記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/9 記事改定日: 2019/6/10
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「夏は元気に過ごせるのに、秋になると少しずつ元気がなくなってくる…」「肌寒い季節になると、なんかうつっぽくなる」という人は、実は少なくありません。今回はこの「秋うつ」について、症状の特徴や原因、対策をお伝えしていきます。
ゴールデンウィークを過ぎた頃からなんとなくやる気がなくなる、だるくなるといった「5月病」はよく知られた言葉ですが、5月だけでなく、9~10月といった秋にさしかかった時期も、なんとなく気分が落ち込む人が増える傾向にあります。これは俗にいう「秋うつ」の症状です。
「秋うつ」とは、医学的に「季節性感情障害(SAD)」と呼ばれるうつ病の一種です。SADでは、非季節性のうつと同じく以下のような症状が現れます。
秋うつは季節的な要因で発症するうつ状態のため、季節が移行すれば自然に治るのが基本ですが、そのまま一般的なうつ病へと進行するケースもあるといわれています。
非季節性のうつ病では、不眠などの睡眠障害や食欲低下の症状が特徴になりますが、秋うつを始めとしたSADでは日中強い眠気を感じて睡眠時間が長くなり、食欲も増す傾向にあります。
人間の脳内では、精神の安定を保つ働きをもつ「セロトニン」という神経伝達物質が分泌されているのですが、このセロトニンは日光に当たれば当たるほど分泌量が増えるという性質をもちます。そのため、夏と比べ日照時間が大幅に減少する秋になると、セロトニンの分泌量が減るためにうつっぽくなる人が増えるのではないかと考えられています。
また、秋になって日中と夜の寒暖差が大きくなったことも、秋うつの要因のひとつといわれています。急激な温度差は、体温調節を担う自律神経に負担をかけます。この自律神経には、心身をリラックスさせる作用のある副交感神経と、緊張状態を高める交感神経をコントロールする役割があるため、自律神経に負担がかかると精神が不安定になりやすくなると考えられているのです。
秋になると決まってうつっぽくなってしまうという方は、以下の対策を実践してみてください。
秋になっても精神を安定させるには、前述の「セロトニン」を増やす行動をすることが大切です。日照時間の短い秋は、なるべく外に出かけて日光を浴びるようにしましょう。日差しが見えない曇り空であっても、室内にいるよりはセロトニンが分泌されやすくなります。
特におすすめなのは朝の日光浴です。朝に日光浴をすると、セロトニンの分泌が活性化するだけでなく、体内時計がリセットされ、自律神経が整いやすくなります。ただし、長時間日光を浴びすぎるとかえってセロトニンが減少してしまうので、10〜15分を目安としてください。
トリプトファンはアミノ酸の一種で、セロトニンの材料になると考えられています。トリプトファンはバナナやアーモンド、豆乳、ごま、肉類などに含まれているので、これらの食べ物を秋には積極的に摂取しましょう。
ウォーキングや水泳などの有酸素運動を適度に行うと、うつ症状の改善につながることがわかっています。またなるべく毎日継続的に行うことで、睡眠時間や食欲も安定しやすくなるといわれています。
秋うつに限らず、うつ症状を長く放置すると知らず知らずのうちに症状が悪化して日常生活に支障が出たり、治療に時間がかかったりすることも少なくありません。
うつ症状はできるだけ早く専門医による治療を行うことが大切です。次のような症状が見られる場合には、うつを発症している可能性がありますので、医師に相談するようにしましょう。受診に適した診療科は心療内科や精神科ですが、受診に抵抗がある場合はまずはかかりつけの内科などに相談するのもよいでしょう。
「秋うつ」は、日照時間の短さによるセロトニンの減少や、急激な温度変化に伴う自律神経の乱れが発症原因と考えられています。秋は夏と違って外で過ごしやすい気候ではあるので、朝の散歩や運動を習慣に取り入れ、秋うつをうまく回避していきましょう。
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