記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/1
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
静脈の一部が膨らみ、コブのような状態になってしまう静脈瘤(じょうみゃくりゅう)。
基本的には良性ですが、脳や心臓、手足などさまざまな部位の静脈に発生します。
今回は静脈瘤のうち、胃や食道にできる食道胃静脈瘤(しょくどういじょうみゃくりゅう)について、原因や症状・治療法を解説していきます。
食道胃静脈瘤ができる原因のほとんどは、肝硬変に伴う血液の逆流によるものです。
通常、消化器官で吸収された栄養成分は血管を通って肝臓に運ばれて処理されますが、肝硬変になると栄養成分を含んだ血液の一部しか、肝臓が受け取れなくなってしまいます。
すると、肝臓に流れ込むはずだった血液は押し戻されて逆流し、近くにあって流れ込みやすい胃や食道の静脈に流れ込んでいきます。
このような肝臓からの血液逆流を、門脈圧亢進(もんみゃくあつこうしん)と呼びます。
肝臓から逆流してきた血液により、胃や食道の静脈内の圧力が高まると血管が太くなり、破れやすく脆いコブが発生して静脈瘤となるのです。
このように、胃や食道にできる静脈瘤の原因となる疾患は肝硬変が最も多いですが、他にもウイルス性肝炎、自己免疫疾患、膵炎、肝がん、膵がんなどでも発症します。
もし、胃や食道にできた静脈瘤が破裂した場合には吐血を伴う大量の出血を起こし、最悪の場合は出血多量で死に至る可能性もあります。
胃や食道に静脈瘤ができていても、ほとんどの人に自覚症状はありません。
食事も普通にできますし、食べ物を飲み込むときにのどに違和感やつかえを感じたり、食後に胃痛や不快感も特にないといわれています。
このため、静脈瘤が大きくなって破裂して出血・吐血してから初めて、患者本人が食道胃静脈瘤を自覚するケースがほとんどなのです。
また、食道胃静脈瘤の患者の多くは肝臓疾患を患っているため、血小板が減少して止血能力が低下しているケースも多いです。
ひとたび出血してしまうと大量出血につながる可能性が高いため、出血する前に何らかの処置を取ることが推奨されています。
食道胃静脈瘤の治療法には、大きく分けて内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS)と内視鏡的静脈瘤結紮療法(EVL)の2つがあります。
上記の内、静脈瘤の硬化術は破裂・出血前の予防的措置として、静脈瘤の結索術は予防と出血後の緊急措置としても、幅広く行われています。どちらの治療方法も、食道胃静脈瘤の破裂・大量出血による死亡を防ぐのに非常に効果的ですが、結索術の方がやや再発率が高い傾向が見られます。
また、静脈瘤の大きさや状態によっては、上記の他にも手術療法や放射線療法、薬物投与による治療が行われるケースもあります。詳しくは専門家である医師に質問・相談してください。
肝臓や膵臓の疾患によって血液が逆流し、胃や食道の静脈内の圧力が高まると、静脈瘤ができることがあります。静脈瘤ができても自覚症状はありませんが、血管は太く脆くなってしまうため、静脈瘤が大きくなると少しの刺激で破裂・大量出血し、命にかかわる事態に陥るケースもあるといわれています。胃や食道に静脈瘤がみつかったら、破裂する前に治療を進めていきましょう。
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