お産が終わってホッとひと息と思ったら手首に激痛が!もしや腱鞘炎?

2018/11/25

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

手首の酷使などが原因となって発症する腱鞘炎ですが、パソコンやスマホを長時間使用ししている、あるいはゲームのやりすぎなどが大きな原因となる一方で、産後すぐの女性に多くみられるトラブルの一つでもあります。ここでは、産後の腱鞘炎について、いったい何が原因なのか、どう対処すればいいのかなど、詳しくご紹介していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

腱鞘炎ってどんな症状?

腱鞘炎とは、腱と腱鞘の間に起こる炎症で、患部に痛みや腫れなどを伴います。たとえば手の腱鞘炎の場合、「親指の付け根、手首、腕全体」が「手を広げる、親指をそらす、物を持つ」と、「痛む、腫れる、熱を持つ」などの症状がみられます。

実は、出産後や更年期前後など、女性ホルモンのバランスの変化する時期に、腱鞘炎が起こりやすくなるという傾向があります。それに加えて、産後の女性は抱っこをはじめとして、腕にかかる負担が一気に増えるため、手首や肩に痛みを感じる人も多くいます。軽症であればシップなどの貼り薬やサポーターなどで患部を固定することにより炎症が静まるケースもありますが、産後の腱鞘炎の場合、ときには痛みと腫れで箸を持つことすらできない、泣いている子供を抱き上げることができないなど、深刻な症状がみられることも少なくありません。

生まれたばかりの子供が泣いているのに、痛みで抱き上げることができないとなれば、精神的にも非常につらい状況に陥ってしまうことでしょう。

産後に腱鞘炎になりやすいのはどうして?

それでは、なぜ産後の女性に腱鞘炎が多くみられるのでしょうか。先ほどご説明した通り、抱っこをはじめとして、腕にかかる負担が一気に増えること、また、女性ホルモンのバランスの変化する時期であることが、まずは大きな原因として挙げられます。

そもそも、産後の女性の体はお産で体力を使いきっているのみならず、筋肉量の衰えた状態にあります。その状態で、1日に体重が25〜30gずつ増えていく子供を毎日抱っこしていれば、どうしても手首に負担がかかってしまいます。

また、初産であれば、子供を抱っこすること自体にも慣れていません。したがって、多くの女性が子供を落とさないよう、無意識のうちに肩や手首に過剰な力をかけてしまっているのです。その結果、腱鞘炎を発症する女性が多くなる傾向にあります。

痛くなったら病院へ行ったほうがいい?

心身ともにつらい産後の腱鞘炎ですが、毎日を子供の世話に追われて、なかなか病院へ足が向かないという人も多いことでしょう。なかには、産後しばらくしてホルモンバランスが落ち着けば、腱鞘炎も自然と治るのでは、と考えている方もいらっしゃるかもしれません。

しかしながら、腱鞘炎は決して自然治癒することはありません。たとえば、無意識に手首の使い方を変えて負担を減らした結果、気づいたら以前より良くなっていたということは考えられますが、一度痛みが治まったとしても、症状が再発するケースは多くみられます。

したがって、腱鞘炎と思われる手首の痛みを感じたら、すみやかに整形外科を受診するようにしてください。本当に子供のお世話をすることができなくなる前に、適切な処置を受けることが肝心です。ちなみに、医師に腱鞘炎であると診断を受けた場合、湿布薬と痛み止めの注射を併用して経過を見ることが多いのですが、市販薬の湿布薬の中には、授乳中の女性には適さない成分を含む製品も出まわっています。気軽だと市販薬で済まさず、手間だと思っても、かならず病院で相談するようにしてください。

産後の腱鞘炎を防ぐにはどうすればいい?

それでは、産後のつらい腱鞘炎を予防するために、いったいどんなことを心がければよいのでしょうか。以下、手首への負担を少なくする、子供のお世話のポイントをご紹介します。

腕全体を、上手に使う
多くの人が手首の力だけで子供を支えようとしがちです。そうではなく、腕全体に子供に沿わせるようにし、腕全体を上手に使って、子供を抱っこするようにしましょう
授乳クッションを使う
授乳時も、子供の頭の高さを手首で調整しがちです。授乳クッションを使用して、手首にかかる力を抜くようにしてください
バスチェアを使う
沐浴も、生後2か月を過ぎると子供が動くようになるため、手首に負担がかかります。バスチェアを使用することで、余計な力をかけないようにしましょう
サポーター・リストバンドを使う
もし、痛みが出てきたら、すぐにサポーターやリストバンドを使用して、患部を固定し、安静を心がけるようにして下さい

おわりに:子供の面倒が見られなくなる前に、かならず病院で相談を!

産後の女性は、子供のお世話でとにかく多忙を極めています。そのため、「これくらいなら、我慢できる!」と、痛みを放置してしまいがちです。しかし、適切な処置を受けない限り、腱鞘炎は治りません。本当に子供の面倒が見られなくなる前に、かならず病院で相談をしてくださいね。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

腱鞘炎(12) 産後トラブル(8)