記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/14 記事改定日: 2018/9/28
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
PSA検査は、血液中のPSAの値を調べて前立腺がんがあるかどうかを確認する検査です。近年になって広く行われるようになった検査ですが、この検査で基準値を超えたものは全て前立腺がんなのでしょうか。
PSA値が変化するメカニズムも含めて、PSA検査の重要性について説明していきます。
「前立腺がん」は、50歳以上の男性に多くみられるがんで、日本では男性のがんの中でもっとも多く、死亡数は現在も増え続けているといわれています。
「PSA(prostate specific antigen=前立腺特異抗原)検査」は、前立腺がんの可能性を見つけるための簡易的な血液検査です。この検査によって、前立腺がんで命を落としたりがんが転移したりといったリスクが下がり、また早期発見につながることで治療の選択肢も増えることが期待できます。
PSAは主に前立腺から精液中に分泌されるタンパク質の一種で、精子が受精しやすくなる作用を持ちますが、タンパク質の分解酵素として前立腺の細胞の中で炎症を起こしたり、がん化を促進するような働きもあります。がんや炎症により前立腺組織が壊れると血液中に大量に漏れ出してPSA値が上がるという性質がスクリーニングとして利用されているのです。
PSA検査の値には基準値が設けられており、測定されたPSA値がそれ以上の場合には、前立腺がんの疑いがあるとして、より詳しい検査が行われます。
PSAの数値は血糖値などのように食事の影響を受けないので、検査を受ける前に食事を抜くなど食事制限をする必要はありません。
しかし、一般的にはPSA検査を受ける場合には、食事の影響を受けやすい他の検査も同時に行うことが多いでしょう。
そのような場合には、食事制限を守って検査を受けるようにしましょう。もちろん、検査前に絶食したからといってPSAの数値が変わることはありませんので安心してください。
PSAの基準値は、一般的には0~4ng/mLとされています。
4~10 ng/mLになるとグレーゾーンとよばれ、25~40%の割合でがんが発見され、10 ng/mL以上では50~80%でがんが発見されるといわれてます。さらに100ng/mLを超える場合には前立腺がんが強く疑われ、転移している可能性が高いと判断されることがあります。
ただし、4ng/mL以下でも前立腺がんが発見されたり、10 ng/mL以上の場合でも発見されない場合がないわけではありません。
また、基準値は年齢によって異なります。前立腺がんは50歳以上から患者数が増え、50~64歳では3.0 ng/mL以下、65~69歳では3.5ng/mL以下、70歳以上では4.0ng/mL以下が基準値とされています。
それぞれ1.0ng/mL以下なら3年に1度、1.1ng/mL~基準値なら1年に1度の検査が推奨されており、PSAが基準値以上の場合は専門医に受診し、がんの疑いがある場合には3カ月に1度の採血で状態を把握していくことがあります。なお、父親や兄弟、息子に前立腺がん患者がいるのであれば40歳からの定期検診がすすめられています。
PSA値が高ければ高いほど、前立腺がんである確率も高くなりますが、数値そのものは「前立腺肥大症」や「前立腺炎」でも高くなることがありますし、おしっこが出にくい、前立腺が大きく尿が出きらない人も数値が高めに出る傾向にあります。
したがって、PSA値が基準を超えても必ずしも前立腺がんとは限りません。
ただし、数値が高い場合には専門医を受診して前立腺がんであるかを確定するための精密検査を受ける必要があります。PSAの数値が基準値以上であってもがんは見つからず、不必要な検査で過剰診断・治療を受けることになるリスクもないわけではありませんが、逆に治療が必要ながんであるにも関わらずPSA検査では発見できない場合もあります。
疑いがある場合には定期的にPSA検査を行って経過を観察するようにし、医師と相談し必要に応じて直腸内触診を受けるようにしましょう。
人間ドックなどの健康診断でPSA検査を受ける場合は、健康保険は適応されませんので自費になります。費用は医療機関によって異なりますが、2000~3000円程度が相場とされています。また、お住まいの自治体によっては前立腺がん検診として補助が出ることもありますので、広報やホームページなどで検診の情報を確認してみましょう。
しかし、排尿障害などの症状がある場合や医師の診察の結果前立腺がんが疑われるような場合にPSA検査を行う場合には、治療のための検査の一つとして保険適応になることもあります。詳しくは受診した医療機関に問い合わせて下さい。
PSA検査は、前立腺がんを早期発見するための、簡単で有用な検査です。定期的に検査をし、結果が基準値を超えるようなら、早期発見でがんの転移や死亡のリスクを減らすためにも、必ず専門医を受診するようにしましょう。
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