慢性腎臓病は治療すれば治る?薬を服用すれば治るの?

2018/9/5

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

慢性腎臓病は治療をしたり薬を服用すれば治るのでしょうか?慢性腎臓病の治療法について解説していきます。

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慢性腎臓病は治療すれば完治する?

慢性腎臓病(CKD)の治療は、以下のようなことを治療目標として行います。

進行を遅らせる

慢性腎不全の進行を予防するために、薬物療法、食事療法、安静療法などを行い、透析療法への移行を少しでも遅らせることを目的とします。

合併症の予防

慢性腎不全が進行した状態でも、透析療法を受けることによりすぐに生命に関わる重体になることは避けられます。しかし、例えば高血圧が持続しているような場合には、動脈硬化が促進されることにより心臓病や脳卒中などの合併症を引き起こすことがあります。また、食事療法が適切でない場合は、骨が脆くなるなどの合併症の原因になります。

そのため、慢性腎不全の治療では、上記のような合併症を予防することも重要となるのです。

慢性腎不全が進行した状態である末期腎不全は、腎臓の機能低下が著しいため、それを代行する治療が必要不可欠になります。
しかし、病期(ステージ)の早い段階で適切な治療を受けることで、末期腎不全への到達を防げる可能性があるため、早期発見・治療をすることが大切です。

慢性腎臓病では原因となる疾患を治療することが大事!

主な慢性腎臓病(CKD)の原因として、糖尿病、高血圧、動脈硬化などの生活習慣病を長期間患った後に発症する場合や、慢性腎炎などがあります。
また、高血圧、動脈硬化、加齢などの腎機能が低下する原疾患に加えて、糖尿病や脂質異常症などの悪化要因が重なることで、腎機能の低下が進行し、CKDとなる人も少なくないとされています。

糖尿病性腎症

病気の進行度によって治療方法は異なりますが、一般的には血糖・血圧の管理、食事療法(蛋白質の摂取制限)、薬物療法が基本となります。自分の病期(ステージ)に応じた治療を受けましょう。

慢性糸球体腎炎

慢性糸球体腎炎の治療法は、IgA腎症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症などのそれぞれの腎炎により異なりますが、基本的には食事療法や薬物療法を中心として行います。
食事療法では塩分や蛋白質の摂取量制限を行い、薬物療法では降圧薬、副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬、抗血小板・抗凝固薬などを、原因となる疾患に合わせて使用します。
また、生活面では過度のストレスや睡眠不足、過度な運動を避けることが大切です。

腎硬化症

腎硬化症は、良性腎硬化症という比較的病気の進行がゆるやかなタイプと、悪性腎硬化症という急速に進行が進むタイプに分けられます。
良性腎硬化症の場合は、高血圧の治療を中心に行い、病態に応じて食事療法、運動療法、生活習慣の改善、降圧薬の使用などを行います。
悪性腎硬化症の場合は、入院をして血圧管理と全身管理を行います。また、降圧薬の内服で効果が見られない場合は、注射薬を使用することもあります。

慢性腎臓病の治療では、以上のような原疾患の治療と並行して、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、高尿酸血症などのCKDの共通の悪化因子を、コントロール・治療することが大切になります。

生活習慣の見直しも、慢性腎臓病の治療に

腎機能低下は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病も悪化因子となるため、生活習慣の改善も治療を行う上で重要な要素となります。

バランスよく食べる

蛋白質の摂取制限を行いながらも、必要なエネルギーを確保するためには、砂糖や油などの蛋白質を含まず効率的にエネルギーを補給できるものを活用しましょう。

野菜をとる

体内の塩分排出や血液低下を補助する作用のあるカリウムは、野菜に豊富に含まれているため、適度に摂取するようにしましょう。ただし、腎機能の低下が見られる場合は高カリウム血症の原因となる恐れがあるため、摂取量には注意する必要があります。

塩分・脂肪のとりすぎに注意する

塩分の過剰摂取にならないように、味付けをする際などには酢や香辛料などを上手く活用しましょう。また、乳製品や肉の脂身などの不飽和脂肪酸やコレステロールを多く含む食品は避けましょう。

適度な運動

血液循環を改善するためには、激しい運動よりもウォーキングなどの適度な運動を行うことが有効とされています。

適度に水分補給を行い、トイレは我慢しないこと

水分補給をきちんと行い排尿することで、腎臓への負担を軽減することができます。

ストレスを溜めずに、十分な睡眠をとること

ストレスや疲労が溜まると血圧が上昇するため、ストレスを避ける、リラックスする、十分な睡眠時間の確保などを行い、過労にならないようにしましょう。

アルコールの過剰摂取や禁煙をやめること

血管収縮や血圧上昇の要因となる、アルコールの過剰摂取や喫煙は避けましょう。

感染を予防すること

腎臓に負担をかける原因となるウイルスや細菌による感染症を防ぐため、手洗いやうがいなどの衛生管理を徹底しましょう。

過剰な服薬を避ける

過剰な服薬は腎臓に負担をかける原因となるため避けましょう。

運動が慢性腎臓病の治療に効果があるって本当?

適度に運動をすることで、腎機能低下の予防効果、透析などの腎代替療法への移行を遅らせる効果、死亡率を低下させる効果などがあるとされています。
そのため、CKDを患っていても以下のような適度な運動をすることが大切です。

  • 有酸素運動
  • レジスタンス運動(ダンベル運動、スクワット、腹筋、腕立て伏せなどを行い、繰り返し筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける運動)

CKDの患者さんが運動療法を行う場合は、合併している疾患や病態を考慮する必要があるため、事前に医師に確認しましょう。場合によっては運動療法を制限したり、運動を行うべきではないこともあります。

おわりに:治療では病態の進行と合併症を防ぐことが大切

慢性腎臓病(CKD)の治療では、進行を遅らせることと合併症を予防することが重要となります。ステージの早い段階で適切な治療を受けることで、末期腎不全への到達を防げる可能性があるため、早期発見・治療に努めることが大切です。

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