記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/9 記事改定日: 2018/10/31
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
毎年冬場に流行するインフルエンザですが、インフルエンザは治療薬を飲まずに風邪薬で治すことはできるのでしょうか?風邪薬の使用に危険はないのでしょうか。
この記事では、インフルエンザと風邪薬の関係、治療薬による副作用の可能性や、治療薬を投与する重要性について解説していきます。
インフルエンザを発症している時には、自己判断で市販薬や余っている薬を服用するのは非常に危険です。
ロキソニンS®やバファリン、イブ®など一般的な風邪薬や鎮痛薬にはNSAIDs(非ステロイド系解熱鎮痛薬)と呼ばれるタイプのものがあります。これらのNSAIDsはインフルエンザにかかっている時に服用すると脳症を引き起こすことがあります。インフルエンザ脳症は致死率が高く、救命できたとしても運動麻痺などの神経障害を残すことも少なくありません。
インフルエンザと疑わしい症状があるときは、自己判断で市販薬などを服用せずに病院を受診して、適切な検査・治療を受けるようにしましょう。
抗インフルエンザ薬とは、体内に侵入したインフルエンザウイルスの増殖を抑える役割をしています。また、インフルエンザにかかっている人だけでなくインフルエンザの予防に対しても効果のあるお薬で、インフルエンザ罹患者と共同生活をしている人に対して処方されることもあります。抗インフルエンザ薬の予防投与はインフルエンザワクチンの接種よりも即効性があるといわれ、投与後すぐの効果が期待できます。しかし、10日前後でその効果は消失してしまいます。
抗インフルエンザ薬にはさまざまな種類のお薬がありますが、主に以下の3種類が処方されます。
A型、B型インフルエンザの両方に効果があり、唯一の内服タイプのお薬です。生後2週間からの服用が可能で妊婦でも内服することができます。
しかし、10歳以上20歳未満の方には、異常行動が過去に報告されてきたことから原則的に処方されません。重症例での治療経験が多いため、入院管理が必要とされる患者から外来での治療が相当とされる患者まで幅広い患者が適応となります。
1日2回(1回2吸入)を5日間吸入する必要のあるお薬で、A型、B型インフルエンザの両方に効果があります。
副作用が少ないものの確実に吸えないと効果が期待できないため、10代の子供へ処方されることが多いです。妊婦や授乳中でも使用が可能です。
A型、B型インフルエンザ両方に効果のある吸入薬で長時間効果があることが特徴です。そのため、1回吸入することで治療が終了します。半量吸い込むことができれば効果が十分期待することができ、タミフルの使用が控えられている人へ処方されることが多いお薬です。
この3つのお薬はノイラミニダーゼ阻害薬という種類になります。ノイラミニダーゼ阻害薬を服薬すると、体内は取り込まれたインフルエンザウイルスの感染を拡大しようと遺伝子情報を複製し、新しいインフルエンザウイルスを作り出します。新しく作られたインフルエンザウイルスはこのノイラミニダーゼの働きによって遊離し、細胞の外に出ます。この遊離を阻害するのが前述した3種類のお薬となります。
抗インフルエンザウイルス薬の服用後に急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、ウロウロするなどの異常行動が報告されています。また、これらの異常行動の末、転落等による死亡事例も2017年8月現在で8件の報告があります。
ただし、インフルエンザにかかった時は、医薬品を服用していなくても、同様の異常行動が現れることがあり、異常行動も抗インフルエンザウイルス薬の種類に関係なく現れることが報告されています。このことから抗インフルエンザウイルスと異常行動の因果関係は不明とされています。
異常行動による事故を防止するためには、医薬品の使用の有無にかかわらず、少なくとも2日間はインフルエンザに罹患した小児や未成年が1人とならないように、保護者の方が目を離さないようにするといった配慮を行うようにしましょう。また、高所で生活している場合は窓を施錠したりベランダの近くに寝かせない、戸建てで生活している場合にはなるべく1階に寝かせるようにしましょう。
抗インフルザウイルス薬は、インフルエンザウイルスの増殖を抑えることで効果を発揮します。身体の中に入ったインフルエンザウイルスは、増殖をしていき、症状が出てから2~3日後(48~72時間後)にウイルス数が最も多くなります。
そのためウイルスの数が最も多くなる前に抗インフルエンザ薬を使用して増殖を抑えることができれば、病気の期間を短くすることができ、症状の悪化も一緒に予防することが可能です。そのため、早めに抗インフルエンザ薬を投薬することが重要です。
しかし、48時間を経過してしまったら薬の効果が全くなくなるというわけではありません。48時間以降の内服に対する臨床実験を行っていないため、効果の有無についての研究が不十分となるため推奨できないのが理由となります。48時間を経過していてもその時の苦痛症状を和らげることが可能なことがあるので、一度医療機関を受診することをお勧めします。
インフルエンザは、一般的に3~4日の発熱と1週間ほどの諸症状が見られたのちに自然に回復します。しかし、誰しもが治療薬を飲まずに治せるというわけではなく、若くて健康な人に限られる傾向にあります。
また、インフルエンザウイルスが体内に長く潜伏していると周囲の人にうつしてしまったり免疫力や抵抗力の弱っている人では合併症の危険性もあります。そのため、インフルエンザかもしれないと思ったら必ず病院に行くようにしましょう。特に38度以上の高熱が出ているときは病院を受診することをお勧めします。
抗インフルエンザ薬は、飲み薬だけでなく吸入するタイプなどさまざまな種類があります。中には一度の服薬で効果が長期間続くものもあるため、自分にあったお薬を使用しましょう。
なお、お薬を使用したことによる異常行動が怖いと思う方もいるかもしれませんが、お薬と異常行動の因果関係は現在も不明とされ、異常行動は徹底的な監視で防ぐことも可能です。症状の緩和や周囲へ感染を広げないためにも、まずは病院を受診し、適切な治療を受けることをお勧めします。
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