記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/9/6
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠を境にして、体の調子やライフスタイルに変化がみられることがあります。なかでもちょっと人に相談しづらいお悩みのひとつが「いぼ痔」です。「なんだかお尻が痛い!」と思いつつ、我慢していることはありませんか? 実は、妊娠中にいぼ痔になる人は多いのです。
肛門の病気のなかで最も患者数が多いといわれているのが「いぼ痔」です。肛門の血行が悪くなり血管に瘤(静脈瘤)ができた状態を、いぼ痔または痔核と呼びます。
血行を悪化させる大きな要因は排便時のいきみがまず考えられます。肛門への刺激や負担がいぼ痔を引き起こすのです。
妊婦中の多くの女性に痔の症状がみられますが、これは妊娠後期にお腹が大きくなるにつれて肛門にかかる圧迫が強くなるためです。圧迫された肛門周辺の静脈がうっ血し、血液中に塊を作ります。この塊を血栓といい、血栓を原因としたいぼ痔を「血栓性外痔核」と呼びます。
ちなみに「便秘」もいぼ痔を誘発します。
妊娠すると腸の活動が低下しやすく便秘がちになりますが、これはホルモンの影響で体内バランスに変化がみられたり、運動する機会が減ったりすることで、腸が活性化されにくくなるからでしょう。
妊娠後期の女性が罹りやすい血栓性外痔核とはどんな病気なのでしょう。
肛門は直腸とつながっており、体外へ便を排出しています。肛門は、直腸(体内の粘膜)と皮膚との境目を持ち、これを「歯状線」といいます。
血栓性外痔核は、歯状線の皮膚側に血栓ができた状態を指します。人が痛みを感じるのは知覚神経によるものですが、歯状線では皮膚側のみに知覚神経が通っているので、血栓性外痔核はしばしば激痛を伴います。対して歯状線の直腸側に生じたものは「内痔核」と呼ばれ、痛みはほとんどありません。
外痔核には目で見てわかる腫れや血豆がみられることがあります。ただし痛みや違和感があるからといって、腫れや血豆を触るなど刺激を与えることは避けましょう。
いぼ痔の原因は肛門周辺への刺激や負担ですので、不用意にさわると炎症を引き起こすなど症状を悪化させるおそれがあります。
ママの体の調子は、胎内で成長する赤ちゃんに影響を及ぼします。しかし、妊娠中にいぼ痔になったからといって、赤ちゃんに影響を与えることはありません。
痔が赤ちゃんへ影響を及ぼすことはほとんどありませんが、出産を控えたママの体のケアとして治療は検討しておきたいものです。
妊娠中の痔の治療は、妊娠の経過によって異なります。薬物療法は妊娠が安定期に入ってから、医師と相談のうえ治療に取り入れるかを決めます。痔には手術療法がとられることもありますが、手術侵襲や麻酔のリスクを考慮すると妊娠中は手術を避けるのが一般的です。ママの体の状態に合わせて、治療方法を選択しましょう。
自然分娩での出産はいきみを必要とし、その際には肛門への負担は大きくなります。出産時にいぼ痔を発症したり、悪化させたりするする方もいます。出産前後は便秘にならないように食事内容に気をつけ、適度な運動を取り入れるなど体を整えてください。
いぼ痔は妊娠中に発症することが多く、出産時にも発症や悪化のリスクがあります。同じ症状に悩む妊婦さんは多いので、恥ずかしがらなくて大丈夫。安心して赤ちゃんを生むためにも、お尻に痛みや違和感を覚えたら早めに病院を受診してみてくださいね。
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