背中の痛みの原因は胃の調子が悪いから?どんな病気の可能性がある?

2018/9/27

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

背中の痛みに胃の調子が関わっているというのは本当なのでしょうか?また、背中の痛みがある場合どのような病気が考えられるのでしょうか?背中の痛みの原因や病気について解説していきます。

背中の痛みの原因が胃の不調ってことがあるの?

胃・十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸が胃液によって粘膜が傷つき、えぐられたような状態になる病気です。主な症状として、上腹部痛、腹部の不快感、胸焼け、吐き気などが起こり、背中に痛みを感じることもあります。特に空腹時に悪化する傾向があります。
また、逆流性食道炎になると、胸焼け、酸っぱい液体が口まで上がってくる、胸が締め付けられるように痛む、背中やみぞおちの痛み、咳などの症状が起こります。

胃・十二指腸潰瘍ってどんな病気?

胃潰瘍
自律神経には、「防御因子」と呼ばれる粘膜を保護するもの(粘膜を覆う粘液、粘膜自体の抵抗力、粘膜内の血液循環など)と、「攻撃因子」と呼ばれる粘膜を傷つけるもの(胃酸やペプシンなどの消化液、喫煙、アルコール、ヘリコバクター・ピロリ菌感染など)のバランスを調節する働きがあります。
ストレスなどにより自律神経のバランスが乱れると、防御因子の作用が低下し、攻撃因子の作用が強まることにより潰瘍が発生します。
十二指腸潰瘍
ストレスなどが原因で胃や十二指腸の粘膜の攻撃と防御のバランスが崩れることにより、その部分が胃酸にさらされて潰瘍が起こります。
十二指腸内の酸性が強くなっているときに潰瘍が発生することが多く、特に胃に近い場所にある十二指腸球部に起こりやすいとされています。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍になると、以下のような症状が現れます。

腹痛
胃・十二指腸潰瘍で見られる症状の中でも、腹痛は最も特徴的な症状で、胃潰瘍ではみぞおち付近、十二指腸潰瘍では右上腹部や背中に痛みが起こることがあります。
特に、空腹時に痛みが発生することが多く、食べて胃液が薄まることにより痛みが治まる傾向があります。圧迫感や鈍痛、疼痛など痛み方は人により異なりますが、痛みの程度と潰瘍の程度は必ずしも一致するわけではありません。
胸焼け
胃液が食道を逆流することにより胸焼けが起こります。
出血(吐血、下血)
潰瘍の中には出血を伴うものもあり、出血量が多くなると、悪心に伴い黒褐色の血を吐いたり(吐血)、黒いタール様の便が出ることがあります(下血、タール便)。
悪心、嘔吐
胃の出口(幽門部)や十二指腸に潰瘍が頻繁に起こることにより、胃粘膜がひきつれて狭まると(幽門狭窄)、食物が胃液と一緒に胃に貯留するようになり、悪心や嘔吐が引き起こされます。

治療方法

ピロリ菌除菌

胃癌発症にはピロリ菌の慢性感染が深く関わっていると考えられており、1週間(1日2回)プロトンポンプ阻害薬と2種類の抗菌薬を服用する除菌治療が推奨されています。この治療法により約85%の確率で除菌が可能だとされていますが、抗菌薬による副作用で、軟便、下痢、味覚異常などが起こることがあります。

安静療法

治療を行う上で、ストレスを減らして心身を安静に保つことが最も重要となります。
またタバコは攻撃因子となるため、喫煙は避ける必要があります。

食事療法

胃の働きや胃液の分泌を活発にさせないためには、香辛料、コーヒー、炭酸飲料、熱いもの、冷たいもの、酸味の強いもの、多量の肉類、高脂肪食、大量の飲酒などの胃に負担をかける食品や飲料は避けるようにしましょう。
胃液の中和作用が強い豆腐、治癒を促進する作用のあるタンパクを含む白身魚、胃の粘膜を保護する作用のある牛乳などがおすすめです。

また、食事は抜かずに3食規則正しく食べることが大切で、1回の食事で摂る量を減らして食事の回数を増やすのもいいでしょう。

手術療法

現在は薬物治療の進歩に伴い、手術が行われることが少なくなりましたが、止血が困難な出血、穿孔性潰瘍、幽門狭窄などには内視鏡を使用した治療が行われることがあります。

逆流性食道炎ってどんな病気?

