記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/17
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
肝臓は、体に入ったアルコールを代謝する、とても大切な役割を持っています。ここでは肝臓がアルコールを分解する仕組みはどのようになっているか、また、アルコールを飲み過ぎると体にどのような影響が出るのかについて、詳しく説明していきます。
肝臓は、主に「代謝」と「解毒」と「排泄」を司る臓器です。私たち人間の体は、食物からの栄養素をそのまま利用することはできません。そこで、肝臓は吸収された栄養素を利用しやすい物質にして貯蔵し、必要に応じて体に必要なエネルギーを作り出します。また、不要な物質を解毒したり排泄する、重要な働きも担っています。
口から入ったアルコールは、胃から約20%、小腸から約80%が吸収されて血液に溶け込み、そのまま肝臓に運ばれてアルコールの分解が始まります。肝臓内では、ADH(アルコール脱水素酵素)やMEOS(ミクロゾームエタノール酸化系)という物質により分解され、アセトアルデヒドという頭痛や動悸の原因となる物質に変化します。これが肝臓内にあるALDH(アルデヒド脱水素酵素)によって酢酸へと分解され、最終的には水と二酸化炭素になって、汗や尿、呼気により外へ排出されることになります。これが、肝臓がアルコールを代謝する仕組みです。
ところが、アルコールを大量に飲み続けると、肝臓では中性脂肪が蓄積してしまい、いわゆる脂肪肝になってしまいます。これを無視してさらにアルコールを長期間飲み続けると、肝硬変などの深刻な病気に陥る可能性もあります。
アルコールの飲み過ぎで肝臓が悪くなるという話は、皆さんもご存知の通りかと思います。しかし、肝臓は病気があっても痛みなどの自覚症状をともなわない臓器として有名であり、定期的な血液検査による肝機能検査を行うことが重要になってきます。このとき、注目される数値がγ-GTPです。
γ-GTPとは、ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼと呼ばれる酵素で、主に解毒に関係してきます。このγ-GTPの値が高いと、肝臓や胆管などに何かしらのトラブルが起きている可能性が高いとみなされますが、もっとも多いのは、アルコールの過剰摂取による肝障害です。つまり、アルコールを飲み過ぎることで「γ-GTP」の値が高くなるというわけです。
γ-GTPの正常値は男性で50国際単位(IU)以下、女性で32国際単位以下とされています。γ-GTPは比較的アルコールに短期的に反応するので、飲酒を一週間もやめれば下がり出すケースも少なくありません。一般的には、γ-GTPの値が100以下であれば、節酒あるいは禁酒することですぐに正常値にもどるとされています。
ただし、γ-GTPの値が100以上であれば注意が必要となります。アルコールの飲み過ぎで脂肪肝が進行している可能性が高いので、ただちにアルコールを控え、なるべく医療機関を受診するようにしてください。カロリーを摂りすぎないためのダイエット療法を基本とし、コレステロールが高い場合には薬物療法が行われるケースもあります。いずれにせよ、γ-GTPの上昇がみられるようであれば、生活習慣の改善が必要になることでしょう。
くり返しますが、γ-GTPの値や肝脂肪の状態を無視してアルコールを長期間飲み続けると、深刻な病気に陥る可能性があります。その中でもっとも多いのが、アルコール性肝炎と呼ばれるもので、普段から常習的にアルコールを摂取する人に多く発症する病気です。ちなみに、アルコール性肝炎とは飲酒による肝障害を総称したものです。
くれぐれも、「自分は肥満ではないから」と、自分には関係がないと思うのはやめましょう。なぜなら、外見は痩せていても肝臓には脂肪が蓄積されて炎症を起こしているケースが多くみられるからです。ちなみに、このアルコール性肝炎の患者が大量に飲酒をすると、命に関わる重篤な状態になる危険性があるばかりか、その状態を放置することで、肝硬変や肝臓がんに進展していく可能性も、決して少なくありません。
アルコール性肝炎の予防には、酒は適量を守り、常習飲酒や大量飲酒をしない、ということが何よりも大切です。もっとも効果的なのは、週2日以上の休肝日を設けることなので、ぜひ生活に取り入れてみるようにしましょう。毎日の飲酒が習慣化して、知らず知らずのうちにアルコールの量が増えている人は、要注意です。日頃から飲み過ぎに注意して、自分なりの適量をしっかりと守るようにしてください。
肝臓は再生能力に優れた、極めてタフな臓器です。症状が出てきたときには手遅れというケースも少なくありません。したがって、症状がみられない、太っていないという理由で、ついつい毎日の飲酒が習慣化している人は、かならず血液検査でγ-GTPの値を調べるようにしてください。また、アルコール性肝炎の予防のためにも、くれぐれも適量を心がけるようにしてください。
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