胃粘膜の働きってどんなこと?荒れるのは食べすぎちゃったから?

2018/10/5

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

胃粘膜にはどのような働きがあるのでしょうか?また、暴飲暴食以外にも胃が荒れる原因はあるのでしょうか?胃粘膜の働きや胃が荒れる原因について解説していきます。

粘膜ってどんな働きをしているの?

健康な人の胃液は1日2~3L分泌され、胃の中に食物がないときに胃液が見られることはないとされています。
胃の中に食物が入ってくると、ひだ状だった胃壁が伸びることによりガストリンというホルモンが分泌され、その刺激に反応して胃液が分泌されるようになり消化活動が開始されます。

胃液の主な成分は、ペプシンと呼ばれるタンパク質を消化する作用のある酵素と、胃酸と呼ばれる食物の殺菌作用とペプシンを活性化させる作用のある成分の2種類とされています。
また、強い酸性を示す塩酸が主成分となっており、若い人の場合はpH1~2(中性はpH7)ほどになるといわれています。
このように、胃の中には強い成分からなる胃液が存在しているため、胃の不快感の原因となることがあります。

胃壁が溶けない理由

胃の中に食物が入ってくると、胃液と同時に大量の粘液が粘液細胞から分泌され、胃壁を胃液から保護するためのバリアが張られるようになっています。

この粘液は細かいネットのようになっており、胃壁に直接触れないように消化液をからめとって守る働きがあります。このように、胃壁付近では酸性から中性になることで、胃壁は消化液から逃れることができているのです。

しかし、粘液を正常に分泌させるためには、血液循環が重要な要素となるため、血液の循環が悪くなったり、血液が酸素不足状態になると、粘液細胞が栄養不足になることにより粘液の分泌が不十分となってしまいます。
胃は、胃粘膜を荒らす働きのある攻撃因子と、胃粘膜を守る働きのある防御因子のバランスが保たれることにより成り立っている、非常にデリケートな臓器なのです。

胃の粘膜が荒れてしまうのは、やっぱり暴飲暴食のせい?

胃の粘膜が荒れてしまう原因には、以下のようなことが挙げられます。

  • 暴飲暴食
  • アルコールの過剰摂取
  • カフェインを含む、コーヒー、紅茶、緑茶などの飲み過ぎ
  • 胃に負担のかかる、脂っこいもの、熱いもの、冷たいもの、辛いもの、塩気の多いもの、甘いもの、硬いものの摂り過ぎ
  • 不規則な食事時間
  • 薬の副作用や水なしで薬を服用した場合
  • 喫煙
  • 寝不足
  • ストレス
  • 化学的毒物
  • 放射線
  • 寄生虫
  • 細菌
  • 食中毒
  • ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)
  • インフルエンザなどの感染症
  • 急性化膿性胃炎
  • アレルギー性胃炎

荒れた胃粘膜の修復を促すには?

胃が荒れているときには、消化しやすく刺激が少ないものを食べるようにしましょう。
以下のことを参考に、胃にやさしい食事を心がけてください。

食べて良いもの
やわらかいごはん、パン、うどん、ヨーグルト、牛乳、卵黄、豆腐、白身煮魚、白身刺身、鶏肉煮、やわらかく煮た野菜
食べない方が良いもの
冷やごはん、チャーハン、寿司、天ぷら、フライ、梅干し、塩辛、漬物、香辛料、硬い野菜、甘い物(チョコレート、和菓子など)、アルコール類、緑茶、コーヒー、紅茶

タウリン、ビタミンU、フコイダンには以下のような効果が期待できますので、適度に摂るようにしましょう。

タウリン
胃粘膜の障害を抑制し、胃の細胞の寿命を伸ばす作用のあるタウリンは、主に魚介類に含まれています。
ビタミンU
胃酸の分泌を抑制し、胃炎を軽減する作用のあるビタミンUは、キャベツに多く含まれています。ただし、加熱することで成分が壊れてしまうため、食べ方には注意しましょう。
フコイダン
胃粘膜の働きを助け、ピロリ菌が粘膜に付着するのを防ぐ作用のあるフコイダンは、ワカメやコンブなどの滑り成分として含まれています。

胃粘膜が荒れやすい状況を改善するには

胃粘膜の荒れには、生活習慣やピロリ菌の影響も関係してきます。以下のことに気をつけることも大切です。

精神的ストレスを溜めない

胃炎になる人の多くは、神経質な傾向にあります。現代社会においてストレスを完全になくすことは難しいですが、友人と話して気分転換するなど、できるだけその日のうちに嫌なことは忘れるようにしましょう。

十分に睡眠をとる

ストレスを解消するためには睡眠が有効なため、毎日十分な睡眠時間を確保するようにしましょう。また、必要以上に神経を使わないように、精神を落ち着けることも大切になります。

便秘を解消する

便秘は、食欲不振を誘発したり、発がん性物質などの粘膜への作用を強める恐れがあるため、便秘気味の人は排便習慣を改善することが大切になります。
ただし、食物繊維の過剰摂取は胃に負担をかける原因となるため、適量に留めるようにしましょう。

ピロリ菌を除菌する

ピロリ菌に感染すると、ピロリ菌が産生する酵素ウレアーゼと胃の中の尿素が反応することによりアンモニアが発生するようになり、胃の粘膜が傷ついたり、免疫反応により胃の粘膜に炎症が起こることがあります。

胃炎が慢性化している人にはかなりの割合で、ピロリ菌への感染が見られるとされており、炎症が持続すると、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどが引き起こされることがあります。除菌することで慢性胃炎が半年ほどでなくなるとされているため、早急に除菌することが望まれます。

ヨーグルトは胃粘膜の修復に効果ある?

ヨーグルトに含まれている乳酸菌OLL2716株は、定期的に摂取することで胃粘膜に付着して防護カバーとしての役割を果たし、胃を健康に保つ効果があります。
また、胃の病気以外にも、解熱鎮痛剤による胃粘膜の荒れ、飲酒によるダメージ、ピロリ菌の増殖抑制などの効果が期待できるとされています。

おわりに:胃に負担をかける食生活や生活習慣の改善を

胃の中に食物が入ってくるとひだ状だった胃壁が伸びてガストリンというホルモンが分泌されるようになり、その刺激に反応して胃液が分泌され消化活動が開始されます。胃は、攻撃因子と防御因子のバランスが保たれることにより成り立っているため、そのバランスを崩す要因を避ける必要があります。胃に負担をかける食生活や生活習慣を改善して、胃を健康な状態に保つように心がけましょう。

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