小腸の内視鏡検査って昔は難しかったの?今はどんな方法でやってる?

2018/10/24

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

病気になっても自覚症状があらわれにくい臓器を「沈黙の臓器」と呼ぶことがありますが、小腸は「暗黒の臓器」と呼ばれていたことを知っていますか? その由来は、小腸の内視鏡検査の歴史にあるようです。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

昔は小腸の検査が難しかったって本当?

小腸は長さ6~7mほどの管のかたちをしていて、ぐねぐねと曲がりくねっています。小腸は伸びたり縮んだり、蠕動運動を活発に行いながら、食べ物や消化液を胃へ送りだします。

こういった入り組んだ構造を持つために、小腸の検査や病気の発見は難しく「暗黒の臓器」と呼ばれてきました。胃や大腸などの検査では新しい技術が開発される一方で、小腸の検査技術の進歩は比較的遅かったのです。

ところが近年では小型のカプセル内視鏡やバルーン内視鏡が登場し、小腸内部をより精密に検査できるようになりました。

小腸の内視鏡って2種類あるの?

内視鏡検査は、先端に高性能カメラが付いたチューブを体内に挿入し、臓器の内部の状況を映像で捉えます。この技術により、リアルタイムでの観察と診断を可能にしました。

例えば「胃カメラ」は、小型カメラを付けた管を体内に挿入し、胃の中の写真を撮る内視鏡検査です。検査の後に写真の現像を行わなくてはいけないため、診断に時間がかかる、臓器の様子をリアルタイム観察できないなど、内視鏡とはまったく異なる検査方法です。

小腸の内視鏡は代表的なものに「カプセル内視鏡」「バルーン内視鏡」があります。

カプセル内視鏡

特徴
小型カメラを内蔵したカプセル型の内視鏡。大きさは内服薬やサプリメントよりやや大きいくらいで、水と一緒に口から飲み込んで体内へ入れます。1秒間に2枚のペースで画像を撮影し、体外にデータを送信します。データは動画として解析され、診断に利用されます。ただし小腸にたまった内容物の影響を受ける場合があります。
検査の流れ
検査時間は7~8時間ほどが目安です。検査前日の夕食は午後9時までに済ませます。当日は飲食は控えますが、検査を開始して2時間ほど経ったら水は摂取可能です。4時間経つと軽食をとることができます。そのほかの日常生活は通常通り送ることができます。カプセル内視鏡は小腸の蠕動運動によって移動し、やがて肛門から自然排泄されますが、ごくまれに内視鏡や外科手術での回収が必要な場合があります。
検査に向かない人
消化管がとても狭い、飲み込みに問題がある、腸閉塞の既往がある、癒着がみられる、腹部に放射能をあてたことがある、ペースメーカーを使用している、妊娠の可能性がある人は、基本的に検査を受けることができません。

バルーン内視鏡

特徴
長さが約2mあるスコープ(内視鏡)とバルーン(風船)を付けた内視鏡です。従来の検査やカプセル内視鏡との大きな違いは、腸管を固定して、小腸全体を撮影できる点です。口からも肛門からも挿入でき、小腸の動きを固定して折りたたむようにしながら奥へと進みます。
「ダブルバルーン内視鏡」と「シングルバルーン内視鏡」の二種類があり、バルーンが二か所に付いているものがダブルバルーン内視鏡です。
検査の流れ
検査時間は1~2時間で個人差があります。基本的に入院を伴い、検査前日の午後9時以降は絶食です。当日はベッドに横になり、麻酔をしてから検査を始めます。問題がなければ検査後は食事可能です。
医師が手元のコントローラーでカメラを動かしながら観察します。異常が見つかった場合、出血箇所への止血、ポリープの切除などの治療や、組織の採取などの処置が可能です。バルーン内視鏡検査で腫瘍やクローン病、腸結核などを発見することができます。まれに疼痛や出血、急性膵炎などの合併症を起こすことがあります。
検査に向かない人
全身状態に不良がみられる、消化管に穴があいている、呼吸器疾患や循環器疾患がある人は、基本的に検査を受けることができません。

それぞれの内視鏡検査のメリット・デメリットは?

検査にはそれぞれメリットとデメリットがあります。ご自身のこれまでの検査状況や気になる不調の有無などをもとに、医師と相談のうえ適切に検査方法を選択してください。

カプセル内視鏡のメリット・デメリット

メリット
患者の負担や時間拘束が小さい
デメリット
比較的、診断能力がやや劣る。処置や治療は行えない
費用
カメラが使い捨てタイプのため高額
備考
検査中は激しい運動を避け、強い磁気には近づかない。そのほかはほぼ通常通り過ごしてOK

バルーン内視鏡のメリット・デメリット

メリット
精密検査に向いていて、処置や治療が可能
デメリット
患者の身体的負担と時間拘束が大きい
費用
経済的負担は小型カプセルに比べると軽い
備考
麻酔をかけて検査を行う。検査後は通常通り過ごしてOK

おわりに:小腸の異常を早期発見したいなら内視鏡検査がおすすめ!

検査による病気の発見が難しいとされた小腸も、カプセル内視鏡とバルーン内視鏡の登場によって早期発見も可能となりました。それぞれの内視鏡検査のメリット・デメリットを理解し、自分に合った方法を選択しましょう。

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