後縦靭帯骨化症の手術の種類とリスクとは?費用や期間はどれくらい?

2018/2/15 記事改定日: 2018/12/3
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

後縦靭帯骨化症とは、背骨の中にある後縦靭帯という組織が骨になってしまうことで感覚障害や運動障害といった神経障害が起こる病気です。この病気の治療法には、保存療法と手術療法がありますが、この記事では手術療法について解説します。

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後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)になると体にどんな変化が?

後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)とは、背骨の中を通っている後縦靭帯という組織が骨になってしまうことでさまざまな症状が起こる病気です。背骨を構成している組織のひとつである椎骨の中には脊柱管という管があり、その中に後縦靭帯が縦に走っています。その部位が骨になると、同じ場所にある神経を圧迫するようになって感覚障害や神経障害といった症状があらわれます。

この病気は遺伝が関係していることがわかっており、兄弟のどちらかが発症すると、もう一方も30%の確率で発症すると言われています。しかし、発症には遺伝だけが関係しているのではなく、他に性ホルモンの異常、代謝異常、糖尿病、肥満、老化現象なども複雑に絡み合っていると考えられています。

後縦靭帯骨化症の手術の方法にはどんなものがある?

後縦靭帯骨化症は自覚症状が全くない場合もありますが、症状が進行すると手術を行う必要が出てきます。

頸椎前方到達法

手術療法の中で代表的なものは、頸椎前方到達法と呼ばれるものです。これは頸椎の前方にある気管と食道を左側へ寄せて頸椎前面に達し、そこから脊髄の方へ進んで骨になっている部位を削り出します。神経の圧迫を取り除いてから骨を移植します。

頸椎後方到達法

頸椎後方到達法は、頭の付け根から首の付け根を切開し、後ろ側から病巣へ進みます。頸椎に中央で縦に切り込みを入れ、セラミック製の人工骨で固定する方法で、頸部脊柱管拡大術とも呼ばれます。術後に新しい骨が形成されて、しっかりと固定されるようになります。

手術は安全性は? 合併症を招くリスクはある?

後縦靭帯骨化症の手術療法では、手術用の顕微鏡を使って手術を行うので、手術用の顕微鏡を用いない方法に比べて安全性が高いといわれています。

しかしどのような手術でも、合併症が起こる可能性はあります。
後縦靭帯骨化症の手術では、病巣部まで進む際に食道や頸動脈を損傷したり、骨膜、脊髄、神経を傷つけてしまう可能性は否定できません。
また、術後に血腫ができて脊髄を圧迫してしまうと、四肢麻痺を起こすことがあります。
手術を行うと切開部に傷ができるので、そこから感染を起こしたり、手術をしても痛みやしびれが続くことも考えられます。

後縦靭帯骨化症の手術の目的と必要性

後縦靭帯骨化症の症状の進み具合には個人差があるため、今起こっている症状が今後どのような経過をとるかを予測するのは難しいです。

しかし、症状があらわれている場合には、今後悪化していく可能性があります。もし、症状が進んで脊髄自体が元に戻らなくなってしまうと、その段階で手術をしても十分な効果が期待できなくなります。これは神経症状の回復が不十分になるためで、こうした状態になってしまうとどんな治療もできなくなります。

症状が進むとしびれなどがでて生活に支障をきたし、両手を使った細かい動作ができなくなります。そうならないためにも、適切な時期に手術を受けることが大切です。

手術の費用や入院期間はどれくらいかかるの?

後縦靭帯骨化症の治療として手術をした場合、医療機関や入院期間によって異なりますが費用の相場は3割の自己負担で20万円前後です。しかし、術後に合併症を生じて入院期間が延長したり、別の治療が必要なケースでは費用も増えていきます。

いずれにせよ、後縦靭帯骨化症の手術を行う場合は、経済的な負担が生じます。後縦靭帯骨化症は難病に指定されており、重症度によっては医療費助成の対象となることがあります。少しでも経済的な負担を減らすよう、術前に主治医と医療費助成の申請を行うことができるか相談し、該当する場合は手術の前に申請しておくようにしましょう。

おわりに:後縦靭帯骨化症の手術には主に2種類。リスクや手術するかどうかも含め、医師と相談して決めよう

後縦靭帯骨化症の症状が進んだために手術を行う場合、頸椎前方到達法と頸椎後方到達法のどちらかで行われます。
適切な時期に手術を受けないと、手術をしても期待できる回復は見込めなくなったり、神経障害が残ってしまったりします。主治医とよく相談しながら、手術するかどうかや手術の時期などを決めてください。

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