ネフローゼ症候群の原因はひとつじゃないの?どうやって治療する?

2018/8/31

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ネフローゼ症候群の原因はどのようなものがあるのでしょうか?また、どのような治療を行うのでしょうか?ネフローゼ症候群の原因や治療方法について解説していきます。

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ネフローゼ症候群ってどんな病気?

ネフローゼ症候群とは、尿中にタンパク質が多量に排出されることにより低たんぱく血症(血液中のタンパク質が減少する症状)が起こり、むくむ疾患のことです。

低たんぱく血症になるとむくみが起こる原因は、血管内の水分の減少に伴い血管外の塩分や水分が増量するためだとされています。
また症状が進行すると、肺、お腹、心臓、陰嚢などにも水分が溜まるようになり、血液中のコレステロールの増量や、腎不全、血栓症(脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞など)、感染症などを合併する恐れがあります。

主な症状

尿の泡立ち
尿の泡立ちが起こるときは、尿たんぱく増加が見られることが多いとされています(ただし、必ずしも尿たんぱく増加を示すわけではありません)。
むくみ
下腿前面を10秒間ほどきつく押さえたときにへこみが持続する場合は、むくんでいると判断されます。また、瞼を重く感じる症状も見られます。
体重増加
むくみが悪化して全身がむくむようになると、体重増加として現れることがあります。

ネフローゼ症候群の原因は?

ネフローゼ症候群の原因疾患は、腎臓疾患が原因である場合と全身性疾患が原因となる場合に分けられ、それぞれに以下のような疾患があります。

微小変化型ネフローゼ症候群

糸球体の形態に目に見えた変化(微小変化)がないにも関わらず、糸球体の血管からタンパク質が漏れる疾患です。小児~若年者に多く見られ、急激に発症してから1週間後ほどに5kgの体重増加が起こることもあります。
発症する誘因として、花粉症やぜんそくなどのアレルギー反応が関係していると考えられています。

巣状分節性糸球体硬化症

一部の糸球体に部分的に血管が硬くなる形態が見られる疾患です。リンパ球の働きが原因となる場合や、メタボリック症候群に伴い発症することがあります。
急激に発症した後、微小変化型ネフローゼ症候群と同様の経過をたどります。

慢性腎症

糸球体の血管壁に沈着物(免疫複合体)が付着することにより、タンパクがうもれてしまう疾患です。中高年に多く見られます。付着する沈着物は、がん、膠原病、B型肝炎、C型肝炎、薬などにより産生される場合や、特に原因がないにも関わらず産生される場合もあります(特発性)。

膜性増殖性糸球体腎炎

糸球体の血管壁や血管同士を保持している部分(メサンギウム領域)に炎症が起こる疾患です。若年~高齢まで幅広い年齢の人に発症し、血尿を伴う場合が多いとされています。
発症は、C型肝炎や膠原病などの疾患が原因となる場合や、特に原因がないにも関わらず起こる場合があります。また、免疫との関係(血清補体が低値となる)が影響を及ぼしていると考えられています。

糖尿病性腎症

糖尿病を長期間患っている場合は、神経症→網膜症→腎症の順に合併症が発生するとされています。また、タンパク尿の増加に伴いネフローゼ症候群になることが多いとされています。

膠原病

膠原病の代表的な病気である全身性エリテマトーデス(SLE)は、様々な腎病変の合併が起こることが多いとされており、SLEが活発に活動するようになるとネフローゼ症候群が発症する可能性が高くなります。

がん(悪性腫瘍)

がんに伴い膜性腎症が起こることがあります。またまれに、膜性増殖性糸球体腎炎や微小変化型ネフローゼ症候群を伴うことがあります。

薬剤や健康食品などの使用により発症することもあるため、服用しているものがある場合は受診した際に医師に伝えておくようにしましょう。

ネフローゼ症候群はどうやって治療する?

ネフローゼ症候群は、下記のように症状にあわせた薬物療法を中心に進められますが、食事療法(塩分制限など)も重要になってきます。

むくみ
むくみの改善には、塩分制限や水分制限、尿を増やす作用のある薬の服用などが必要となります。
腎臓保護
腎臓を保護するためには、血圧を低下させる作用のある薬の服用が必要となることがあります。
コレステロール
コレステロールが高値の場合は、コレステロールを低下させる作用のある薬を使用します。
蛋白尿
蛋白尿が多く見られる場合は、ステロイド大量療法を行うことがあります。
その他
モノクローナル抗体と呼ばれる特殊な蛋白に結びつく作用のある薬剤を使用して、治療を行うこともあります。
また、積極的に治療を行う場合は、必要に応じて副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬などを使用したり、再発を頻繁に繰り返す場合にはリンパ球を減少させる作用のある薬を服用することがあります。

おわりに:ネフローゼ症候群の原因疾患はさまざま

ネフローゼ症候群とは、尿中にタンパク質が多量に排出されることにより低たんぱく血症が起こりむくむ疾患のことです。腎臓疾患だけでなく、糖尿病やがんなどが原因で発症することもあるので、該当する原疾患のある人は発症に注意しましょう。

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