慢性腎不全の原因と治療内容について

2025/6/25

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

慢性腎不全で失われた腎機能を健康な状態にまで回復すること非常に難しく、末期になると余命にも影響するといわれています。この記事では、慢性腎不全の原因と、治療内容について解説していきます。

慢性腎不全とは

腎不全とは、腎臓病が進行して腎機能が低下している状態のことで、急性腎不全(急激に腎機能低下が起こる)と慢性腎不全(数ヶ月~数十年の年月をかけて腎機能低下が進行する)に分けられます。

急性腎不全の場合は、腎機能の低下を引き起こしている原因を治療することにより回復が期待できますが、入院治療が必要となります。慢性腎不全の場合は、腎不全の進行により失われた腎機能が回復する可能性は非常に低いとされています。

慢性腎不全の原因

慢性腎不全は、主に以下の病気が原因となり発症します。

糖尿病性腎症

糖尿病が原因となり発症する腎臓合併症です。糖尿病になると、まず血管内の血糖の上昇に伴い、輸入細動脈(腎臓に血液を運搬する血管)と輸出動脈(腎臓から血液を運び出す血管)が拡張されます。これにより腎臓に出入りする血液量が増加しますが、輸出動脈と比べて輸入細動脈の方がより拡張されるため、腎臓内に流入する血液量が多くなり腎臓内の血圧上昇が起こります。この過程により腎臓の細胞が障害を受け、腎機能の悪化が引き起こされます。

慢性糸球体腎炎

慢性糸球体腎炎とは、糸球体(腎臓内の血液をろ過する働きのある組織)に炎症が起こることにより、1年以上蛋白尿や血尿が持続する病気の総称です。発症の原因は完全に解明されていませんが、免疫学的機序が関係していると考えられています。通常の免疫機能は作られた抗体が病原体を攻撃しますが、糸球体腎炎の場合は抗体が糸球体を攻撃するようになってしまいます。

腎硬化症

高血圧が原因で腎臓の血管に動脈硬化が起こると、腎臓の血管が硬くなると同時に狭くなり、腎臓への血流が滞ります(腎硬化症)。血流が減少すると尿が産生されなくなるため、腎不全となります。

そのほかの腎疾患

  • 多発性嚢胞腎
  • 慢性腎盂腎炎
  • ループス腎炎

慢性腎不全の治療内容について

腎不全保存期の治療

慢性腎不全で尿毒症状があるものの透析を受ける必要はないと診断された状態を、腎不全保存期といいます。腎不全保存期では、以下のように治療が進められます。

薬物療法
腎臓の炎症を抑制する作用のあるステロイドや免疫抑制剤、腎不全に伴い起こる腎性貧血に作用する注射、体内に溜まりやすいカリウムやリンを低下させる薬、その他血圧を低下させる薬、利尿剤などを病状に合わせて使用する
食事療法
たんぱく質・塩分・カリウム・リン水分の摂取量の制限などを行う。ただし、必要なカロリー量はきちんと摂取する必要がある
生活習慣
疲労・激しい運動・体の冷え・感染症(風邪など)などに注意して生活をする

末期腎不全の治療

腎不全保存期の治療を受けている間に腎機能の低下が進行した状態を、末期腎不全といいます。末期腎不全の治療では、悪化している尿毒症を改善するために、体内に貯留している老廃物を除去する腎代替療法を行う必要があります。

透析治療

血液透析
血管に針を刺して血液を取り出した後、機械を通してきれいになった血液を血管に戻す治療。短期間の場合は、血管に専用の管を留置する方法が取られるが、長期間行う場合は利き手と反対の腕の動脈と静脈を繋いで、針を刺す際に必要となるシャントという部位をつくる。
シャントの作成から使用開始まで通常1ヶ月ほど必要とされるため、シャントの作成術は透析開始より1ヶ月ほど前から行う。作成する手術は、局所麻酔を使用して1~2時間程度とされ、外来で血管透析を受ける場合は通常、週3回、1回4時間程度とされている
腹膜透析
腹膜に管をおいて透析液の注入を行い、一定時間を置いた後に透析液を排出する治療

腎臓移植

透析以外の治療方法として、腎臓移植を行う場合もあります。腎臓移植には、脳死・心停止した人から提供される献腎移植と、親族から提供されるもの生体腎移があります。

おわりに:健康的な生活を心がけ、早期発見に努めることが予防につながる

慢性腎不全の原因疾患には、糖尿病性腎症・慢性糸球体腎炎・腎硬化症などがあります。慢性腎不全の場合は、腎不全の進行により失われた腎臓の機能が回復する可能性が非常に低く、早期発見・早期治療が大切になってきます。発症予防・悪化予防のためには、必要に応じて医師に相談しながら、健康的な生活を心がけ、早期発見のため定期的に検査を受けることが大切になってきます。

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