不妊治療のステップはいくつある?次のステップに移るタイミングは?

2018/8/28

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

不妊治療をしよう、と思っている人の中には、いったい何をどこから始めるのだろう?と不安を感じている人も少なくないのではないでしょうか。
不妊治療は、体や費用面の負担が少ないものからスタートし、徐々に高度なものへとステップアップしていく「ステップアップ法」が一般的です。この記事では、ステップアップの段階や、その時期について、順にわかりやすく解説していきます。

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不妊治療の3つのステップとは?

不妊治療のステップには、大きく分けて3つのステップがあります。

タイミング法
排卵の時期を予測し、その前後で夫婦生活を行う方法。
人工授精
排卵の時期を予測し、その2日前〜当日に洗浄濃縮した精子を体内に戻す方法。
体外受精
夫婦両名から採取した卵子と精子を培養液内で受精させ、ある程度育ててから胚移植で体内に戻す方法。

それでは、それぞれのステップについて大まかに見ていきましょう。

タイミング法とは?

タイミング法は、不妊治療の中でも最も簡易な治療法です。そのため、不妊の原因が不明の人や、初めて不妊治療をするという人に対してまず初めに選択される治療法です。初めての人には、まずタイミング法を行いながら各種の不妊検査をする場合もあります。

具体的には、基礎体温をつけながら、超音波による画像検査で卵巣の様子をチェックし、排卵日を予測します。排卵が起こる直前には、LHサージというホルモンの急激な上昇が見られます。これを利用し、尿中のLH量を検査してサージが起こったかどうか調べることもあります。こうして予測された排卵日の前後で夫婦生活を持ち、自然妊娠を待ちます。

また、何度か試しても妊娠しない場合、月経不順の方の場合など、排卵誘発剤を用いてタイミングを取る方法もあります。精子は射精後数日〜1週間、卵子は排卵後約24時間しか生存できません。そのため、両者の出会うタイミングを合わせるだけで、妊娠できることも多いのです。

人工授精とは?

人工授精は、排卵日を予測するところまではタイミング法と同じです。排卵日の約2日前〜当日に、男性に精子を採取し、病院内で洗浄・濃縮して女性の体内に注入します。AIH・IUIなどとも呼ばれます。

精子を洗浄・濃縮することで、どうしても精子の総数はある程度減少してしまいます。そのため、あまりにも精子の数が少ないなど、男性側に不妊原因がある場合は実施できないこともあります。

体外受精とは?

体外受精には、2種類の方法があります。精子の数が非常に少ないなどの男性不妊が原因でない限り、IVFから行うのが一般的です。

IVF(体外受精)
培養液内に洗浄・調整した卵子と精子を一緒に入れておき、受精そのものは自然に任せる方法。
コンベンショナルIVF・標準体外受精などとも呼ばれる。
ICSI(顕微授精)
顕微鏡下でごく細い針を使い、形態の良い精子を1つ選んで卵子の中に注入し、受精させる方法。
乏精子症など、精子に原因がある場合はIVFを飛ばしてICSIを行う場合もある。

どちらの方法も、内服薬や注射などで卵を育て、採卵と採精を行って体外で受精させるという点では同じです。そのため、採卵の前に何度か通院して、投薬や卵胞の大きさをチェックする必要があります。

ステップアップの時期は年齢によっても変わる

年齢によって、ステップアップの早さが変わることもあります。例えば、女性の年齢が35歳を超えている夫婦だと、妊娠率が下がるためタイミングや人工授精は早めに切り上げ、IVFやICSIといった体外受精に早くステップアップすることもあります

また、身体年齢とは別に、卵巣の排卵機能の度合いを示すAMHというホルモンを測り、この値が年齢相応のものよりも圧倒的に低ければ、初めから体外受精を選択することもあります。AMHの値が低いと、卵巣機能が衰えているため排卵誘発剤を使ったとしても育つ卵が少なくなります。ですから、受精したかどうかがわからないタイミング法や人工授精よりも、体外受精を行って受精の確率を上げる方が効率が良いのです。

タイミング法から次のステップへ移る時期は?

