記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2022/7/14
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
食中毒の症状といえば腹痛や下痢、吐き気ですが、実は頭痛が起こることもあります。今回は、食中毒で頭痛が起こる原因と対処法、原因微生物の種類別の特徴について解説します。
食中毒の主な症状は下痢や腹痛ですが、嘔吐や下痢を繰り返すことによる脱水が、頭痛を引き起こすことがあります。これは、体内の水分量が減ることで血液量も減少し、より多くの血流を維持しようと拡張された脳の血管が周りの神経を刺激することが主な原因です。
ただし、食中毒による頭痛のすべての原因が脱水というわけではありません。食中毒の原因微生物である細菌やウイルスが頭痛を引き起こすこともありますし、高熱が出るような食中毒でも頭痛が起こることがあります。
脱水による頭痛の症状の特徴は、一部分がズキズキと痛む「拍動性の痛み」です。また、めまいや立ちくらみなどの症状を伴うこともあります。一般的には、食中毒の症状が改善すれば頭痛も徐々に治まっていきますが、まれに食中毒の原因微生物が髄膜炎や敗血症を引き起こすことがあるので注意が必要です。
食中毒が原因で頭痛がするときは、すぐに水分を補給し、無理をせず休むことが大切です。下痢や嘔吐の際に電解質(塩分やカリウムなどのミネラル)も多量に失うので、スポーツドリンクなどのイオン飲料でミネラルも補給しましょう。もしものときのために、経口補水液を備えておくことをおすすめします。
脱水は、悪化すると命に関わることもあります。強い吐き気があって、口からうまく水分を摂れないときは、できるだけ早く病院を受診しましょう。意識がもうろうしている場合やぐったりして歩けない場合は、救急車の要請を検討してもかまいません。子どもや高齢者は、脱水のリスクが高く悪化しやすいので、特に注意が必要です。
市販の頭痛薬のなかには胃の粘膜にダメージを与えるものもあり、食中毒を起こしているときに頭痛薬を服用すると、胃腸の粘膜に炎症が悪化して嘔吐や下痢などの症状がひどくなる可能性があります。場合によっては頭痛が悪化することもありますので、安易に市販薬を飲むのではなく、まずは医療機関で診察を受けてましょう。市販薬を飲むときは必ず医師に相談し、許可をもらってから飲むようにしてください。
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食中毒の原因微生物になるウイルスや細菌には、主に下記のようなものがあります。
サルモネラ菌はほとんどの動物が保有している細菌のため、感染を完全に防ぐことは難しいです。肉類、魚類、卵などに含まれていますが、加熱処理の不十分な食肉を調理した調理器具から二次感染することもあります。
カンピロバクターもサルモネラと同様に、ほとんどの動物が保有しています。鶏肉、牛肉、羊肉に保有されていることが多く、特に鶏肉は保有率が高いです。鶏肉の生食は避け、加熱調理したものを食べましょう。
ボツリヌス菌は主に土壌や河川にいる細菌で、多くの肉類や野菜類に付着している可能性があります。また、無酸素状態で増殖して毒素を生成する働きもあるため、瓶詰め、缶詰、燻製などの保存食や自家製食品が汚染されることもあります。ボツリヌス菌は80℃で30分間(100℃の場合は数分以上)加熱すると不活性化するので、しっかり加熱をすることである程度予防できます。
牡蠣などの二枚貝が取り込んだノロウイルスは体内で蓄積されるため、表面だけを洗ってもノロウイルスは除去できません。ノロウイルスの感染源としては牡蠣が有名ですが、アサリやしじみなど他の二枚貝も感染源になります。ノロウイルスは加熱することで死滅しますが、加熱が十分でない場合は感染力を保ったままになるので注意が必要です。また、感染した人の手を介して食べ物に付着し、感染が広がることもあります。
乳・乳製品や食肉加工品(特に豚肉)などが主な保有食品です。低温(0~4℃以下)の状況下でも発育が可能なため、冷蔵庫内でも増殖する可能性があります。ただ加熱に対する抵抗性は高くないため、調理時には食材の中心部まで十分加熱することで予防しましょう。
ジャガイモの表皮や芽には天然毒素の一種であるソラニンやチャコニンが含まれており、頭痛以外にもさまざまな症状を引き起こすことがあります。芽の周辺部分や緑色になった皮はきちんと取り除いてから、調理することが大切です。
食中毒により嘔吐や下痢などの症状が生じると、脱水症状が起こり、頭痛が発生することがあります。また、原因微生物の毒性によって頭痛が引き起こされることもあります。頭痛が起きたときに市販の頭痛薬を飲むと逆に悪化する可能性があるので、必ず医師の指示をあおいでください。症状がひどい場合やいつまでも治らない場合、悪化している場合は、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
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