記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/22 記事改定日: 2020/9/21
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記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
肝臓病の検査などで実施されることのある「肝生検」。この肝生検とは、具体的にどんな検査で、麻酔や入院は必要になるのでしょうか?痛みはあるのか、合併症のリスクなど、詳しく解説していきます。
肝生検とは、肝臓の組織の一部を採取して顕微鏡などで観察をする検査です。肝生検をすることによって肝組織の構造や、肝損傷の具合について組織学的な情報を得ることができるため、さまざまな肝臓の疾患の原因や病態の把握・診断に用いられます。
また、肝移植後に肝臓に拒絶反応が出たりしていないかどうかを調べるためにも行います。
肝生検は肝臓にできた病気の組織を詳しく調べることで、その病気が何なのか確定診断を下すために行われる検査です。また、病気の重症度を評価することもできます。
具体的には次のような病気の診断や重症度評価に用いられます。
経皮的針生検で肝生検を受ける場合は、検査自体は20分前後で終了しますが、その後安静にする時間等もあるため全体として4~6時間ほどの時間を要します。
肝生検は後述する検査方法によって、入院や全身麻酔をする必要があります。そのため、検査前には血液検査やX線(レントゲン)の検査など手術前に行われる一般検査を受ける必要があります。また、検査時間などによっては食事の時間を制限されることもあります。
肝生検には局所麻酔で針生検のみを行う「経皮的針生検」と、全身麻酔をかけた状態で腹腔鏡下を用いて観察し、楔状生検(くさび状に肝組織を摂取)を行う「腹腔鏡下肝生検」、カテーテルを頸静脈に挿入して肝組織を採取する「経頸静脈的肝生検」に大別されます。
皮膚と肝臓の表面に局所麻酔を行い、超音波検査装置で肝臓の場所を確認しながら肝臓に専用の生検針を刺して、組織の一部を採取します。
全身麻酔を行った後、腹部に穴をあけて腹腔鏡を挿入し、腹腔鏡で肝臓の表面を観察しながら、その一部を止血しながら採取します。
カテーテルを頸静脈に挿入し、心臓の内部を通して、肝臓から出る肝静脈の1つに到達させ静脈の壁越しに針を肝臓に挿入して肝組織を採取します。重度の肝疾患の合併症による血液凝固異常がある方ではこの方法が勧められます。
肝生検を受けるにあたり、合併症についても知っておく必要があります。
経皮的肝生検は比較的安全な検査であるとされているものの、局所麻酔に伴う副作用(過敏性反応)として血圧低下、意識混濁、痙攣などが起こることがあります。
検査後では出血を起こす可能性があり、特に検査後15日間は出血を起こす可能性が高いとされています。他にも発熱、右上腹痛や右上腹部痛が派生したことによる右肩の痛み、一過性の肝機能障害、気胸などのリスクがあります。
腹腔鏡を挿入するために皮膚に穴をあけることから、創部のトラブル、気胸、麻酔による合併症のリスクがあります。
経頸静脈的肝生検は95%の確率で成功するといわれています。しかし、麻酔による合併症や、0.2%ほどの確率で肝被膜の穿刺部からの出血が起こるケースもあります。
肝生検時は、針を刺した際に身体の奥のあたりに圧迫されたような鈍痛を感じる可能性があります。しかし、検査の前に麻酔をかけるため、麻酔薬を注射針で刺すときの痛み以外を感じずに検査が終わることもあります。
なお、腹腔鏡下肝生検を受けるという方は、傷が他の検査方法よりも大きく皮膚表面に作ってしまうため、痛みがさらに感じやすくなることがあります。
検査前には痛み止めを使用することが多いのですが、検査後に針を刺した部分など痛みを感じる場合には、痛み止めを医師から処方してもらうことができます。
ただ、強い痛みが身体の奥の方でずっと続いているという場合には、穿刺に伴う胆汁の漏れ、胆管炎、他の臓器の損傷など重篤な状態になっている可能性も否定できません。
そのため、痛みは我慢せずに医師や看護師に必ず伝えるようにすると良いでしょう。
肝臓の組織の一部を採取し、顕微鏡などで観察をする検査である肝生検。肝生検には局所麻酔で針生検のみを行う経皮的針生検、全身麻酔をかけた状態で腹腔鏡下を用いて観察し、楔状生検を行う腹腔鏡下肝生検、カテーテルを頸静脈に挿入して肝組織を採取する経頸静脈的肝生検があります。
検査時間や合併症リスクも違いますので、疑問や不安がある場合は医師に相談しましょう。
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