僧帽弁逸脱症ってどんな病気?自覚症状がほとんどないって本当?

2018/9/3

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

僧帽弁とは、心臓にある弁の一つで、血管にある弁と同じく血液の逆流を防ぐ働きがあります。この僧帽弁に起こる症状に、僧帽弁逸脱症というものがあります。
僧帽弁逸脱症とは、いったいどのような原因で起こるのでしょうか?また、自覚症状がないというのは本当なのでしょうか?詳しくみていきましょう。

僧帽弁逸脱症とは

僧帽弁とは、心臓の左心房と左心室の間にある弁のことです。左心室が全身へ血液を送り出すときや、肺からの血液が左心房から左心室へ流れ込むときに血液が逆流しないように働きます。

僧帽弁逸脱症とは、左心室が収縮する時に僧帽弁が左心房内に突き出てしまう症状のことを言います。左心室から左心房へ血液の逆流が起こることもあり、弁組織が弱くなることで起こります。ほとんどの場合は治療の必要がないほど無症状ですが、胸痛や動悸、片頭痛、疲労、めまいなどが起こることもあります。

僧帽弁逸脱症は人口の約1〜3%にみられ、ごくまれに逆流が重度であったり、感染性の心膜炎を引き起こしたりする場合には治療が必要となります。聴診器を当てると心臓から特徴的なクリック音が聞こえることでわかり、心エコー検査で診断を確定します。

僧帽弁逸脱症を発症する原因は?

僧帽弁逸脱症の原因は、主にもともと弁組織が弱いことによります。弁組織が弱いと、過剰に延長してしまいます。これを粘液腫様変性といい、弁組織の粘液腫様変性は遺伝性のものです。また、その他に考えられる原因としてはリウマチ性心疾患、マルファン症候群、エーラス・ダンロス症候群などがあります。

僧帽弁逸脱症のリスクを高めてしまう疾患とは?

僧帽弁逸脱症のリスクを高めてしまう疾患には、以下のようなものが挙げられます。

マルファン症候群
大動脈や骨格、肺、目など全身の組織が脆くなる遺伝性疾患
エーラス・ダンロス症候群
皮膚や骨格、血管など全身の組織が脆くなる遺伝性疾患
全身性エリテマトーデス(SLE)
膠原病の一種で、免疫系の異常により全身に炎症を引き起こす疾患

マルファン症候群、エーラス・ダンロス症候群のいずれも全身の組織が脆くなる疾患で、弁組織も弱まることによって僧帽弁逸脱症を引き起こします。全身性エリテマトーデスは膠原病という免疫疾患で、自己抗体によって自分自身の細胞や組織を攻撃してしまうことで臓器に障害を引き起こします。

突発性の粘液腫様変性によって起こることも

僧帽弁に原因不明の突発性粘液腫様変性が起こり、逸脱症となる場合もあります。僧帽弁に粘液腫様変性が生じると、僧帽弁と心臓をつないでいる腱索という組織の筋繊維が伸びてしまい、僧帽弁が左心房側に飛び出してしまうことがあるのです。

さらに、逸脱した僧帽弁に負担がかかって腱索が完全に破壊されてしまうと、僧帽弁閉鎖不全症という疾患につながります。僧帽弁閉鎖不全症となると、弁を閉じることができず、左心室から左心房への血液の逆流が起こるため、心不全や不整脈を引き起こします。

僧帽弁逸脱症になると、どんな症状が出てくるの?

僧帽弁逸脱症になっても、ほとんどの人では症状がみられません。ほとんどの僧帽弁逸脱症が遺伝性であり、進行性のものではないので、悪化することはあまりありません。したがって、手術をしなくても、日常生活に特に支障がなく生涯を送ることができる人がほとんどです。

しかし、まれに症状がみられることもあります。その場合は胸痛、頻脈、動悸、片頭痛、疲労、めまいなどの症状が起こります。立ち上がったときに血圧が異常に低下する起立性低血圧が起こる場合もあります。

また、弁の腱索が切れるタイプの突発性粘液腫様変性によって起こる僧帽弁逸脱症の場合、腱索断裂が繰り返されることで症状が進行することがあります。逆流によって心臓の負担があまりに大きい場合、心臓が肥大したり肺が鬱血することがあり、その場合は手術療法が必要となります。

僧帽弁逸脱症で治療や手術が必要な場合とは?

僧帽弁逸脱症では、ほとんどの場合は自覚症状も水面下で進行する症状もありませんので、治療が必要になることはほとんどありません。しかし、心拍が早すぎる場合、ベータ遮断薬という血圧を下げる薬を使い、心拍を遅くして動悸やその他の症状を軽減します。

また、僧帽弁逸脱症から僧帽弁閉鎖不全症を引き起こした場合は、血液の逆流によって心臓に負担がかかっている可能性があります。僧帽弁閉鎖不全症が進行し、心機能の低下などを始めとする症状が現れた場合には手術療法や薬物療法の適応となります。

僧帽弁閉鎖不全症の治療に使われる薬物って?

血液の逆流によって息切れなどの症状が見られる場合は、利尿剤を投与して心臓の負担を軽くします。まずはループ利尿薬という代表的な利尿剤を使用しますが、十分な効果が得られなければサイアザイド系利尿薬も併用します。また、予後を良くするために抗アルドステロン薬を用いることもあります。

心機能のコントロールのために、前述のベータ遮断薬のほか、ACE阻害薬、ARBなどの薬を投与することもあります。

僧帽弁閉鎖不全症の外科手術って?

薬物療法で症状の改善がみられない場合、または症状がなくても心臓への負担が大きいと判断される場合には外科手術を行います。手術には以下の2種類があります。

僧帽弁形成術
僧帽弁を整える手術のこと。
状況に応じて人工弁輪と呼ばれる補強材を取り付けたり、弁の一部を切除して整えたりする。
僧帽弁の一部のみが逸脱して起こった場合に有効。
僧帽弁置換術
僧帽弁を人工弁に取り替える手術のこと。
牛や豚の組織から作られた生体弁と、炭素繊維やチタンから作られた機械弁がある。
生体弁は10〜20年で取り替える必要があるが、機械弁は血栓ができやすいため抗凝固薬を飲み続ける必要がある。

僧帽弁形成術は、あくまでも弁の形を整える手術であるため、弁の組織が著しく壊れている場合には適応が難しい場合があります。僧帽弁は生体弁と機械弁の2種類がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあるため、どちらを使用するかは医師とよく相談する必要があります。

おわりに:僧帽弁逸脱症から閉鎖不全症になる場合は要注意!

僧帽弁逸脱症は、ほとんどが遺伝性で症状が進行することも、自覚症状もなく手術などの治療の必要はありません。しかし、突発性粘液腫様変性などから僧帽弁閉鎖不全症に進行し、症状が現れる場合は注意が必要です。

僧帽弁閉鎖不全症になると、血液の逆流によって心臓に負担がかかり、心機能を低下させてしまうことがあります。胸痛やめまい、疲労感、片頭痛などの症状が酷い場合は、病院で診察を受けましょう。

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