不妊治療で太るのはホルモン剤のせい?ストレスも太る原因になる?

2018/9/15

前田 裕斗 先生

記事監修医師

国立成育医療研究センター フェロー

前田 裕斗 先生

不妊治療を始めると、太ったと感じる人は少なくないようです。これは、本当に太っているのでしょうか?また、太ったと感じる原因はいったい何なのでしょうか?
この記事では、不妊治療で太ったと言われる原因について、また、太らないようにするための対策について解説します。

不妊治療で太るのはホルモン剤のせい?

不妊治療中には、さまざまなホルモン剤を使用します。中でも、hMG製剤やFSH製剤には女性ホルモンが含まれており、これらの影響を受けることは少なくありません。

エストロゲン
排卵や子宮内膜の増生に必要な女性ホルモン。女性らしい丸みを帯びた体つきを作る
プロゲステロン
月経・妊娠継続や子宮内膜を妊娠に適した形に変えるのに必要な女性ホルモン。血糖値を正常にし、体脂肪を減らす働きもある

プロゲステロンとエストロゲンは、どちらかが多ければ良いというものではなく、バランスよく働き合うことで、女性の月経を初めとした身体機能を支えています。ですから、これらのホルモン剤を投与することで太るかどうかは、かなり個人差があります。

ホルモン剤によって体のホルモンバランスが変わることで、一時的に食欲が増えてしまうことがあります。この場合、食べる量にさえ気をつけて普段どおりの量の食事をしていれば、太ることはありません。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)で太ることがある?

卵胞を育てるため、これらhMG製剤やFSH製剤(ゴナドトロピン製剤とも呼ばれています)を注射していると、まれに卵巣が腫れる症状が出ることがあります。卵巣過剰刺激症候群(OHSS)という状態で、卵巣が腫れると血管中の血液が濃縮されてしまい、水分が血管の外に排出されます。

この水分が浮腫(むくみ)を引き起こします。この場合、太ったように見えますが、脂肪ではなく水分ですから、OHSSの症状が改善されれば自然と元に戻ります

不妊治療のストレスも太る原因になる?

不妊治療中はなにかとストレスの溜まることが多いものです。卵巣のチェックや排卵誘発での頻繁な通院のストレス、仕事とのスケジュールの兼ね合い、家庭でのストレスなど、溜め込みすぎると過食傾向になってしまうことがあります。

これは不妊治療だけに見られることではなく、精神的なストレスが溜まると無意識に過食に走ってしまう人は少なくありません。食事を食べる、すなわちカロリーを摂取することは、一時的な幸福感を生んでくれるため、ストレスの多い人は最も手軽なストレス発散法として食事を必要以上に多く食べてしまうことがあるのです。

ストレスが筋肉量を低下させる?

筋肉量は、基礎代謝の量に直結します。つまり、筋肉量が減ると、同じ量の食事を食べていても消費する量が減るため、過剰なエネルギーが脂肪として溜め込まれやすくなってしまうのです。

筋肉量が減る原因の一つに、DHEAホルモンの減少が挙げられます。DHEAホルモンは加齢によって減少すると考えられていましたが、近年、ストレスによって減少するということがわかっています

このDHEAホルモンは、筋肉量を維持し、若々しさを保つのに役立ちます。ストレスを上手に発散することはもちろんのこと、ストレスによって破壊されたDHEAホルモンを取り戻すよう、筋力トレーニングをすることも大切です。

不妊治療中に太らないようにするための対策は?

では、不妊治療中に太らないようにするために、どんなことに気をつけたら良いのでしょうか?また、太りすぎ、痩せすぎは不妊の原因になるのでしょうか?

太りすぎ、痩せすぎは不妊の原因になるって本当?

