肝硬変の代償期の食事で気をつけることと、おすすめのメニューとは?

2018/6/17 記事改定日: 2018/11/21
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

肝硬変には、肝機能がある程度保たれている「代償期」と、肝機能が低下し始める「非代償期」があります。
代償期の間は障害を受けていない肝細胞が機能しているため、ほとんど自覚症状は現れませんが、食事で気をつけなくてはいけない点もあるのでしょうか?以降で解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

代償期の肝硬変でも、食事に注意が必要?

代償期のうちは重篤な症状は見られないため、基本的には厳しい食事制限は必要ありません。ただ、この間も肝臓へのダメージは蓄積され続けているため、バランスの良い食事を心がけ、肝臓の負担となるものの摂取は避けるなど、非代償期に移行しないための努力は必要になります。

代償期の肝硬変、食事での注意点は?

代償期の肝硬変では、以下のポイントに注意しながら食事を摂りましょう。

カロリーを過不足なくとる

肝臓はエネルギー源となるブドウ糖をグリコーゲンとして蓄える機能を担っていますが、肝硬変によって肝機能が低下するとその機能が衰え、体内ではエネルギー不足に陥ります。

そのため、炭水化物などで糖分を補給し、しっかりカロリーを摂取することが大切です。1日あたりの必要エネルギーは、「25〜30kcal/kg(標準体重※)/日」で求められます。なお、脂肪肝の予防のため、カロリーの過剰摂取には注意が必要です。

(※標準体重(kg)=身長(m)の二乗×22)

たんぱく質を適量とる

肝臓はたんぱく質を合成する役割を担っていますが、肝硬変になるとその機能が低下します。また、肝硬変によってブドウ糖の蓄積機能が低下し、エネルギー不足に陥ると、体内では代わりに筋肉を分解してエネルギーを生成するために筋力低下に陥りやすくなるので、たんぱく質の摂取が重要になります。

ただし、高たんぱく食は弱っている肝臓に負担をかけるので、適量での摂取がポイントです。1日あたりの必要たんぱく質の量は、「1.0〜1.5g/kg(標準体重)/日」の計算式から割り出すようにしてください。
また、肉類ばかり食べるのではなく、豆類や魚類、野菜などから良質のたんぱく質を摂取するように努めることも大切です。

ビタミン・ミネラル・食物繊維を十分とる

肝機能が低下するとビタミンの代謝も悪化するため、野菜などから積極的に摂取するようにしましょう。

また、肝硬変の人は食物繊維を摂取して便秘予防をすることも重要です。肝臓はアンモニアなどの毒素を解毒・分解する役割を担っていますが、肝硬変によって肝機能が低下すると体内でアンモニアの濃度が上がりやすくなります。その上で便秘がちだと、アンモニアを発生させる腸内細菌が増え、さらにアンモニアが増えやすくなってしまいます。
しかし食物繊維を摂取すれば、腸内細菌が良い方向へと変化し、腸内からのアンモニアの吸収が抑制されるようになります。食物繊維は豆類や根菜類などに豊富に含まれているので、積極的に摂取しましょう。海藻やキノコ類も、食物繊維とミネラルを多く含んでいるのでおすすめです。

塩分の過剰摂取に注意する

肝硬変が進行すると味覚が鈍くなり、塩分をとり過ぎることでカロリーの過剰摂取につながったり、腹水やむくみなどの症状を招いたりする恐れがあります。特に、外食やコンビニ弁当などの加工食品には注意が必要です。

食事は自炊を心がけ、食酢やレモンなどの酸味を上手に使ったり、出汁の旨みをうまく利用したりして、減塩の工夫をしましょう。

鉄分は控えめにする

「肝臓にはしじみが良い」という話を聞いたことがあるかと思いますが、貝類などの鉄分を多く含む食品は、過剰摂取すると肝機能に悪影響を与える恐れがあります。貧血にならない程度に、適量に摂取することが大切です。

肝硬変の代償期のおすすめレシピ

肝硬変の代償期には、十分なカロリーを確保して、タンパク質や塩分を必要以上に摂りすぎないことが大切です。
肝臓への負担を極力抑え、非代償期への移行を予防するためにも食生活には十分注意しましょう。ここでは、肝硬変代償期におすすめのレシピを3つご紹介します。

豚肉の焼うどん

豚肉は良質なたんぱく質を含みますが、ビタミンを多く含み、量をしっかり調節すれば肝硬変の人でも安心して食べることができます。うどんはのど越しもよく、消化も早いのでおすすめです。がっつり食べたいときにおすすめですよ。

豚肉はひれなど脂質の少ない部位を使用し、なるべく薄くスライスします。フライパンで、キャベツやもやしなどお好みの野菜を適当にカットしたものをよく炒め、豚肉を加えます。十分に火が通ってしんなりしてきたら、うどんを入れて少量のだし汁を加え、蒸し焼きにしたら完成です。

茄子のガーリック炒め

タンパク質を極力抑えたい場合は、野菜をメインにしたメニューを取り入れてみましょう。
なすは適当な大きさに輪切りし、フライパンでよく炒めて適量の水を投入し、柔らかくなるまで蒸し焼きにします。

十分に柔らかくなったら、塩コショウで味付けし、青じそのみじん切りをトッピングすれば完成です。
なすはしっかり味が染み込むため、少量の調味料で味付けすることができ、塩分を控えたいときにもおすすめの食材です。

はちみつヨーグルトゼリー

食事制限中でも甘いデザートは食べたいものですよね。なるべく糖質を押さえ、肝臓の負担を少なくするには、ヨーグルトを使ったメニューがおすすめです。

ゼラチンは、分量通りの水でふやかしておきます。無糖ヨーグルトにはちみつやハーブなどでお好みの甘さに調整し、少量の牛乳を加えて混ぜ合わせます。ここに、ふやかしたゼラチンを投入し、冷蔵庫で冷やして固めれば完成です。

おわりに:栄養バランスのとれた食事で、肝硬変の悪化を抑制しよう

代償期の肝硬変はまだ重篤な症状が出ているわけではないので、そこまでの食事制限は必要ありません。ただ、病状を進行させないためには、栄養バランスのとれた食事を続けていくことが大切です。外食やコンビニ弁当などの摂取が多い人は、一度食生活を見直すことをおすすめします。

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