記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/9/30
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠中の女性の体と心には、さまざまな変化がみられます。これらの変化にともない、ほとんどの妊婦がさまざまなトラブルを経験しますが、周囲にそのつらさを理解してもらえず、人知れず悩む人も少なくありません。
ここでは、妊娠中の女性が経験するマイナートラブルについて、時期に合わせたさまざまなケースをご紹介していきます。
おなかに子供を宿してから出産するまで、妊娠中は幸せいっぱいの期間です。ところが、初めて体験する体やホルモンバランスなどの変化によって、実はさまざまな不快症状(マイナートラブル)に悩まされる不安定な期間でもあります。たとえば、多くの人が経験する妊娠初期のつわりなどは、マイナートラブルのなかでも、もっとも代表的なものではないでしょうか。
妊娠中の女性の体の中では、赤ちゃんの成長に合わせて、めまぐるしい変化が起こっています。この変化に体と心がついていけず、体が熱っぽくなったり、肌荒れをしたり、便秘になったりと、さまざまなマイナートラブルが起こるのです。しかし、妊娠というダイナミックなホルモンの変動に心身が追いつかず不調になるのは、ある意味、当然のことかもしれません。
妊娠初期から出産に至るまで、女性は常に何らかの不快症状に悩まされることとなります。したがって、同じマイナートラブルでも、妊娠初期、中期、後期によって、その症状はさまざまです。
以下、それぞれの時期に合わせた症状について、詳しく見ていきましょう。
見た目にほとんど変化がないため、周囲にはわからない不調が多い時期です。そんな妊娠初期にみられるマイナートラブルには、どのようなものがあるのでしょうか。
あまりの眠気に日常生活がままならない人も多く、「眠りづわり」という言葉があるほどです。車の運転などは、できるだけ避けるようにしてください。
赤ちゃんに必要な血液が増えること、また、ホルモンバランスの変化で自律神経が乱れることなどから、立ちくらみやめまいの症状を訴える人が多くいます。鉄欠乏性貧血の可能性もあるため、注意が必要です。
プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌により、ちょっとしたことでも疲れやすくなったり、倦怠感を感じることがあります。
同じく、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌により、胃や腸の運動が鈍くなるため、便秘を起こしやすいという傾向がみられます。ストレスも、原因の一つです。
妊娠中、手足のむくみに悩まされたという人が多くいます。これは、血液量の増加とエストロゲン(卵胞ホルモン)によるもので、手や足を指で押すと跡が残るほどです。
つわりも落ち着き、いわゆる安定期と呼ばれる時期に入りますが、赤ちゃんの体が大きくなるだけでなく、動きも出てくる頃です。そんな妊娠中期にみられるマイナートラブルには、どのようなものがあるのでしょうか。
疲労や睡眠不足から、頭痛を訴える人が多くいます。普通の生活をするだけでも体に負担がかかっていることをよく自覚し、疲労を感じたらすぐに体を休ませましょう。
ホルモンバランスの変化、そして乳房が大きくなることで、肩こりも多くみられます。締め付けの少ないマタニティブラを身につける、半身浴で全身を温めるなどすると、血流が良くなって、肩こりが改善します。
妊娠後期に多くみられる腰痛ですが、お腹が大きくなる妊娠中期に悩まされる人もいます。大きなお腹を支えようと、姿勢が反り返っていることが原因なので、姿勢を正すことで解消されるでしょう。また、腰巻きやホッカイロで腰回りを温めて、血流をよくするよう心がけてください。
妊娠初期に治まることの多いつわりですが、大きくなったお腹が胃を圧迫することなどから、妊娠中期に吐き気が再発することがあります。胸焼けやおもたれを伴うことも多く、症状がひどい場合には、点滴での栄養補給が必要になるケースもあります。
血流量が増えることで心臓に負担がかかり、動悸が起きやすくなります。一般的には安静にすることが大切ですが、お腹の張り止めの薬を服用している場合は副作用の可能性もあります。心当たりのある方は、医師に相談してみましょう。
胎盤から大量に分泌されるホルモンの影響で、メラニン色素が増えます。このためシミが増えたり、乳首などが黒ずんだりしますが、産後には自然に改善されるため、心配しすぎないでも大丈夫です。
お腹が大きくなるにつれて、おへその上下に茶色がかった線が浮き上がることがあります。これを妊娠線、あるいは正中線などと呼びます。気になる方は、専用のローションやクリームを使って対処しましょう。
妊娠後期(妊娠末期)には、胎児の動きがもっとも活発になり、お腹もますます大きくなるため、動くことすらしんどいと感じる人も少なくありません。そんな妊娠後期にみられるマイナートラブルには、どのようなものがあるのでしょうか。
妊娠後期になると、お腹の大きさで仰向けに寝ると苦しく感じることがあります。このため、不眠症になる人がいます。クッションや抱き枕、またリラックス効果のあるアロマなどを使用し、自分なりにリラックスするコツをつかむようにしてください。
妊娠によるマイナートラブルで、意外に多いのが、夜間などのこむら返り(足がつること)です。これは、運動量の少なさが招く血行不良、またカルシウム不足、水分不足などが原因となって起こります。
出産に向けて赤ちゃんの頭が下がってくることで、恥骨や尾てい骨に痛みを感じることがあります。適度なストレッチなどで血行を良くすると、症状が軽くなります。
大きくなった子宮が膀胱を圧迫することにより、頻尿や尿漏れといった症状が起こります。水分を控えることはリスクが伴うため、生理用ナプキンや尿漏れパッドで対処するようにしてください。
静脈の流れが滞っている部分に血液が溜まり、コブのように膨らむことがあります。ふくらはぎに見られることが多いですが、太ももや外陰部、肛門の内部にできることもあります。特別な治療をすることはありませんが、気になるようであれば、医師に相談してみましょう。
妊娠中期からみられる腰痛やむくみといった症状が、ますます強くなってくるかもしれません。いずれもマッサージが有効ですので、入浴後などに優しくマッサージをしてみましょう。ただし、腰痛は椎間板ヘルニアの原因となる可能性もあるため、早めの対処が必要となります。
胎動による刺激で子宮が収縮するため、お腹の張りを感じる人が多くなってきます。張る場所や感じ方には個人差がありますが、この時期には出産の予行練習として、不規則な張りが起こることもあります。
先述した通り、妊娠中のマイナートラブルにはさまざまなものがあります。しかし、実は産後にもマイナートラブルがあることを忘れてはいけません。
多くの人が経験する産後のマイナートラブルとして、便秘と尿漏れがあります。便秘は、会陰裂傷の縫合などに痛みなどにより、いきみにくくなること、また赤ちゃんの世話で排泄のタイミングを逃してしまうことなどから起こります。十分な水分を摂り、医師に処方された薬を飲むようにしてください。
尿漏れは、妊娠と出産で骨盤底筋が緩んでしまうために起こる症状です。尿意を感じなくても定期的に排尿をしたり、骨盤底筋を引き締めることによって改善されるでしょう。また、重いものを持ち上げるなどの作業は、なるべく避けるようにしてください。
つわりがひどくて何も食べられなかったという人もいれば、食欲が増して困ってしまったという人もいます。つまり、マイナートラブルは人それぞれです。「ほかのママと違うかも?」などと他人と比べずに、妊娠中だけだと割り切って、できるだけ冷静に対処くださいね。
この記事の続きはこちら