太りすぎ・痩せすぎは、どちらも不妊の原因になりうる状態です。具体的には、BMIの値が18.5未満または27以上で排卵障害が起こりやすくなります。BMI値の理想は22です。最も妊娠しやすい体重で、病気にもかかりにくいとされています。

特に、BMI30を超えるような肥満の人は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)になるリスクが高くなります。ホルモンバランスが崩れ、男性ホルモンが増加することでスタイン・レーベンタール症候群と呼ばれる、男性化の兆候が現れてしまうこともあります。これにより、月経が不順になったり、無月経になったりすることがあります。

また、過酷なダイエットなどで1ヶ月に5〜6kgも痩せた場合、体重減少性無月経という月経が来なくなる状態に陥ることがあります。当然、排卵も起こりません。BMI18を切る低体重が続くと卵巣自体が萎縮してしまうこともあります。

不妊治療中は体重コントロールを意識しよう!

体重が増加すると、注射薬のゴナドトロピンなどの量も多くなってしまいます。薬剤の投与量は体重によって決めるため、体重増加は薬剤の量の増加に直結します。薬剤の量が多くなれば、副作用のリスクも増え、卵巣が腫れてむくんだり、糖尿病や高血圧を引き起こしたりと、悪循環に陥ってしまいかねません。

そこで、不妊治療中は体重の自己管理に気をつけましょう。主に、以下のようなことに注意することが大切です。

  • 「いつも通り」の食事内容、食事量を心がける
  • 体重を毎日はかることを習慣にする
  • 家族に注意してもらう

食欲が増えてしまった結果太ってしまった人は、食事を減らせば元通りになる可能性が高いです。不妊治療を始める前にどのくらい食べていたのかを思い出し、元通りの食事量をキープしましょう。体重を毎日はかることも、食べすぎ防止に役立ちます。

また、家族と住んでいる人は家族に食事量を見ていてもらうのも良いでしょう。自分では気づかないうちに食べているということも少なくありません。

不妊治療中にダイエットしても大丈夫?

不妊治療中の急激な体重増加や減少は、妊娠を望む女性にとってよくありません。では、妊娠に適した体重にするためのダイエットは、しても良いのでしょうか?

筋肉量を増やして基礎代謝を上げよう!

ダイエットというと真っ先に思い浮かぶのは食事制限ですが、急激な食事制限はかえって精神的にも身体的にもストレスがかかってしまいます。しかし、もともと体重が多い人や太ってしまって適正体重を超えてしまった人などは、何らかの対策が必要です。

そこで、基礎代謝を上げるため、食事量をコントロールしながら、筋肉量を増やすトレーニングを行い、減量していきます。食事量を少なくして必要な栄養素を確保することはなかなか難しいため、自己流でなく医師に相談しながら行うこともおすすめです。

また、痩せていて不妊の状態になっている場合は、BMI値が問題のない範囲になるよう、食事量を増やしながら筋肉トレーニングを行い、筋肉をつけることが必要です。脂肪よりも筋肉の方が重いため体積が小さく、体重を増やしながらも体はすっきりとスリムになることができます。

太った原因、本当に不妊治療のせい?

太る原因は、不妊治療のホルモン剤やストレスのせいだけとは限りません。もともと、不妊治療を行うことの多い30代後半〜40代前半は、何もしていなくとも基礎代謝がどんどん落ちてくる時期です。つまり、同じ食事量を食べていても、消費されるエネルギーが減っていくことによって太ってしまうのです。

そこで、基礎代謝を増やすために筋力トレーニングが重要となります。無理のない範囲で筋力トレーニングを行い、筋肉量をつけて基礎代謝の低下を防ぎましょう。

おわりに:不妊治療で太るとは限らない!基礎代謝を上げよう

不妊治療で「太った」と感じるのは、ホルモン剤の影響がないわけではありません。しかし、太る原因は他にも卵巣過剰刺激症候群(OHSS)によるむくみや、ストレスや加齢による筋肉量の低下が挙げられます。

OHSSであれば副作用がおさまればすぐに元に戻りますが、筋肉量の低下には筋力トレーニングが欠かせません。適度な運動はストレス解消にも役立ちますので、ぜひ無理のない範囲で筋力トレーニングをし、基礎代謝を上げましょう。

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