通常、食道から胃に移行する場所は、括約筋の働きによって食物が通るとき以外は閉じており、胃酸の逆流を防いでいるのですが、老化や手術などによりこの機能が低下すると胃酸や胃の内容物が食道に逆流するようになります。

健康な人であれば逆流が起こっても、食道の蠕動運動によって逆流物を押し戻せますが、蠕動運動が正常に機能しないと、食道粘膜が長時間強い酸性の胃液に留まることになります。

食道には粘液が存在しないため酸に弱く、粘膜に炎症が起こりただれた状態になってしまいます。このような状態を逆流性食道炎と言い、主に以下のような原因で起こるといわれています

  • 肉や脂肪分の多い食生活により胃酸の分泌が活発になる
  • 肥満による腹圧で胃酸が上がってきやすくなる
  • 食道や横隔膜を通過する部分の靭帯や筋肉がゆるむ食道裂孔ヘルニア

主な症状として胸焼けがあり、胸の中心部や胸骨の裏側が熱く焼けるように感じたり、酸っぱい水や苦い水が喉まで上がってくるように感じる人もいます。
その他にも、胸のあたりがしみる、食べ物がつかえる、飲み込みにくい、げっぷとともに胃酸が逆流する、横になると症状が起こりやすい、などの症状を伴うことがあります。

治療方法

生活様式の改善

軽度のうちは、以下のような生活習慣の改善に取り組み、様子を見ることになります。

  • 消化に時間のかかる脂肪の多い食物は控える。
  • アルコール、コーヒー、香辛料、酸っぱいものなどの、胃液の分泌を活発にする食べ物や飲み物の摂り過ぎは避ける。
  • 胃酸の分泌を増やす原因となるタバコは控える。
  • 暴飲暴食は避け、腹八分目を心がける。
  • 肥満や便秘の解消。
  • 胃液の分泌を活発にするため、間食は避ける。
  • 食後にすぐに横になるのは避け、就寝2時間前までに夕食を済ませるようにする。
  • 寝るときは右を下、または上半身が少し高くなるようにして横になる。
  • お腹を締め付けて腹圧を上昇させる原因となるベルト、帯、ガードルなどは避ける。
  • 前屈みになると胃液や食道への逆流が起こりやすいため、なるべく避ける。

また、症状にあわせて酸分泌抑制剤、消化管運動賦活剤などが処方されます。

酸分泌抑制剤
胃酸を分泌する胃粘膜壁細胞の段階でブロックする効果のあるプロトンポンプ阻害剤は、酸分泌抑制剤の中で最も効果的とされる薬剤で、速やかに胸焼けなどの症状を回復させることができます。
消化管運動賦活剤
食道や胃の働きを調節する効果のある消化管運動賦活剤は、酸分泌抑制剤のサポートを行う薬として使用されます。

背中の痛みが胃の不調じゃないことも…

筋肉痛でもないのにお腹から背中にかけて変な痛みを感じるというような場合は、膵臓の病気の可能性があります。膵臓は15cmほどの大きさのバナナ型の臓器で、胃の裏側に位置していて、腹部から背中にかけて痛みが発生することがあります。
膵臓の病気として、主なものに以下のものが挙げられますが、一般の方が自己判断できるものではありませんので、腹部や背中の痛み、違和感などが持続する場合は、一度医療機関を受診しましょう

膵臓の病気

急性膵炎

急性膵炎とは、何らかの原因により急性膵炎膵液が膵臓自体を消化してしまうようになる病気で、腹部から背中にかけて起こる激痛、吐き気、嘔吐などの症状が起こります。
男性に多く見られる病気で、アルコールや脂っこいものの摂り過ぎなどが主な原因とされており、軽症の場合は絶食・絶飲を行うことにより軽快しますが、重症の場合は命に関わることもあります。

膵臓がん

初期の状態では、腹部の重苦しさ、便通の不安定、食欲不振などの症状が見られることがありますが、膵臓がん特有の目立った症状というものはないため、早期発見が遅れる傾向にあります。病態が進行すると、以下のような症状が起こります。

上腹部痛
食事の有無に関わらず、激しい背中の痛みや夜中の痛みが持続します。
また、膵臓の周囲には多くの神経が分布しているため、がんが浸潤することにより神経が侵され、痛みが増幅します。
体重減少
がん細胞の増殖により悪液質(栄養不良が原因で痩せて衰弱した状態)、十二指腸への浸潤、消化酵素の分泌低下、食欲減退などの病態が進行すると、さらに体重が減少していきます。
黄疸
膵臓がんが大きくなることに伴い胆管が詰まるようになると、肝臓内にある体内の老廃物を卵管を経由して腸に運搬・排出する機能が正常に働かなくなり、胆汁中に存在するビリルビン(赤血球の老廃物)が体内に蓄積していき、黄疸が出現するようになります(閉塞性黄疸)。

おわりに:背中の痛みが続く場合は医療機関の受診を

背中の痛みがある場合は、胃・十二指腸潰瘍や逆流性食道炎の可能性があります。また、急性膵炎や膵臓がんなどの膵臓の病気の可能性もあるため、腹部や背中の痛み、違和感などが持続する場合は医療機関で診察を受けましょう。

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