脂肪肝になっていると、痛みなどの症状が出てくるの?診断方法は?

2018/10/18

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

肝臓の働きは、人の体にとってとても重要です。アルコールの摂り過ぎは肝臓に悪いことで知られていますが、これは肝臓の働きである解毒作用の低下を引き起こし、脂肪肝へとつながっていきます。
今回は、脂肪肝になったときに起こる症状や診断方法などについて解説していきます。

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脂肪肝ってどんな状態?

肝臓は、体に必要な栄養素を作り出す代謝、体にとって有害な物質を無害なものに作り替える解毒、脂肪を吸収しやすくするための胆汁の生成、という3つの働きを昼夜休みなく行っています。

今回お話しする脂肪肝は、この肝臓の働きがうまく行われず、脂肪が肝臓に蓄積する病気です。脂肪肝は年々増加傾向にあり、さまざまな肝臓病の中でも最も多い病気といわれています。

本来であれば、食事で摂った脂質は小腸で吸収され、肝臓で脂肪酸に分解され、糖質はブドウ糖に分解されて、小腸から吸収された後、肝臓で中性脂肪に変化します。

摂取したエネルギーがバランスよく消費されていれば問題はありませんが、脂質や糖質を摂り過ぎて、消費しきれなかった脂肪酸やブドウ糖は中性脂肪として肝臓に蓄積されます。とくに、アルコールの摂り過ぎは脂肪肝の代表的な原因と考えられています。これはアルコールを分解するときに、中性脂肪が合成されやすくなるからです。

ただ、最近ではアルコールを摂らない人も脂肪肝になることが判明しており、アルコールが原因でない脂肪肝は、非アルコール性脂肪性肝疾患と呼ばれます。非アルコール性脂肪性肝疾患は肥満が原因となって、肝臓で脂肪酸の燃焼がスムーズに行われず、肝臓に中性脂肪が貯まった状態です。

脂肪肝になると、痛みや吐き気などの症状はある?

従来、脂肪肝は肝臓に脂肪が蓄積するだけであまり心配のない病気だと考えられていましたが、脂肪肝の中には進行して慢性肝炎(脂肪性肝炎)となり、肝硬変や肝臓癌へ進行するものがあるということがわかりました。狭心症や心筋梗塞など心疾患の合併率も高く、放置してもよい病気ではありません。

脂肪肝になっていても自覚症状は乏しく、目に見えて体に変化が起こるわけではありません。しかし、脂肪肝になると血液がドロドロになり、血流が悪くなることで全身に酸素や栄養がうまく行き渡らず、疲れを感じやすくなります。また、肩が凝ったり頭がぼーっとしたりすることもあります。

このほか、脂肪肝によって肝臓の働きが阻害されると、必要なエネルギーが体内で作られず、体を動かすことが難しくなっていきます。食欲の低下やむくみ、お酒を飲んでも美味しく感じなくなったり、お腹が張っているような感じがしたりする場合も、肝機能が低下しているサインの可能性があります。

脂肪肝かどうかはどうすればわかる?

脂肪肝の診断は、腹部超音波検査や腹部CTなどの画像検査や血液検査によって行われます。
必要に応じて肝生検(肝臓の一部を採取)を行い、顕微鏡で詳しく調べて、肝硬変や肝がんへ進行しやすいかどうかを診断するケースもあります。

画像検査

脂肪肝になると肝臓が白く見えるようになります。腹部超音波検査ではこのような画像のコントラストを診ながら診断します。

また、腹部CT検査では脂肪の付着によってCT値(CTの画像濃度値)が低下するので、その値をもとに診断していきます。

画像検査は肝臓に付着した過剰な脂肪を診ることはできますが、炎症や線維化の有無については診断が難しくなるため、合わせて血液検査や肝生検を行います。

血液検査

脂肪肝になると、ALT(GPT)とAST(GOT)の値が50~100前後に上昇することが多く、γ-GTPやコリンエステラーゼなどの項目も高くなります。これらの項目は、本来肝臓や胆管で作られる酵素の値ですが、脂肪肝によって肝細胞が壊れると血液中に漏れ出します。

血液検査では漏れ出した酵素などの値を検査することになりますが、血液検査で異常がなくても、画像検査によって脂肪肝が認められる場合もあります。

肝生検

肝生検は、まず局所麻酔で痛みを抑えてから、長い中空針を皮膚越しに刺し入れて、直接肝組織片を採取して顕微鏡で調べる方法です。
脂肪肝の原因がアルコールか他の要因によるものか、重症度などを判定するのに役立ちます。

おわりに:脂肪肝は自覚症状が乏しく、知らぬ間に重症化する可能性も

従来、あまり重要視されていなかった脂肪肝ですが、この病気によって生命が脅かされる可能性もあります。しかし、脂肪肝になっているという自覚症状を感じられることは少なく、気づいたときには重症化しているケースも珍しくはありません。脂肪肝の主な原因であるアルコールの摂り過ぎや肥満に注意して、定期的に健康診断を受けましょう。

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