ、適切な治療を選択することが大切です。
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