記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
難治性疾患の1つに「サラセミア」という病気があり、日本人の場合は「1,000人に1人程度の割合で発症する可能性がある」とされています。今回はこのサラセミアの概要、検査方法、治療方法などについてご説明します。
サラセミアとは「地中海貧血」とも呼ばれている病気で、その名前のとおりで地中海地域に多くみられる血液に関係する病気です。また、サラセミアとは「赤血球が小さくなる(小球性)」と「ヘモグロビンの量が少なくなる(低色素性)」の特徴がある貧血です。ただ、サラセミアと似たような病気もあるので、まずは以下で違いなどを確認しましょう。
サラセミアは「小球性低色素性の貧血」が特徴的な病気ですが、同様の特徴を持つ病気に「鉄欠乏性貧血」などがあります。そして、両者には同じような症状が現れたり、血液検査に似た結果が出ることがあります。ただし、鉄欠乏性貧血の原因は鉄分不足ですが、サラセミアの原因は遺伝子の異常です。そのため、両者は全く異なる病気だと言えます。
サラセミアの発症は遺伝子の異常が関係しており、大きく4つの種類に分けることができます。その種類によって症状や重症度などが異なるため、以下にまとめておきます。
この「αサラセミア」「βサラセミア」とは、どのヘモグロビン(αグロビンとβグロビン)に異常が起きているかを現しています。また、両親の一方から異常な遺伝子を受け継げば「マイナー」(ヘテロ)となり、両方から異常な遺伝子を受け継ぐと「メジャー」(ホモ)となります。なお、日本人の場合はβサラセミアが多く、軽症のサラセミアが多いです。
一般的な血液検査だけでは鑑別が難しく、本当はサラセミアであっても最初は「鉄欠乏性貧血」と診断を受けてしまう場合もあります。ただ、食事を見直したり、鉄剤を使ったりしても貧血が治らない場合は、サラセミアといった別の病気が疑われます。その際は、より詳しい検査を受けるために、血液疾患を専門にしている医師に相談するとよいでしょう。
サラセミアは一般的な血液検査だけでは診断が難しいため、問診や血液検査に加えて「スクリーニング検査」や「遺伝子検査」といった専門的な検査を実施する必要があります。これらがどんな検査なのか、以下で確認してみましょう。
まず「血液の異常の有無」を調べるために、スクリーニング検査を実施します。この検査は基本的に血液検査ですが、その検査項目が通常のものとは異なります。たとえば、ヘモグロビンA2やヘモグロビンFなどの数値を調べ、その分析結果などから病気を見極めます。
次に「遺伝子の異常の有無」を調べるために、遺伝子検査を実施します。この検査には「GAP-PCR による欠失解析」や「シーケンシングによる変異解析」などがあります。なお、患者さんによって、必要になる検査方法は異なります。
サラセミアと診断がついた場合、重症度に応じた治療を行います。軽症の場合は経過観察でも対応できますが、重症の場合は輸血などの治療が必要になります。そこで重症度ごとの治療法について説明します。
軽症の場合は、基本的には経過観察で対応できます。ただし、妊婦さんや感染症患者さんの場合は、一時的に貧血が重くなる場合もあるため注意が必要です。
一方、重症の場合は、積極的な治療が必要になります。主な治療方法には輸血、脾臓摘出術、キレート療法などがあり、それぞれの治療目的などは以下のとおりです。
そのほか、免疫抑制剤や骨髄移植などが行われる場合もあります。なお、現時点では、サラセミアに対して有効とされる「遺伝子治療(正常な遺伝子を導入する治療)」の開発は成功していません。
サラセミアは鉄欠乏性貧血と似ているため、中には鉄分を多めに摂ったり、治療したりしているけれど貧血が続いている方もいるようです。その場合、もしかしたらサラセミアの可能性があるので、一度、血液疾患を専門にしている病院などを受診するといいでしょう。
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