記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/18
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
健康診断で肝臓を診察されたとき、嚢胞ができているといわれることがあります。なぜ、肝臓に嚢胞ができるのでしょうか?そして、嚢胞に害はないのでしょうか?また、肝嚢胞の治療はどのように行うのでしょうか?
嚢胞とは水分が溜まった丸い空洞のことを指し、肝臓の中に嚢胞ができている状態を肝嚢胞といいます。先天性・後天性の両方がありますが、通常、肝嚢胞といえば先天性の良性の肝嚢胞のことを指します。この良性の肝嚢胞は大きさ数cm程度のものが多く、無症状で病状が進行することもほとんどないため、治療の必要はありません。
しかし、直径8〜10cm以上と大きな嚢胞であった場合は、注意が必要です。周辺の臓器に対して圧迫症状を引き起こしたり、肝機能障害につながったりすることもあります。また、破裂したり出血したりして、感染などの合併症を引き起こすこともあります。こうした症状が出ている場合は、治療が必要です。症状が出ていないけれど嚢胞が大きいという場合は、定期的にCTやMRIによる検査を行い、さらに肥大化していないか確認する必要があります。
肝嚢胞の原因は、ほとんどが先天性による生まれつきの異常です。とはいえ、肝嚢胞そのものは一定の確率で現れるもので、かつ、身体機能に何らかの害を及ぼすものではないため、すぐに治療しなければならないものではありません。また、他の先天性異常と関連する症状でもありませんので、他の先天性異常が既にあったとしても、肝嚢胞を発症するとは限りません。
注意が必要なのは、何らかの外傷後にできた嚢胞や、炎症性疾患の後に水が溜まってできる貯留性嚢胞、嚢胞性腫瘍など、後天性の嚢胞の場合です。後天性の嚢胞の場合は、放置していると肥大化して周辺の臓器を圧迫したり、悪性腫瘍であったりする場合は転移することもあります。
また、エキノコックス症と呼ばれる虫卵による肝嚢胞では、嚢胞がだんだんと大きくなり、周辺臓器を圧迫したり、胆道閉塞や胆管炎を併発したりします。嚢胞がいくつもできる多包性の場合、肝腫大や肝機能障害のほか、腹痛や黄疸を引き起こし、重症化すると病巣部分の壊死などにつながることもあります。
肝嚢胞で治療が必要なケースは、悪性の嚢胞性腫瘍の場合や、嚢胞内に出血や感染を引き起こした場合です。また、嚢胞が巨大なために腹部に圧迫症状が強いという場合も治療の対象となります。原則として手術療法であり、嚢胞壁剥離切除術(嚢胞のみを取り除く)、部分肝切除術(嚢胞の発生している部分を肝臓の一部ごと取り除く)などが行われます。
肝嚢胞が小さい初期状態と呼ばれる状態の場合、内科的な治療を行うこともあります。肝臓に細い針を穿刺して溜まった液体を取り除き、必要に応じて薬液を注入する方法です。腫瘍性や炎症性など、病的意義がある場合はさらに検査を行い、原因に応じて治療を進めます。また、この段階では抗生物質を用いて治療を行うこともできることがあります。
感染症を起こしている場合、内視鏡手術などで該当部位を切除し、完治を目指します。また、症状が進んで肝臓が破裂してしまった場合は、肝臓を摘出します。前述のエキノコックス症の場合も、切除によって病変を摘出することが唯一の治療法です。早期発見して切除し、それ以上広がることがなければ予後は良好ですが、進行してからの切除は非常に困難です。
しかし、多くの肝嚢胞は良性の嚢胞であり、病状が進行する可能性は非常に低いため治療の必要はありません。エコー検査だけでは嚢胞か腫瘍かの判別が難しい場合、CTやMRIなどの検査をして診断する必要はありますが、良性の嚢胞と判断され、圧迫感や不快感などの症状がないのであれば、肥大傾向がないかどうかを定期的に検査するだけで構いません。
肝嚢胞は、その多くが先天性の良性の嚢胞であり、治療の必要はありません。とはいえ、まれに大きな嚢胞で周辺の臓器に圧迫感を引き起こしたり、出血や破裂によって感染症などにかかってしまったりすることがあります。
肝嚢胞の多くが無害とはいえ、経過観察を忘れず、異常があればすぐに医療機関で診察を受けましょう。
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