記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/10/14
記事監修医師
前田 裕斗 先生
タイミング法で不妊治療を進めていくときに、クロミッド®という薬が処方されることがあります。排卵を促す薬で長く使われている薬ではありますが、副作用のリスクはあるのでしょうか。
この記事では、クロミッド®の効果と副作用について紹介しています。ベビ待ちの方はぜひ参考にしてください。
不妊治療について調べたり、実際に不妊治療を受け始めると「クロミッド®」という薬の名前を目にすることがあると思います。クロミッド®は排卵を誘発する薬で、クロミフェンクエン酸塩を主成分としています。
不妊治療には、排卵日に合わせて性交をする「タイミング法」という治療方法があります。クロミッド®は、排卵日がずれやすく性交のタイミングがとりにくいときや、効果がなかなか得られないときに処方されることがあります。
また、クロミッド®は直接卵胞を育てるのではなく、卵胞を育てるためのエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌を促進し卵子の成熟を助ける薬でもあります。そのため、正常に排卵をしている人についても、治療の方針によって処方されることがあります。
クロミッド®の錠剤は月経が始まって5日めから飲み始めて5日間服用すると、その後1週間〜10日ほどで排卵が起こります。つまり、月経開始後、約2週間〜3週間後に排卵するということになります。
卵子は卵胞という卵子のもとになる細胞が、基本的には毎月1つずつ成熟して卵子になり、排卵をされています。クロミッド®は卵胞の成熟を助ける薬のため、飲み始める時期によって複数の卵胞の成熟をうながしてしまいます。そのため、患者さんの排卵の成熟スピードや、目的に応じて服用開始日が指定されることになります。
ただ、体外受精や顕微鏡受精のために採卵を行いたいというときはよいのですが、タイミング法の治療中に一度に複数の卵子が排卵されると、双子や三つ子など多胎(たたい)妊娠の可能性が高まります。勿論複数の生命を授かることは喜ばしいことでもありますが、一方で多胎妊娠では赤ちゃんや母体にリスクが高くなることは覚えておきましょう。
クロミッド®の重篤な副作用として頻度は少ないですが卵巣過剰刺激症候群(OHSS)があります。
OHSSは、多くの卵子が発育し、過剰にホルモンが分泌されることで卵巣の腫れや腹痛が起こり、また血管から大量の水分が漏れ出すことで脱水状態を引き起こす病態です。重症の場合は入院が必要になることもあります。
また、クロミッドには抗エストロゲン作用がありますので、連続で服用することで子宮内膜が薄くなったり、子宮頸管粘液が少なくなることがあります(子宮内膜は受精卵を受け取るベッドであり、子宮頸管粘液は受精卵を子宮まで運ぶために必要な粘液のことです)。そのほか、かゆみや発疹、吐き気、食欲不振などのほか、気分の落ち込みなどの症状があらわれる人もいます。
クロミッド®を処方されてから、使用前と比べて体の変化を感じるといったときは、主治医に相談をしてみましょう。
クロミッド®は、不妊治療に用いられる歴史ある薬です。質の良い卵子を育て、排卵を安定させる作用があり、不妊治療の内容や患者さんの状態などに合わせて服用開始日が指定されます。主治医の指示を受けて、適切な服用が必要です。メリットだけではなく、副作用のリスクがあるということも知っておくと良いでしょう。
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