記事監修医師
川崎たにぐち皮膚科、院長
アトピー性皮膚炎では、発疹やかゆみなどさまざまな皮膚トラブルが起こります。では、このアトピーによる肌荒れを緩和するには、どんなことに気をつければいいのでしょうか?以降で解説していきます。
アトピー性皮膚炎は、強いかゆみや発疹が出る皮膚の病気です。首、肘、ひざ、そして顔などにもあらわれやすく、全身に出るケースもあります。患者は多く、赤ちゃんから大学生まで、10人に1人ぐらいはアトピーに悩んでいるともいわれているのです。
このアトピー性皮膚炎は、実はバリア機能の低下が原因の一つとなっています。アトピーに悩む方の皮膚は、バリア機能が弱まっており、水分が減少しとても乾燥しています。この乾燥によって、外部刺激を受けやすくなり、かゆみを感じてしまうのです。
そのため、アトピーの悪化を食い止めるには、皮膚に潤いを与え、バリア機能を正常にすることが大切となります。保湿することで、皮膚のバリア機能に関わる三大保湿因子(天然保湿因子・セラミドなどの角質細胞間脂質・皮脂)が正常な状態となり、外部の刺激から肌を守りやすくなるのです。
アトピーの肌荒れを改善するためには、皮膚を清潔に保つことと保湿が重要です。しかし、洗浄やお手入れの方法にしっかりと気を配らないと、肌を傷つけることにもなりかねません。
まず入浴のときは、ボディソープなどをしっかりと泡立て、その泡で体を洗います。液体や固形の状態で、直接皮膚にこすりつけることはしないでください。しっかりしたキメの細かい泡、そして指の腹を使って洗うのが基本で、目の粗いスポンジや、硬いタオルの使用も避けましょう。
洗い流すときは、石鹸が身体に付着したままにならないよう、ていねいにすすぎます。もしも石鹸選びに迷ったときは、低刺激なだけでなく、洗い流しやすいもの、抗カビ成分が配合されたものなどがおすすめです。医師のアドバイスを聞きながら選んでください。高温のお湯に長く浸からないよう注意し、湯上りは、柔らかいタオルで包み、抑えるように水分をふき取ります。
タオルで体をふいた後は、できるだけ早く保湿剤を塗って乾燥を防ぎます。膝裏など、シワがあるところは、皮膚をのばして丁寧に塗り込みましょう。症状がない部分もしっかりと保湿し、バリア機能を弱めないことが予防につながります。自分の肌との相性、季節などにあわせて、使用感の良い保湿剤を選んでください。
ついやってしまいがちなアトピーの状態を悪化させる行為が、かゆみを我慢できずに爪でひっかいてしまうことです。保湿剤を塗る、冷やす、小さな子供の場合は爪を切ってあげるなどの処置で、皮膚を傷つけないようにしましょう。好きなことをして、気を紛らわせるのも有効です。
ほかにも、皮膚を清潔に保つために、タオルでこまめに汗をふいたり、運動した後などはシャワーを浴びたりすることも大切です。しかし、石鹸の使い過ぎは皮膚に負担を与えるため、1日1回までにしましょう。部屋をこまめに掃除する、洋服・寝具の素材にも気を配ってしっかり洗濯することなども心がけ、清潔な環境を整えてください。
アトピー性皮膚炎は、強いかゆみや発疹が出る皮膚の病気です。アトピーに悩む方の皮膚は、バリア機能が弱まっており、水分も減少しています。そのため、アトピーの悪化を食い止めるには、汗や汚れなどの外部刺激を遠ざけ、皮膚に潤いを与えることが大切です。入浴やお手入れの方法、日ごろの衛生環境などに気を配りましょう。
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