不妊治療で自己注射を選ぶメリットは?自分でしても効果は同じ?

2018/9/16

前田 裕斗 先生

記事監修医師

国立成育医療研究センター フェロー

前田 裕斗 先生

不妊治療をしているとき、何らかの原因で卵が育ちにくい場合や、たくさん卵を採卵するために注射を打って卵を育てることがあります。この注射は通院で打つことも、自宅で打つこともできます。
しかし、自己注射で本当に効果があるのか、その他どんなメリットがあるのか、疑問に思ってしまう人も多いでしょう。そこで、自己注射をすることのメリットや、自己注射の効果について解説します。

不妊治療で自己注射するメリットは?

不妊治療の注射を自己注射にすると、通院に関わる負担を減らすことができます。

  • 通院の回数を減らすことができる
  • 生活パターンに合わせて打つことができる
  • 自己注射の方が痛みが少ない

なぜ、自己注射で負担を減らすことができるのでしょうか?それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。

通院の回数を減らすことができる

不妊治療をするときには、より多くの卵子を育てるために排卵誘発剤を使います。注射による排卵誘発では、病院で打つと10日間ほど連続で通院する必要があります。

これを自己注射に切り替えると、病院に来る必要があるのは注射をもらう、卵胞の育ち具合をチェックするなど、最低限の日数に限られます。注射だけのために来院する必要がなくなりますので、通院日数は3日程度で済みます

通院にかかる移動時間や、外来での待ち時間を減らすことができます。

生活パターンに合わせて打つことができる

自己注射であれば、打つ時間を病院の開院時間に合わせる必要はありません。毎日ほぼ同じ時間に打つことができれば、一日のうちでいつ打っても効果に変わりはないのです。起きた直後、寝る前など、自分が必ず注射を打てる環境にいられる時間帯に設定するのが良いでしょう。

仕事や家事が忙しく、連続通院が難しい人でも、この方法なら毎日打ち続けることができます。通院に合わせて仕事や家庭のスケジュールを変更する必要が大きく減るため、変更に伴う精神的ストレスの軽減にもなります。

自己注射の方が痛みが少ない

自己注射では、腹部や太ももなど脂肪の多い部位を選んで皮下注射するため、痛みが少なく済みます。また、ペンタイプの自己注射を使えば、5mmと非常に短く細い針を使用しますので、痛みを感じない人がほとんどです。

自己注射するのはどんなとき?

不妊治療で注射が必要なのは、卵を育てるときと、排卵させるためのスイッチを入れるときです。このうち、自己注射にできるのは卵を育てるとき、すなわち排卵誘発の注射です。

排卵誘発には、経口薬と注射の2種類があります。

種類 薬剤名 特徴
経口薬 クロミッド

フェマーラ

セキソビット

など

  • 注射に伴う手間や費用の負担がない
  • OHSSの危険性がほとんどない
  • 注射と比較すると効果が弱い
  • 副作用で頭痛や吐き気が起こることがある
注射薬 フォリスチム

ゴナールエフ

など

  • 経口薬と比較して効果が強い
  • 使用量によって効果を調整することが容易
  • 通院または自己注射の手間と費用がかかる
  • 副作用としてOHSSの症状が出ることがある

経口薬は、注射と比較すると効果は弱く、一度にたくさんの採卵をしたい人には向きません。しかし、内服薬であるため通院や注射の手間はほとんどかかりません。費用面でも、注射と比べるとかなり安くすみます。

一方、注射薬は一部の人にOHSSの危険性があり、自己・通院注射のいずれの場合でもある程度の手間が必要となります。しかし、経口薬に比べて効果が強く、また容量を変えて効果の強さの調整をすることも手軽なため、一度にたくさんの採卵をしたい人や、経口薬では効果が出なかった人でも効果が得られる可能性が高いです。

排卵誘発剤を自己注射にしても、効果は変わらないの?

排卵誘発剤を自己注射にしても、正しく注射することができていれば、効果は変わりません。

自己注射は、誰でも打てる?

自己注射は、誰でも打つことができます。自己注射を希望する人は、必ず打ち方の指導をしてもらえますので、その際に気になることはどんどん質問しましょう。また、ペンタイプの注入器であれば、より簡単に自己注射を行うことができます。

自己注射で気をつけるのは、主に以下のような点です。

  • 毎日ほぼ同じ時間帯に打つ
  • 薬の保管方法に気をつける
  • 他に服用している・する薬剤があれば相談する

毎日ほぼ同じ時間帯に打つのは、薬剤の半減期が約1日程度であることによります。毎日打つことで、血中ホルモン濃度を一定に保ち、卵胞を効果的に育てます

薬の保管方法は、薬剤によって異なります。冷蔵保存、常温保存などは、薬の変質を防ぐために必ず守りましょう。また、打ち忘れ・液漏れなどで、決められた量打てなかったときは必ずクリニックに連絡しましょう。

自己注射をする場合、費用はどのくらいかかるの?

自己注射をする場合、薬剤代の他に指導料がかかります。費用はだいたい1回につき1,000円前後ですが、初回はより丁寧な指導が必要なため、3,000円としているところもあります。また、集団での講習会を開き、初期指導料を安くしている病院もあります。

ペン型注射器の薬剤代は、1本5,000円〜60,000程度です。これは内容量の違いによるもので、1回あたりの量に換算するとおよそ3,000円〜5,000円となります。この他、消毒用のコットンや持ち帰り用の容器代が数百円かかります。

合計すると、1回あたりの自己注射にかかる費用は以下のようになります。

指導料…1,000円/回
薬剤代…約5,000円
消毒用コットン・専用容器代…数百円

合計…約4,000円〜6,000円

通院で注射をする場合、注射のみの来院は、1回あたり約3,000円程度となっています。通院注射に比べると、自己注射の方がやや高額となっています。

おわりに:自己注射は正しく行えばメリットが多い!

自己注射は、正しく行えば通院注射と全く変わらない効果を得ることができます。また、通院に伴う手間や交通費、スケジュールの調整などの負担も減ります。
薬剤や打つ時間の自己管理が必要なこと、費用がやや割高になることはデメリットですが、忙しくスケジュール調整が難しい人や、病院までが遠く連続で通いにくい人には特におすすめの排卵誘発法です。

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