ベビ待ち夫婦には意外とハードル高い?精液検査ってどんなもの?

2018/9/20

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

不妊の原因が男性側にあることがあることはご存知ですか。
不妊を解決するには「できるだけ早く治療を開始すること」が重要なため、男性も不妊検査を受ける必要があるのです。
この記事では精液検査について詳しく解説しています。ベビ待ち夫婦やカップルで「なかなか妊娠できない」という方は、ぜひ参考にしてください。

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男性側にも不妊の原因があるって本当?

不妊の原因は女性に原因があると考えられがちですが、WHO(世界保健機関)の調査によると不妊の48%は男性に原因があるとされています。不妊に悩んでいる場合は、女性だけでなく男性も一緒に検査を受けるようにしましょう。早期に検査で問題が見つけることができれば、それだけ早いタイミングで不妊治療を開始することができます。

男性に不妊の原因には、「性機能障害」という射精が正常に行えない場合と、「精液性状低下」と呼ばれる射精したときの精液に含まれる精子の数や運動率の低下が見られる場合とに分けられ、精液性状低下ではさらに軽度・中等度のものと、高度または無精子症に分類されます。

性機能障害

性機能障害には以下のようなものがあります。

勃起障害(ED)
ストレスや病気などが原因で有効な勃起が起こらなくなり、性行為が正常に行えなくなること。
腟射精障害
性行為自体は行えても、腟内で射精ができなくなることで、自慰での射精は問題がない状態。
タイミング法の指導によるストレス
不妊治療の一環としてタイミング法の指導を行う場合、タイミングにこだわり過ぎるあまり性行為自体に障害を来すことがある。
糖尿病、動脈硬化
動脈硬化や糖尿病が原因になっている性機能障害。
特に糖尿病の場合は、比較的症状が軽く状態でも勃起障害が起こることがあり、重症化すると射精障害や逆行性射精(膀胱内に一部の精液が射出される症状)、無精液症(精液が出なくなる症状)に陥る恐れがある。

軽度~中程度の精液性状低下

受精する力のある、いわゆる「正常とされる精子」は、精巣(睾丸)の中で産生された後、精巣上体という細い管を通過する間に運動能力を獲得します。

精巣内での精子形成や精巣上体での運動能力獲得に問題が生じると、精子の数の減少や精子運動率低下、奇形率の増加、受精能力の低下などの異常が精子に起こるようになります。
このような病態は造精機能障害と呼ばれており、一部の人には精索静脈瘤が関係していると考えられています。

高度の精液性状低下、無精子症

精液性状低下

高度の精液性状低下では、精液に含まれる精子の数の著しい減少(通常の1/100以下など)や、運動率の著しい低下(20~30%以下)などの症状がみられます。
また、視床下部下垂体で造精機能を司るホルモン分泌低下により低ゴナドトロピン性性腺機能低下症が見られる場合、停留精巣の手術後、おたふく風邪により耳下腺炎性精巣炎がみられる場合などでも、高度の精液性状低下が起こる可能性があります。

無精子症

射精時の精液中に精子が全く含まれていない状態のことを無精子症と呼びますが、そのなかの「精巣内での精子の産生に異常がないにも関わらず精液中には精子が排出されない状態」のことを閉塞性無精子症といいます。

閉塞性無精子症の主な原因として、先天性両側精管欠損症、精巣上体炎後に見られる炎症性閉塞、鼠径ヘルニア手術などが挙げられます。
その一方で、閉塞が見られないにも関わらず精子が全く産生されない無精子症の多くは原因不明とされており、そのうちの10~19%の患者にはクラインフェルター症候群という47XXYの染色体異常がみられるといわれています。

精液検査ってどんなことをするの?

