不妊とは ― 不妊と診断されるのはどんなとき?どんな治療をする?

2018/9/8

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

避妊しないでセックスをしているのに、子供が授からないことを不妊といいます。
いったい、どのような条件がそろうと「不妊症」と診断されるのでしょうか。
不妊治療に必要な検査のこともあわせて、詳しく解説していきます。

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不妊ってどんな状態?

一般社団法人日本生殖医学会によると、「不妊症とは、何らかの治療をしないと、それ以降自然に妊娠する可能性がほとんどない状態」です。
特に病気がない、妊娠を希望する男女が、避妊をせずにセックスを行えば、8〜9割の人が一定期間内に妊娠するとされていますが、一定期間を過ぎても妊娠しないときに不妊症と診断されることがあります。

不妊症とされる期間は、日本産科婦人科学会やWHO(世界保健機構)、米国の生殖学会などで1年としています。現在の日本では10組に1組のカップルが不妊で悩んでいるともいわれています。

1年経っていなくても不妊の可能性がある

不妊には、原因がはっきりしないものもありますが、不妊に影響を与える要因として明らかになっているものもあります。女性側の要因として、子宮内膜症や子宮筋腫がある人、過去に骨盤腹膜炎になったことがある人、また、一般的には35歳以上であることは、妊娠に影響を与えると考えられています。そのため、女性が35歳以上のときには、1年間の不妊期間を待たなくても妊娠に関わる検査を受け、必要であれば治療に進むことが良いと判断されることもあります。

不妊は男性に原因があることも

不妊は女性にばかり原因があるようにイメージされがちでしたが、最近では男性側に原因がある可能性についても知られるようになってきました。

男性側の原因としては、主に精子の異常が挙げられます。一定量の精液の中に精子がない、あるいは少ないという「精子数の異常」や、数はあっても正常に運動していないといったことなどです。

精子が減少する原因としては以下のようなものがあります。

造精機能障害(精子形成障害)
精巣で精子をつくる過程で何らかの異常が起き、精子がつくられない。ホルモンの異常や、精巣内に腫瘤ができるなど原因が明らかになることもあるが、原因不明であることが多い。
精路通過障害
精巣でつくられた精子を、何らかの原因で外に射出する経路(精路)が閉鎖している。手術を行うこともある。
性機能障害
精子そのものや、精路に問題はないが、精子を外に射出できない。勃起障害や性欲障害などがある。

不妊の治療にはまず検査から!

不妊治療に関わる検査は不妊治療を行っている医療機関で受けられます。一般の婦人科や産婦人科で受けられるものもあります。また、男性の検査は泌尿器科で受けることもできます。

女性全員が受ける一般検査

内診と経腟超音波検査
内診台の上で行う検査です。実際に、腟内を触診したり視診をします。また、腟内に超音波を発生する器具を入れて、腟、子宮、卵管、卵巣などを画像で観察します。子宮筋腫や卵巣のう腫といった腫瘍の有無や、子宮内膜症などの異常がないかを確認します。
子宮卵管造影検査
子宮から卵管の方へ造影剤を注入して、エックス線を当てて子宮の形状や卵管が詰まっていないかどうかを見る検査です。痛みに個人差があります。
血液検査
月経や妊娠に関わるホルモンや、全身疾患に関わる物質の検査を行います。月経周期にあわせる必要があるため、受診してすぐに行えるとは限りません。

女性の一部が受ける検査

子宮鏡検査
子宮に細い内視鏡を入れて、子宮の中を調べます。子宮内ポリープや子宮筋腫を観察し、そのまま切除することもできます。また、卵が子宮内に着床する様子を観察するときにも行われることがあります。
MRI検査
体の断面像を撮影できる検査で、子宮や卵巣の形状を詳細に撮影できます。CT検査とは異なりX線(レントゲン)を使用しないため、被曝はしません。

男性が受ける一般的な検査

精液検査2〜7日間射精をしない期間をつくり、マスターベーションで射精した精液を取ります。精液量、精子濃度、運動の様子、精子の形などを検査します。

男性の一部が受ける検査

精液検査で異常があったときには、泌尿器科的な検査を行います。

診察
不妊に関する病気の有無や、勃起や射精といった状況の確認、精巣の診察などを行います。
血液検査
血液中のホルモン値の検査を行います。
染色体や遺伝子検査
精子数が極端に少ない、あるいは無いといったときには、染色体異常や遺伝子異常が関わっていることがあります。今後の治療を検討するために大切な検査です。
そのほか特殊な検査
病状に応じて、精子の機能や精子形成の状態を調べる検査、精巣や射精管の形態を調べるMRI、勃起能力を調べる検査などが行われます。

おわりに:不妊の原因を知るためには、カップルでの受診が望ましい

晩婚化や少子化が進み、不妊という概念が知られるようになってきた日本では、不妊治療を受けているカップルは少なくはありません。不妊は、男性にも女性にも原因が隠れていることがあります。検査や治療は、男性、女性の状態に応じて必要なもの行っていくため、不妊治療を考えるときにはカップルで受診し、必要な検査を受けることが望ましいでしょう。

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