タイミング法は受精のほとんどの部分を自然に任せるため、すぐに妊娠できる人もいれば、1年以上続けても妊娠できない人も珍しくありません。年齢などの個人差はありますが、一般的には3〜6周期(約3〜6ヶ月)の間、タイミング法を行っても妊娠しない場合は人工授精へのステップアップを勧めるクリニックが多いです。

また、タイミング法を行いながら各種の不妊検査をしている場合、それらの検査結果によって明らかな不妊原因が見つかれば、3回と待たずに早めのステップアップとなる場合もあります。特に、精子が少ない男性不妊が発見された場合、人工授精も飛ばして体外受精が適用となる場合もあります。

不妊治療で「人工授精」から「体外受精」にステップアップする時期は?

人工授精も、タイミング法と同様、最大6周期(約6ヶ月)程度が目安とされています。これは、人工授精を行った人で妊娠した人の90%が6回目までに妊娠しており、それ以上続けても妊娠率が上がらないためです。

残り10%の人は、人工授精では妊娠不可能な何らかの原因があると考えられます。この人たちは、早めに人工授精を切り上げて体外受精に切り替えることで妊娠の可能性を上げ、より早く妊娠することができると考えられるのです。

場合によっては治療をステップダウンすることも

女性の年齢によっては、体外受精までステップアップした後に一旦体外受精を休止し、タイミング法やAIHなどへ治療をステップダウンする方法が取られることもあります

ステップダウンするメリットとは?

医学が発展した現在でも、複数の体外受精・胚移植でなかなか妊娠が成立しないケースがあります。特に40歳を超えるような高齢女性などでよくみられます。その場合、人工授精や排卵誘発剤を併用したタイミング法にステップダウンすることで妊娠したというケースが複数報告されています。

この原因ははっきりとはわかっていません。体外受精をずっと続けることは金銭的にも精神的にも大きな負担がかかるため、こうした負担からくるストレスから解放されることで体の状態が整うことなどが示唆されています。

女性の年齢が35歳未満かつ明らかな不妊原因がない場合、タイミング法から順番に始めるステップアップ法が一般的です。しかし、女性の年齢が35歳以上である場合や、明らかな不妊原因がある場合は、最初から体外受精を行い、妊娠・出産に至らない場合の気分転換として治療のステップダウンを行うこともあります。

体外受精では助成金を申請できる!

また、体外受精から始めることで、保険適用にならず高額になりがちな体外受精の費用の一部を助成金として国や自治体に補助を申請できるというメリットもあります。不妊治療1回につき15万円が支給され、最大45〜90万円の助成金が受け取れます。

ステップアップ法は長ければタイミング法6回、人工授精6回と1年程度かかる場合もあります。金額にして50万円ほどかかり、これは体外受精を1回行える金額です。ところが、体外受精であれば助成金が申請できるため、この場合であれば初めから体外受精を行っていた方が費用を安く抑えられていたことになります。

このように、場合によってはステップアップ法よりも初めから体外受精を行った方が最終的な費用を安く抑えられる場合があります。また、体外受精もタイミング法や人工授精同様、子宮や卵子も若い方が早く妊娠できる確率が上がるため、結果的に少ない治療回数で済むことも多いのです。

助成金の金額は国からのものと、各自治体オリジナルのものがあります。詳細はお住まいの自治体のホームページなどで調べてみましょう。

おわりに:ステップアップの目安は約6ヶ月

不妊治療のステップアップは、タイミング法・人工授精ともに約6ヶ月が目安です。また、女性の年齢が高い場合は、初めから体外受精を選択することで、妊娠の可能性を上げることができます。

ステップアップ法の場合も、最初から体外受精を行いのちにステップダウンする場合も、「妊娠」というゴールに早く辿り着くための方法なのは同じです。不安なことはすぐに相談し、納得して治療に臨みましょう。

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