精液の問題を調べるには、主に精液検査と泌尿器科的な検査が行われます。精液検査はほとんどの人が受ける検査ですが、泌尿器科的な検査は精液検査で何らかの病気の可能性があると判断された場合に行われます。

デリケートな問題のため、男性にとってもパートナーの女性にとっても検査を受けることに抵抗があるかもしれませんが、現在、専門クリニックの多くでプライバシーに配慮した精液採取室が用意されているなど、診察環境が整えられています。気になる方は、病院選びのときにきちんとチェックしておいた方がいいでしょう。

精液検査

採取方法

検査の際に必要となる精液は、2~7日の禁欲期間(射精しない期間)の後に、用手法(マスターベーション)を行い全量を採取します。
基本的には受診した病院で採取することが推奨されていますが、自宅で採取した後20~30℃程度の温度に保つことができ、採取してから2時間以内に検査を行える場合は、自宅での採取が認められることがあります。

検査の流れ

  1. 精液採取した後、培養室で精液の量を測ってから一部の精子を専用の器機に移します。
  2. 顕微鏡に①で移した機器をセットした後、器機についているマス目を覗き、一定のマス目内の精子の数、運動している精子、正常な形態の精子の数などを数えて、これらを1ml中の精子の数に換算します。

ただし、精液の状態は日によって異なるため、一度目の検査で悪い結果が出たとしても、再検査で異常が見られなければ問題がないと判断されることがあります。

泌尿器科的検査

精液検査で異常が確認された場合に行われ、以下のような確認を行います。

  • 不妊症に関連する病気を過去にしていないかの確認
  • 勃起や射精などの現在の性生活の状況の確認
  • 精巣(睾丸)などの外陰部の診察
  • 精巣サイズの測定
  • 精索静脈瘤の有無

内分泌検査

精液異常の原因を特定するために、以下のようなことを調べます。勃起障害や射精障害が見られる場合にも必要となる検査です。

  • 血液中の男性ホルモン(テストステロン)
  • 性腺刺激ホルモン(LH、FSH)
  • プロラクチン

染色体・遺伝子検査

精子の数の著しい減少や、無精子症と判断された場合は、染色体の軽微な変化や遺伝子異常によって精子形成障害が起こっている可能性があるため、染色体検査や遺伝子検査を検討される場合があります。また、精巣内精子採取術などの治療を検討する場合にも必要な検査です。

特殊な検査

病態に応じて、以下のような検査が行われる場合があります。

  • 精子の機能を調べる検査
  • 精嚢や射精管の形態を調べるMRI
  • 精巣での精子形成の状態を詳しく調べる精巣生検
  • 勃起能力を調べる検査

精液検査の結果、男性に原因があるとわかったら?

男性に不妊の原因があると診断された場合は、以下のような内科的治療(薬物療法)や外科的治療(手術)を行う必要があります。

性機能障害

  • 抗うつ薬
  • PDE-5阻害薬
  • 射精障害に対する治療
  • 人工授精

軽度~中等度の精液性状低下

内科的治療
  • 生活習慣等の、男性不妊の原因となる可能性のある因子の除去
  • 非内分泌療法(漢方薬、ビタミン剤、血流改善薬等)
  • 内分泌療法(hCG、FSH療法)
人工授精
精索静脈瘤に対する手術

高度の精液性状低下・無精子症

精巣精子採取術+顕微授精
  • 精巣精子採取術(simple-TESE)
  • 顕微鏡下精巣精子採取術(micro-TESE)
精路再建手術
  • 精管精管吻合術
  • 精管精巣上体吻合術
  • 射精管解放術
非配偶者間人工授精

治療を受ける際はそれぞれの治療法について専門医と相談し、慎重に考えたうえで判断を下しましょう。

おわりに:早期に検査で問題が見つかればすぐに不妊治療を開始できます

不妊の48%は男性に原因があるとされているため、不妊に悩んでいる場合は、女性だけでなく男性も一緒に検査を受ける必要があります。男性側が受ける主な検査には精液検査と泌尿器科的な検査があり、男性に不妊の原因があると診断された場合は、内科的治療や外科的治療を行う必要があります。

早期に問題が見つけることができれば、早くに不妊治療を開始するできるため妊娠率も高くなります。不妊に悩んでいるカップルは、なるべく早くに検査を受けるようにしましょう。

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