不妊治療の費用に助成金は使える?不安は初診の前に解消しておこう!

2017/4/4 記事改定日: 2018/7/25
記事改定回数:2回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

晩婚化の影響からか、不妊に悩む夫婦は増加傾向にあるといわれています。
その中には、不妊治療を検討する人もいるでしょうが、費用の面や検査内容・治療内容などがわからず不安に思っている人もいるのではないでしょうか。
この記事では、不妊治療を検討している人達のために、不妊治療の費用や検査・治療について解説していきます。不妊治療を受けるかどうかの判断材料に役立ててください。

 不妊治療の費用はどのくらい?捻出するにはどうしたらいいの?

不妊治療の大部分は自費診療となるため、健康保険が適応されません。そのため、不妊治療は一般的に高い費用が掛かるといわれています。
費用は、どのような治療をするのかによって異なり、医療機関での差もあるので、一概にいくらかかると言い切ることは難しいです。一般的には、人口授精が一回10~15万円、体外受精が一回50万円程度が相場といわれています。

しかし、不妊治療に至るまでの様々な検査にも費用がかかり、治療自体が一回で終わるとは限らないため、多くのカップルは不妊治療に100万円以上を費やしている現状にあります。
不妊治療は高額ですが、多くのカップルが治療を受ける機会を得るために、自治体によって様々な助成金制度があります。高額な治療費のために、泣く泣く不妊治療を諦めているカップルは、助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

 助成金でどのくらいもらえる?

助成金は、体外受精と顕微授精を行ったときにもらえる場合があります。

厚生労働省の基準では、これらの治療を行った場合、初回は30万円、それ以降は一回の治療につき15万円までが6回分助成されます。しかし、助成金の交付には年齢制限と所得制限があり、妻の年齢が43歳以上である場合は通算3回までしか助成されません。
また、夫婦の所得が730万円以上の場合は助成金が交付されないとされています。

しかし、これらの基準はそれぞれの自治体によって異なります。助成金を希望される場合には住民票がある市区町村役場に問い合わせてみましょう。

体外受精と顕微授精とは

精子の数や運動率が極端に悪い場合や、高度な卵管閉塞などがあって自然妊娠やタイミング療法、人工授精(精液を子宮内に人工的に注入して、妊娠の成立を期待する治療)などを行っても妊娠を望むことが極めて難しいと考えられるケースや、これらの治療を行っても妊娠に至らない場合には体外受精や顕微授精が行われます。
体外受精とは人工的に採取した卵子を培養液に浸し、その中に精子を混入することで受精を促す治療法です。無事に受精が成立した場合、5日ほどの培養を行い、受精卵が十分に成熟した状態で子宮内に移植を行います。
一方、顕微授精とは、卵子にガラス針を用いて人工的に精子を注入することで授精を行う治療法です。授精が行われた後には体外受精の時と同様に受精卵を培養し、適切な時期に子宮内に移植する処置が行われます。顕微授精は、精子の数が極めて少なかったり、運動率が悪い場合に培養液内で自然な受精を行うのが困難であると考えられる場合に行われます。

 医療費控除の対象になる?

不妊治療は医療費控除の対象となります。
医療費控除とは、一年間にかかった医療費が一世帯で10万円を越えた場合、10万円を越えた額を所得から控除できるという制度です。控除されるためには確定申告を行う必要があります。手間もありますが、高額な不妊治療はぜひ医療費控除を申請して還付金を受け取ってください。

不妊治療の初診の内容 ― どんな検査をするの?

通常、ホルモンレベルと遺伝学的な性質を確認するための血液検査が行われます。

女性の検査

主に、以下のような検査が行われます。

  • 内診、経腟超音波検査
  • 子宮卵管造影検査
  • ホルモン検査
  • 性交後試験

男性の検査

マスターベーションで採取した精液検査で、精子の数や運動率などを調べます。精液検査は、産婦人科や泌尿器科で検査できます。異常がある場合には精索静脈瘤などの病気がないかどうか、泌尿器科で検査をします。

不妊治療を受ける前に、治療内容と注意点について知っておこう!

女性の治療

「排卵誘発法」:これは内服薬や注射で卵子を増やして排卵を促す方法です。
「子宮内受精」:非外科的治療の1つです。これは、排卵時期に女性の子宮に健康な精子を注入する方法です。体外受精より安価ではありますが、卵子を取り出し精子と受精させ、その受精卵を子宮に戻す必要があるため、排卵誘発法よりも複雑な治療法です。

上記は、どちらも確実に妊娠につながるとはいえません。

男性の治療

男性は生活習慣の変化で好転することがあり、特定の医薬品で精子数を増加させることもできます。射精することができない場合や精索静脈瘤やに罹患している男性は、外科処置によって精子を得ることもできます。
原因がわからない場合は、生殖補助医療(体外受精、顕微授精)を採用する方法もありますが、どの治療をするにも医師による十分な説明を受けることが必要です。

タイミング療法で自然妊娠を目指すことも

排卵や精液に大きな問題がない場合は、まず初めにタイミング療法が行われます。タイミング療法とは、基礎体温やエコーによる卵巣の観察によって排卵日の予測を立て、性交のタイミングを指導する治療方法です。
実は不妊に悩んで病院を受診し、タイミング療法を数か月続けるだけで妊娠したというケースは稀ではありません。

何をきっかけに受診を考えればいい?

妊娠を妨げる特定の要因はいくつかありますが、その要因にあてはまるからといって必ずしも不妊症になるとは限りません。
しかし、不妊が続いて思い悩んでしまったり、以下の要因のいずれかにあてはまる場合は、一度不妊症の検査を受けてみることをおすすめします。

女性の場合

女性の不妊症には、排卵が関係している場合が多くあります。
毎月規則的に排卵していない方は、妊娠が困難になりやすいでしょう。

また、それ以外の要因として、以下のものが挙げられます。

  • 痛みを伴う月経または不規則な月経がある
  • 年齢が35歳以上
  • 子宮内膜症または骨盤内炎症性疾患にかかっている
  • がん治療を行っている など

男性の場合

男性不妊症の原因の最も一般的なものは、精索静脈瘤です。 精索静脈瘤は、陰嚢が肥大化した静脈で、片側または両側に形成されます。 静脈は陰嚢の内側の温度を高め、同じ側にある精巣の精子産生を減少させるおそれがあります。

その他、男性の不妊症の原因には以下のものがあります。

  • 男性の生殖器系の閉塞
  • 特定の薬の影響
  • 低精子数
  • 精子が異常な形をしていたり、正常に動いていない
  • 停留精巣
  • 感染症にかかっている
  • 根本的な医療上の問題を抱えている
  • がん治療を行っている など

おわりに:不妊治療の不安をひとつずつ解説し、自分たちに合った方法で妊娠を目指していこう

不妊の原因はさまざまであり、排卵や精液に問題がなくても不妊になってしまうことも少なくありません。不妊治療では、不妊の原因を特定し、それぞれの原因や環境にあったかたちで妊娠を目指せるようにアドバイスしてくれます。
費用のことや検査内容、治療内容に不安があるかもしれませんが、不安の種をひとつずつ解消していきながら、自分たちのペースであせらず治療をすすめていきましょう。

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